事の全貌
「何だと!?いくらクラリス様の命の恩人だといえども、インナリィ王国の大臣であるこのイダジンにそんな態度は許さんぞ!」
大臣が血相を変えて激怒する。
「…姫様、少し離れてて下さい。コイツはあなたの命を狙っていますから…」
大臣の言葉を無視して、姫様に告げる。
「えっ…?イダジンが…?」
姫様が目を丸くして、訊き返す。
「一体、何を言っているんだ貴様!私がクラリス様の命を狙っているだと!?戯言を言うのも大概にしろ!」
大臣が顔を真っ赤にして怒る。
なので、禿げた箇所も赤い。
思わず吹き出しそうになるのを堪える。
「戯言?何言ってんの?アンタが姫様の命を狙っているのは事実でしょうが?」
私の言葉に大臣が取り乱した様子で喚き出す。
「話にならんわ!このイダジンを犯人扱いしよって!王国の者たちに合流したら、すぐに捕らえてやるからな!」
「王国に捕まるのはアンタよ。これまでの出来事の全てにおいてタイミングがあまりに良さすぎる。私が馬車に乗る時、アンタは周囲をやたらと気にしていた。すると、まもなくして盗賊たちに襲われた」
大臣がすぐに何か言おうとしたが、無理矢理話を続けた。
「漆黒の魔女の時もそう。アンタが何か魔法を唱えたのを見張りに見つかって、そのあとすぐに漆黒の魔女が現れた。まるで、アンタが魔法で漆黒の魔女をここに導いたように…」
「言いがかりだ!何を根拠にそんなありもしない事を!何で私がそんなことをしなければならない!?」
大臣が必死に否定する。
「決まっているじゃない。アンタにとって姫様が死ぬことは都合良いってことでしょイダジンさん?現在のインナリィ王の直結の子はクラリス様のみ。なら、もしそのクラリス様に何かあれば、王の子ではなくてもワンチャン後継者としての可能性は浮上する。それが男児なら尚更だ」
私の語りに姫様が少し悲しげな表情で大臣を見つめているのが横目に見えた。
それに少し心が痛む。
イダジンは姫様にとっては自分を大切に思ってくれている大臣だったのだろうから…
だから、尚更コイツを許せないのだ。
「姫様、コイツに息子はおられるのですか?」
「…ええ、イダジンには二人の子息がいます」
姫様がそう答えてから手で口を押さえた。
「騙されてはいけませんぞクラリス様!こいつの言うことは全てデタラメなのですから!」
大臣が姫様に必死に訴えた。
「イダジンあなたはなんていうことを…私はあなたを信じてきました。いえ、まだあなたを信じたいと思っています…でも、シスターが嘘を言っているとも思えません。イダジン…本当のことを言ってください」




