ライトニングウォール
黒い霧の狼たちの牙がロザリオを使えない私に襲いかかってくる。
ロザリオがなければ私を倒せると…?
そう漆黒の魔女は思ったのだ。
…ほんとナメてんじゃないわよ。
苛立ちが一気に込み上げてくる。
このロザリオはたしかに私の大切な相棒だ。
その秘めた力は絶大である。
だが、それだけに頼れるほど、ロザリオを扱うこと簡単じゃないし、使いこなす者の実力がなければその力は発揮させられない。
すなわち私自身の力も絶大で、ロザリオがなくとも私はこんな攻撃など屁でもないのだ。
私は黒い霧の狼の頭を素手で鷲掴みにする。
そして、それを別の黒い霧の狼に勢いよくぶつけた。
続けて空いているもう片方の手で別の黒い霧の狼を掴んで握り潰す。
ロザリオを地に付けたまま、私は素手で荒れ狂うように黒い霧の狼たちをダメージを食らうことなく倒していく。
「なっ!?何なの!?」
私の行動に漆黒の魔女が驚きと恐怖が入り混じった声を上げた。
「あり得ないわ…漆黒の牙を素手で掴み潰すなんて…あの黒い霧に触れれば、人間の皮膚など溶けて消滅してしまう筈なのに…!」
漆黒の魔女が杖を持たない手で頭を抱えた。
私は黒い霧の狼を修復される前に全て潰し切り、とりあえずは周囲にその漆黒の牙はいなくなる。
「めちゃくちゃだわ…あなためちゃくちゃよ!」
漆黒の魔女が怒りを露わにした。
すぐに杖からさっきまでの数とは比べ物にならないほどの漆黒の牙と呼ばれた魔法が放たれる。
だけど、漆黒の牙は黒い霧の生身の身体に触れると溶かして消滅させる能力が脅威であって、それ自体の攻撃力は大したことはない。
だから、数が増えたところで全て掴んで握り潰すだけだ。
とはいえ、いくら私でも直接素手で漆黒の牙を掴めばたちまち両手が消滅してしまうだろう。
それを防ぐために、今の私の両手にはある魔法がかかっている。
ライトニングウォール。
光属性の防御系魔法である。
本来は自分の前に光の壁を作り出す。
ランクは中級魔法だが、それを私は応用している。
ロザリオを手放した時、両手にライトニングウォールの魔法を覆うようにかけたのだ。
ライトニングウォールだけでは耐えられる強度は怪しいが、それを三重にするとまず間違えはない。
ライトニングウォールが三重にかけられている両手で次々と私は漆黒の牙を駆除していく。
その様を漆黒の魔女が驚きと悔しさが入り混じった表情で見ていた。
…あまり時間を掛け過ぎると厄介だ。
漆黒の魔女ならこの洞窟ごと破壊する魔法くらい容易く使えるだろう。
「次は私の番。悪いけどさっさと終わらせて貰うわ。こんなところで道草を食ってたら、次の転勤先も追い出され兼ねないし」
全ての漆黒の牙を潰しきり、私はロザリオを両手で掴んだ。




