漆黒の魔女
デスサイズミストと呼ばれた闇魔法が私を襲う。
たちまち黒い霧が私を包み込んだ。
「シスター!?」
姫様の悲鳴に近い声が黒い霧の向こう側から聞こえてきた。
それにそういえばまだ名乗っていなかったなと気づく。
「心配なくてもこの次はあなたよクラリス姫」
女が嘲笑いながら、そう言った。
やがて、黒い霧が晴れていく。
その時、女の嘲笑う声が急に止んだ。
「…どういうこと?私のデスサイズミストが効かないなんて…」
女の表情から急に笑みが消えた。
「…シスター!」
後ろから姫様の安堵の声が聞こえる。
「簡単なことよ。ただこのロザリオに闇魔法の耐性があるだけ。私、シスターなもんで」
そう言って、口角を上げた。
「…違う。ただのシスターとは違う…何者なの?」
自慢の闇魔法が効かなかった悔しさからか、女が歯を食いしばりながら、私に訊いた。
「人に素性を訊ねる時はまず自分から名乗るべきでしょうが漆黒の魔女さん?」
私の言葉に女の顔が凍りつく。
漆黒の魔女。
それが目の前の魔族の女の名前である。
「…漆黒の魔女!?」
すぐ後ろにいた姫様がその名前を聞いて驚く。
見たことはなくても、流石にインナリィ王国の姫様なら名前くらい聞いたことはあるはずだ。
なんたって、自分の父親か祖父が封印した魔女なのだから…
「…何故、私の名前を知っている?」
明らかにさっきまでの声のトーンが違う。
「かつてインナリィ王国を恐怖に陥れた漆黒の魔女がインナリィ王によって封印されたなんて、インナリィ王国の中では割と有名な話でしょ?」
とさぞ当たり前のように答える。
「何で封印された漆黒の魔女が…」
姫様の言葉に顔を少し姫様に向ける。
「そんな驚くべきことではないですよ姫様。インナリィ王国の領土内には魔界への入り口がありますし、そこから来た魔族によって封印が解かれた。という可能性は充分にありますよ。まあ、そうではない可能性も充分にありますけどね…」
と説明して、再び漆黒の魔女に視線を戻す。
「…封印から解放されて、さっそく憎き王国の姫の命を奪いに来た。まあ、そんなとこか…」
独り言のようにそう言った。
「…まあ、少しはやるようだけど、私の邪魔はさせないわよシスター」
漆黒の魔女が杖の先端をこちらに向けた。
それと同時に私は胸元にぶら下がっているロザリオを今回はチェーンを引きちぎらずに後ろ首に両手を回して外した。




