デスサイドミスト
「何だお前は!?」
盗賊団のリーダーがその人ではない者に問いかける。
「私?うーん、それは今から死ぬ者たちに名乗るだけ無駄だと言うものね」
突如、現れた魔族の女が嘲笑う。
「…俺たちが死ぬだと?言ってくれるじゃねぇか化け物め。行け、お前ら!そのいかれた奴を殺せ!」
盗賊団のリーダーが部下たちにそう指示をすると、一斉に盗賊たちが魔族の女に剣を手に向かっていく。
魔族の女は手に持っていた先端に紅い球がついた杖を軽く振るった。
すると、その杖から先程の黒い霧が放たれる。
「デスサイズミスト」
魔族の女がそう囁いた。
その瞬間、盗賊たちが次々と悲鳴を上げて消滅していく。
そして、気が付けば盗賊団のリーダー以外、全員の盗賊が消されてしまっていた。
「…な、何だ…一体が何が起きた…?」
盗賊団のリーダーが恐怖に満ちた表情でそう口にした。
「私の邪魔をする者は消えてもらうの。バイバイ」
魔族の女がそう言った瞬間、盗賊団のリーダーが黒い霧に包まれてしまう。
そして、悲鳴が上がり、すぐにその声ごと盗賊団のリーダーが姿を消した。
…いや、消されたのだ。
「さあ、これで邪魔者はいなくなったわ」
魔族の女がそう言ってから、姫様の方に視線を向けた。
「私の目的はあなたなのだからクラリス姫」
魔族の女が杖を姫様に向けた。
姫様は突然の出来事にすっかり怯えてしまった様子で動けずにいる。
それに私も姫様も背後で手首を縄で縛られたままだ。
といっても例え手首を縛られていなくとも、この状況で逃げることは不可能だ。
覚悟を決めて、魔族の女の方を見ながら姫様の前に立つ。
「あら?まだ、邪魔者がいたの?あなたは何?」
杖をこちらに向けて、女が私に訊いた。
今にもあの闇魔法を使ってきそうな状況だ。
「私?ちょっとやらかして転勤先に向かっているただのシスターだけど」
手首の縄を解きながら、そう答える。
そして、解いた縄を地面に放り投げた。
「えっ…?」
私の行動に姫様が驚いた表情を見せる。
「姫様の縄もすぐに解きますので、今しばらくお待ち下さい」
少しだけ姫様に視線を向けて、そう話しかける。
「…へぇ、ただのシスターねぇ?まあ、それは可哀想だわ…」
その言葉に再び視線を戻す。
「私が転勤されられることが?」
女の可哀想という言葉に反応する。
「いいえ、転勤先に辿り着くことがないということによ」
女がそう言った瞬間、私の周囲を黒い霧が覆う。
「デスサイズミスト。さようならシスター」




