襲撃
どうやら馬車が急停車したようだ。
「大丈夫ですか姫様!?」
急に激しく客車が揺れたため、床に倒れそうになった。
すぐに姫様を心配して、視線を向ける。
「大丈夫です…壁に少し背中がぶつかった程度ですから」
姫様の返答に安堵した。
オッさんはというと見事に床に転がっている。
その姿に思わず、ざまあみろと心中で悪態をつく。
私はすぐに立ち上がり、客車の前方の小窓のカーテンを開いて、御者のおじさんに何が起こったのかを確認しようとした。
が小窓から外を見ると、すぐに確認する必要はなくなったと理解する。
「どうしたのですか?何かあったのですか?」
小窓から外の様子を確認して固まっている私に姫様が訊いた。
「い、一体、何事だこれは…」
ようやく起き上がったオッさんが客車の出入り口へと目を向けた。
その様子を見ていた私はすぐに客車の真ん中へと移動する。
すると、客車の出入り口が勢いよく開き、何者かが客車の中へと入ってきた。
しかも、その数は一人ではない。
オッさんは床に尻餅をついたまま、怯えるように後退りしていく。
その後方で私は姫様の前に守るように立っていた。
侵入者の全員が顔半分を布で覆っていて、手に剣を持っている。
…どうやら、馬車が盗賊たちに襲撃されたようだ。
狙いは勿論、姫様だろう。
どうする…?
選択肢は二つ。
大人しく捕まるか、盗賊たちを倒してこの場からすぐに離れるか…
しかし、後者は少し難しい。
見た感じ大した相手ではなさそうだし、姫様を危険に晒さずにコイツらを殲滅するのは余裕だ。
だが、問題はそのあと…
この場からすぐに逃げることが出来なくなってしまったということだ。
何故ならさっき小窓から覗いた時、馬車を動かす馬とそれを操る御者のおじさんが絶命していたのをこの目で見たからである。
「安心しろ。大人しくしていれば命は取らない。だが、言うことを聞かなければ御者のように命を落とすことになる」
盗賊の一人が私たちにそう説明した。
その言葉に姫様がショックを受ける。
「な、なんてことを…」
姫様は口を押さえて馬車の前方へと目を向けた。
「…一体、貴様らの目的は何だ?」
床に尻餅をついた状態で盗賊を見上げながら、オッさんが偉そうに訊いた。
「…目的?決まっているだろ。クラリス姫を攫ってインナリィ王国から大金を巻きあげる」
「なっ…」
盗賊の返答にオッさんが言葉を失った。
「ん?シスターだと?…お前もクラリス姫の付き添いか?」
盗賊の男が私を見て、首を傾げながら訊ねた。
「いえ…私はたまたま居合わせただけの、ただのシスターです。ただの…」




