転生
「火野比呂。国賊として殺処分する」
政府極秘部隊に囲まれて逃げ場が無くなった俺に沢山の銃口が向けられていた。
…クソッ、一体どうしてこうなった…?
国家超能力特務機関で数多くの任務に携わり、功績を残してきた俺たちがどうして政府に殺されなければないらない…?
既に俺以外の全員が殺された。
テレポーテーション能力を持つ青葉由緒。
サイコキネシストである胡桃坂瑠夏。
テレパシー能力者の黄金井路倭。
そして、インビジブルとショットガンの二種の能力者の御影五飛。
指揮官が俺たちを利用して私欲に走ったことは知っている。
勿論、指揮官は逃亡の末、抹殺された。
なのに、俺たちがその尻拭いを受けるのはあまりにも残酷だろ…
まあ、こういう政府の裏機関において、証拠隠滅と見せしめは必要だ。
…分かっている。
分かってはいるが、このまま簡単に死んでたまるか…
…パイロキネシストの底力を見せてやる!
といくつもの銃口から銃弾が発射される前に、俺の自然発火が暴れ出す。
極秘部隊の銃が次々と爆発していく。
そして、その隙に隊員たちを炎に包み込んでいった。
極秘部隊の隊員たちを返り討ちにして逃げる。
だが、逃げた先で何がある…?
仲間は全員殺されたんだぞ…?
というどうしようもない絶望感が俺を襲う。
その時、俺の行手に一人の女が立ちはだかった。
スーツ姿の金髪の女だ。
「逃げて一体どこへ行こうと言うの?諦めてこの国のために死んでくれる?」
女が不敵に笑う。
…五月蝿い!
と念を込めて、女を火だるまにする…つもりだった。
しかし、女には何も起きなかった。
「あれれ?もしかして、私を燃やそうとした?ざーんねん。コレがあるから超能力は無効だよん」
と女が左手にもつ携帯電話のサイズのデバイスを俺に見せた。
「…なっ?」
思わず驚愕する。
なるほど、それでアイツらの能力を抑えたのか…
超能力特務機関がただの武装部隊に負けるなんてあり得ないと思っていたら、そういうことだったんだと納得した瞬間、女がスーツから右手で素早く銃を取り出して、俺に発砲した。
銃弾が俺の心臓あたりを直撃する。
そして、前方へ倒れ込んだ。
大量の血が俺の身体を囲むように流れ出す。
「…あなたたちは運がなかった。だから来世では幸せになることを祈ってるわ」
薄れゆく意識の中で女の足音とその言葉が聞こえてきた。
…来世?
…馬鹿なことを言うな…死んだらそこで終わりだ。
と心中で女の言葉を否定した。
その直後、俺の意識はプツンと途切れたのだ。
◯
目が覚めた。
…見上げると薄暗い洞窟の中の景色が目に飛び込んできた。
…ん、ここはどこだ?
たしか、女に撃たれて…
と手で撃たれた胸を押さえた。
すると胸を押さえた手が自分の思っている手ではないことに気がつく。
思わず小さな悲鳴をあげた。
薄暗いが明らかに人の手ではなく、赤い肌に異様に爪が長くて指も長い…なんというか化け物の手だ。
身体もそうだった。
布切れのような服を着ているが、明らかに人の身体じゃない…
どういうことだ…?
人ではない化け物になっている?
と自分の姿に驚いていると、足元に何かが書いてあった。
「…何だこれは…魔法陣?」
と呟いた。
「正解。どうやら上手くいったみたいだね?」
突然の声に驚きながら、その声が聞こえた方へと視線を向ける。
すると、そこには背の低い見たことのない化け物が立っていた。
着ているいかにもボロい布製の服は俺が着ているものと似ている。
鏡がないから自分の正確な姿は分からないが、俺の肌が赤色に対して、その化け物の肌の色は青色だった。
「…誰だ?ていうかここはどこで、何で俺はこんな醜い身体なんだ?」
青色の化け物に訊ねる。
「…まあ、落ち着いて。とにかく私の話を聞いて比呂」
化け物の言葉にすぐに反応した。
「な、何で俺の名前を知っている!?」
「私だよ。青葉由緒だよ」
化け物の台詞に思わず目を丸くする。
冷静に考えるとたしかに化け物の声は由緒のものだった…
「…由緒なのか?どうして、そんな化け物の姿になっているんだ?」
意味が分からない…
「化け物じゃないよ。ゴブリン。まあ、見た目は最悪だけど、記憶と声が残っただけマシかな。あと…能力もね」
と由緒と名乗る化け物が笑みを浮かべた。
「…どういうことだ?記憶と声…能力が残っている?」
混乱する俺に由緒と名乗る化け物が近づいてきた。
そして、俺を優しく抱きしめる。
「…大丈夫、もう大丈夫だから。みんな無事にこの世界に転生してきたから…」
由緒が俺にそう告げた。
「…転生?」
と由緒に抱きしめられながら首を傾げた。
「…そう。理不尽に殺された私たちは神の御加護か、この見知らぬ世界にゴブリンとして転生してきたのよ」
由緒が耳元でそう説明した。
「は…?」
と鏡がないから分からないが、きっと今の俺はもの凄い表情をしているに違いない。




