ラストア
行きは七魔衆を警戒してトリケーリブの塔から割と離れた場所にしかワープ出来なかったが、帰りは堂々とオーリュウの移動魔法でクナモテアのオーリュウの屋敷の屋上へとワープする。
「さあ、お疲れでしょう?本日はゆっくりしてください」
オーリュウがそう言って、私たちを屋上から屋敷内へと案内する。
その際、ふとすっかり元通りになっている屋上へと目を向けた。
「エメさん…?」
隣を歩くアンネが私の行動に気づいた。
「…いや、なんか色々と思い出がある屋上だなって思ってさ」
視線を戻して、アンネに言った。
「そうですね。花火はとても綺麗でした」
とアンネが感想を口にする。
「うん、綺麗だったね」
と頷く。
一週間、アンネとファーシルと三人で過ごした日々が蘇る。
今から思うと、ファーシルは本当に私たちとガールズトークをして女子会を楽しみたかったんだなと感じた。
…まあ、私もそれなりに楽しかったのは嘘じゃない。
オーリュウと一緒に廊下を歩いていくと、しばらくしてラストアが立っていた。
その左右に見慣れないメイドが二人増えている。
どちらもラストアみたく人型の女魔族で肌の色はそれぞれ異なるも、皆似たような角を頭から二本生やしていた。
「私は用事で少し出掛ける。エメさんとアンネさんはとてもお疲れだ。私がいない間、ゆっくりとして頂くようくれぐれも頼んだぞ?」
オーリュウの指示にラストアと左右にいた二人の女メイドが返事をする。
「では、私は少し出掛けてまいりますね。帰ってきたら、人間界へ戻るまでの話をしましょう。申請はしてあるので、あとは許可が出るのを待つだけです」
とオーリュウが軽く私たちに会釈して、廊下を一人で歩いていく。
魔王幹部だもんな…そりゃ、色々と大変そうだ。
「エメ様アンネ様お疲れ様でした。先にお食事に致しますか?それとも温泉で疲れを癒しますか?」
私たちから見て、ラストアの右に立っていた紫色の巻き髪のメイドが愛想よく私たちに訊ねる。
ラストアに愛想がなかったから、てっきり皆同じかと思っていたら違った。
アンネがどうしますか?という表情で私を見る。
「…じゃあ、先に温泉でお願いします」
と私が勝手に決めた。
こんなボロボロの格好だ…先に温泉で身体を綺麗にしたい。
「分かりました。では、私についてきてください。エメ様のご洋服はこちらで新しい物を用意しております。温泉から上がったらそちらをお召しください」
今度はラストアの左に立つ薄い黄色のボブヘアのメイドが丁寧に対応する。
「ありがとうございます」
と笑顔で答えた。
なんだ、愛想がないのはラストアだけか…
と思いながら、黄色のボブヘアのメイドについていく。
ついていく途中で、彼女の名はリベアル、そしてもう一人のメイドの名前がズズバと教えてくれる。
私たちはリベアルの案内で温泉の間へとやってきた。
と言っても、この数日間は自由にここに来ていたから、今更案内なくても来れる。
「では、ごゆっくり」
リベアルがそう頭を下げて離れていく。
そして、アンネと一緒に温泉に浸かった。
ああ、戦いのあとの温泉は最高だ…
温泉に上がると用意してくれた新しい修道服に身を纏う。
アンネの修道服も魔法で綺麗になっていた。
温泉の間から出ると、今度は紫色の巻き髪のズズバが待っていてくれる。
そして、食事の用意が出来ていると、いつもの広間へと案内された。
広間の相変わらずの長いテーブルで私とアンネは食事を頂く。
そのあとで、私たちが使わせてもらっている寝室へとラストアに案内されて向かった。
その時にアンネが眠たそうにしているのを横目で確認する。
…そりゃそうだ。
昨晩から色々とあったんだ疲れていない筈がない。
部屋に着くとアンネは寝衣に着替えた直後、倒れるように自分のベッドで寝てしまう。
その寝顔に笑みを浮かべながらアンネの身体にシーツを掛けて、私も寝衣に着替えて寝ますかと伸びをしたところで、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
着替えるのを止めてドアへと向かう。
ドアを開けるとそこにはラストアが立っていたのだ。
おそらくベルを鳴らさなかったのは、アンネが寝てしまっているかもしれないという配慮だろう。
「どうなされました?」
訪ねてきたラストアに訊いた。
「七魔衆の討伐ありがとうございました。これでオーリュウ様の不安も解消されたことでしょう」
とラストアが深々と私に頭を下げる。
「それが私の仕事なんで、お礼を言われることではありませんよ」
と丁寧に言った。
するとラストアがパッと顔を上げる。
「エメさん。少し、お時間よろしいでしょうか?」
「えっ、私?いいけど、私はアンネから目を離せないから、この部屋でよければ」
とアンネが寝ている方へと振り返る。
「ご安心ください。この部屋にはオーリュウ様直々に結界が張ってあります。七魔衆のこともありましたから。ですので、アンネさんが危険に晒される心配はありません」
ラストアにそう言われて、たしかに何か感じるなと思ったらオーリュウの結界だったのかと頷く。
「…まあ、それならいいか」
と頷いた。
「では、こちらへ」
ラストアに案内されて私は廊下を歩いていく。
…一体、どこへ行く気だろう?
と新しい修道服の着心地を良さを感じながら、ラストアの背中を見ながらそう思った。




