酷いお方ですね?
長い階段をアンネと共に下り切って、七魔衆と戦った場所へと戻ってくる。
隣のアンネを見下ろすと、ケロっとした顔をしていた。
いくら下りとはいえこんな長い階段を下りてきてその表情はなかなか凄い…
見た目からは想像出来ない体力と忍耐力だ。
階段から出口へと向かう途中で、七魔衆たちが集まっている場所へと向かう。
七魔衆たちが私とアンネに気づいて、視線をこちらに向けた。
その時、マンモの霧が少し人型に戻っているのに気がつく。
そして、ファーシルが私たちに近づいてきた。
すると、アンネも何の躊躇もなくファーシルに歩み寄っていく。
「ドーナツと紅茶ありがとうございました。とても美味しかったです」
とアンネスマイルが炸裂する。
私がさっきまでここで死闘を繰り広げていたのがまるで嘘のように感じた。
それが我が推しの凄さである。
アンネの言動にファーシルや他の七魔衆たちが笑みを浮かべた。
といってもマンモは表情が分からないし、ベルバブゼの蝿頭は見たくないし、モデウスアスは三つも顔があるから見るの面倒だし、未だ小さいルーゴフェルベの表情はよく分からないし、厳密にはヴィアレタンとタサンの表情しか窺っていない。
あっ、ルーゴフェルベを戻すの忘れてた。
とファーシルの横を通り過ぎて、小さくてなんだか可愛らしいルーゴフェルベに触れる。
すると、ルーゴフェルベが元の大きさへと戻っていく。
急に戻したから、近くにいたタサンとベルバブゼがルーゴフェルベの図体に押されて倒れる。
元の大きさに戻ったルーゴフェルベがウゴゴ…と何か声を発した。
「ありがとうって言ってます」
背後からファーシルの声がして、彼女の方を振り返る。
「ほんとに?」
「はい、ルーゴフェルベとは幼い頃から一緒なので、なんとなく分かるんです」
ファーシルが自信満々に言った。
…なんとなくね。
と笑みを浮かべた。
「これからどうするの?」
ファーシルに訊ねる。
「みんなとこれからも七魔衆として生きてきます」
ファーシルが仲間を見回しながらそう宣言する。
「そう…なら、もう私が呼ばれるようなことはしないでね?」
「はい、大丈夫です。もうエメさんたち調律者にもオーリュウ様にも迷惑を掛けることはありません」
ファーシルの約束に分かったと頷いた。
…どうやら七魔衆の中のわだかまりはなくなったようだ。
「あと、お尻の刻印を消すことをおすすめするわ。だってあれじゃせっかくの綺麗なお尻が台無しだもん」
とファーシルに告げて、手を上げながら踵を返した。
アンネも七魔衆に頭を下げてから、踵を返して私についてくる。
そして、アンネが私に並んで頬を膨らませた。
「…ファーシルさんのお尻の方が綺麗なんですね?」
アンネの言葉に思わず「へっ?」となった。
…なんだなんだ?
と一人首を傾げる。
そして、塔を出ると、辺り一面砂漠が広がっていた。
…忘れてたわ、ここって砂漠のど真ん中だったんだっけ?
「…砂漠だったんですね?知りませんでした」
アンネの台詞にそういえばアンネはマンモに運ばれて、塔の中まで来たから、トリケーリブの塔が砂漠に囲まれていたなんて知る由もなかったんだ…
「さあ、行きましょうエメさん」
アンネが突拍子もないことを言い出した。
「えっ、待って?行くってこんな砂漠の中を歩いて行くの?私ならともかくアンネには流石に過酷じゃないかな…?」
とアンネを心配する。
「私は大丈夫です。早くオーリュウ様の屋敷があるクナモテアに戻らないと…ここからどれくらい歩けば着くのでしょう?」
と推しは歩く気満々だ。
「歩いて帰れば一カ月は掛かりますよアンネさん」
アンネの疑問に突然現れたオーリュウが答えた。
「オーリュウ様!?」
私とアンネが驚きの声を上げた。
「お疲れ様でしたエメさん。そして、アンネさんも辛い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
とオーリュウとあろうお方がまた私たちに深々と頭を下げた。
「あ、頭を上げてくださいオーリュウ様!だから、魔王幹部がそんなことを人間に対して行えば、私たちが困るんですってばっ…私は自分の任務を遂行しただけだし、アンネは呑気にドーナツを食べていましたから、気にしないでください」
とオーリュウの顔を上げさせる。
「…呑気だなんて酷いです」
思わず本音が出てアンネを傷つけてしまう。
「…違うんだアンネ。いや、呑気で良かったなって…もっと酷い目に遭っているんじゃないかと心配していたから…」
と必死に弁解する。
その様子を見ていたオーリュウがクスッと笑った。
「何事もなく良かったです。さあ、戻りましょうか?」
とオーリュウ様が私たちにそれぞれ手を差し伸べる。
が手を取る前に私は確認しないといけないことがあった。
「七魔衆にトドメは刺してません。おそらくもうヤツらが脅威になることはないとは思いますが、いかが致しましょう?もし、殺せとおっしゃるなら、今から戻って全員始末してきますが?」
とセブンシスターズとしての振る舞いをオーリュウに見せる。
すると、隣のアンネがなんとも言えない表情を見せた。
「いえ、その必要はありません。もう七魔衆は我々にとって脅威の対象ではなくなりました。ありがとうございます」
とオーリュウが答えた。
その言葉にアンネが安堵の表情を浮かべた。
「…にしてもエメさんも酷いお方ですね?わざとアンネさんがいるところでそんなことを言うなんて…」
オーリュウが苦笑いを浮かべる。
「…バレました?」
と小さく舌を出した。




