トルケーリブの塔
割と早目に起床し、いつもより早目に朝食を取った。
朝食の時、広間に私とラストアしかいない現実がなんとも色々と複雑な感情を呼び起こすも、私は黙々と朝食を頂く。
そして、再び部屋へと戻り、支度をする。
と言ってもたいした支度なんてない。
準備が整ったと、部屋を出たところでオーリュウが私を待っていた。
「準備はよろしいですか?」
オーリュウの言葉に頷く。
「では、屋上に参りましょう」
そう言って、オーリュウが屋敷の屋上へと歩き出す。
屋上に上がる道中でもう昨日の爪痕がすっかり消えていることに驚いた。
余程、建物を修復する魔法に長けている者がいるのだろう。
屋上に上がると、流石に昨日の戦闘の痕跡は残っていた。
「さあ、こちらです」
オーリュウに言われて屋上を歩いて行くと、しばらくして床に魔法陣が描かれているのが目に入る。
どうやら一晩のうちに部下に準備させたようだ。
なんとも優秀なことだと、脳裏にラストアを思い浮かべた。
「では、私から行きますね?」
そう言って、オーリュウが魔法陣の中へと入っていく。
そして、パッと姿を消した。
続いて私も魔法陣の中へと足を踏み入れる。
すると、パッと辺りの景色が変わった。
辺り一面砂漠の景色へと…
太陽の光が燦々と注いでいて、急激な気温の変化に身体がついてこない。
「…なんじゃこりゃ?」
とあまりの暑さについ口から出てしまう。
「トルケーリブの塔は砂漠のど真ん中にありますからね」
オーリュウがさらりと言った。
「…オーリュウ様は暑くないんですか?」
あまりに平気そうに語るオーリュウに訊ねる。
「暑いですよ。ただ、私は体質的に平気なだけです」
オーリュウの答えにエルフってそうだったっけ?と首を傾げた。
まあ、オーリュウはエルフタイプの魔族であってエルフではない。
その辺の違いはあるのだろう。
…てか、何で未だにオーリュウは人間の姿のままなんだ?
「…あの、オーリュウ様は魔族の姿に戻られないんですか?」
クソ暑いが気になるので、オーリュウに疑問を投げかける。
「はい、私が魔族の姿でいると目立ちますから。あと、私は人間の姿の方が好きなんです」
オーリュウの返答にへぇ〜と頷いた。
「さあ、少し歩かなければなりませんが、我慢してください。流石に塔の目の前とはいきませんので」
オーリュウが砂漠を歩き出す。
それに続くように私も歩き出した。
まあ、そりゃ七魔衆という敵の目もあるし、仕方ないかと諦める。
「…何でこんなところにアジトなんてあるんですかね?」
と不満を口にする。
熱された砂は靴の上からでも熱さを伝えてくるし、何より砂が深すぎて歩きにくい。
「それはやっぱり襲撃に遭いにくいからじゃないですかね?七魔衆は手当たり次第、魔族を襲って成り上がっている集団です。ですから、色々と恨みを買っている筈ですし、ここならそう簡単に攻めようとは敵も思わないですならね。私たちは魔法陣で近くまで移動してきましたが、広大な砂漠のど真ん中にある塔なんて普通は誰も寄りつきません」
とオーリュウが説明した矢先、砂に埋もれた何かの骨が目に入る。
…マジかよ。
しばらく私はオーリュウのあとについていくように歩いた。
しかし、あれから割と時間が経過したにも関わらず、まだ塔は見えない。
あらかじめ砂漠を歩くと分かっていたら、水くらい用意したっちゅーの…
と前を歩くオーリュウを睨む。
すると、オーリュウが突然立ち止まったので、私は慌てて目を逸らした。
「着きましたよ」
オーリュウが私を見て言った。
しかし、辺りを見渡しても、何もない。
が、よく見ると何かがぼやけて見える。
…なるほど魔法で視界を誤魔化している訳か、普通の場所ならこんな魔法じゃ気づかれやすいけど、砂漠なら打ってつけだ。
「ありがとうございます。では、行ってきます」
とオーリュウの立つ場所を越えて、歩いて行く。
「本当に一人で行かれるんですか?もう、立場とか言っている場合じゃないですし、私も行きますよ」
オーリュウの言葉に立ち止まり、首を横に振る。
「なりませんよオーリュウ様。ここからは私の…セブンシスターズの仕事です。ですから、任せてください。それにあまり部下を心配させない方がいいですよ」
「…分かりました。では、討伐が終わるまで私はここに待機しておきますね」
オーリュウの言葉に思わずえっ?となる。
「いえ、戻ってもらって結構ですよ?こんな暑いところで待たれると私が気にします。でも、しばらくしたら迎えに来てもらっていいですか?帰り方は私には分かりませんので」
「分かりました。では、また迎えに参ります…心配はないとは思いますが、くれぐれもお気をつけて。よろしくお願いします」
そう言って、オーリュウが私に頭を下げ、来た道を引き返していった。
それを見届けて、蜃気楼の魔法で覆われたトルケーリブの塔へと視線を向ける。
…さてと、推しを助けにひと暴れしますかね。
と、気合を入れて、塔へと歩みを進めた。




