弱点
「…申し訳ありません。私の屋敷でありながら、みすみすアンネさんを攫われてしまうなんて…」
あれから、私はオーリュウと共にオーリュウの部屋へと訪れていた。
そして、オーリュウがソファに座りながら右手で頭を抱えている。
私はその向かいのソファに座っていた。
さらに、オーリュウが座るソファ横にはラストアが立っている。
「いえ、こちらこそ申し訳ありません。オーリュウ様の屋敷の屋上をあんなにしてしまって…更に屋敷内にも水が結構流れ込んでましたよね…」
屋上から下りて来た時に見たが、ヴィアレタンが放った津波で、屋敷と屋上を繋ぐ階段から屋敷内へと割と多くの水が入り込んでしまっていた。
「…いえ、そんなことはどうでもいいんです。それに、あれは七魔衆がやったことであり、エメさんは悪くありません」
とオーリュウ様がなんとも寛大なことを言う。
「そんなことよりアンネさんです。アンネさんを助け出さないと…」
オーリュウ様とあろう者がいつになく狼狽えておられる。
ただが、人間一人を魔王の幹部のオーリュウが心配するなんて凄いことだ。
「…私、一人でトルケーリブの塔に来いとのことでしたので、相手の思惑通り私が一人で行きます」
屋上でのファーシルの忠告を思い出す。
「…私も聞いていましたが、そう言う訳にはいきません。私も行きます。これは私の責任です」
オーリュウが私の言葉を否定する。
すると、じっと立っていたラストアが動いた。
私とオーリュウの横に立つ。
「なりませんオーリュウ様。魔王幹部であるあなた様が自ら動くのは危険です。まして、同族相手に戦うなんて、オーリュウ様の威信が失われてしまいます」
ラストアが珍しくオーリュウに意見する。
「…しかし、アンネさんが攫われた責任は私にある。私が動かないでどうするというのだ?」
オーリュウがラストアに問いかける。
「七魔衆の指示通り、エメさん一人で行けばいいと思います。大体、アンネさんが人質にされたのは、弱点になる方を人間界から連れてきたエメさんの責任です。なので、これはエメの落ち度であり、オーリュウ様に責任はありません」
ラストアが実に痛いとこをつく。
まあ…アンネを連れてきた時点で私の責任だ。
「ラストア!エメさんに謝りなさい!」
ラストアの言葉にオーリュウが声を荒げた。
「そもそもアンネさんを連れてくることになってしまった原因はドシーにある。ドシーが悪いのであれば、その監視役である私が悪いことになる。だから、全ては私の責任だ!」
オーリュウが叱りつけるようにラストアに言った。
ラストアがなんとも納得のいかないような表情を浮かべる。
…まあ、それだけ自分の主人を慕っている証拠だ。
「オーリュウ様。お気持ちはありがたいのですが、やはり私一人で行きます。元々、私はオーリュウ様から七魔衆の討伐依頼を受けている身です。なので、私が一人で行くのが一番理想的だと思います。それにアンネを人質にされた時点で相手の言う通りにしないとアンネが危険です。心配しないでください。私はセブンシスターズですよ?」
私の説得にオーリュウが力無く頷く。
「…何も出来ずに申し訳ありません。せめて、トルケーリブの塔までお送りします」
オーリュウの言葉に「じゃあ、お願いします」と頷く。
「…七魔衆の目的は一体何なのでしょう?私の目論見を潰すことでしょうか?それとも、魔王の事情に関することとか…」
オーリュウが首を傾げる。
「…分かりません。ただ、アンネを人質にして私を倒そうとしているだけのようには感じませんね。おそらくはアンネを人質にして、私にさせたいことがあるのだと思っています」
だから、アンネを傷つけたり、ましてすぐに殺したりはしない筈だ。
それにある程度確信があるから、こうして落ち着いていられる。
もし、アンネがすぐに危険な目に遭う状況だったら、私は手段を選ばずに今すぐヤツらを皆殺しに行くだろう。
そして、塵一つ残さないくらいにこの世から葬り去るつもりだ。
推しを傷つけるやつは絶対に許しはしないのだから…
オーリュウと話しながら、私は静かに怒りをたぎらせていた。




