祭りのあとで
「…ああ、マジでのぼせるかと思った」
ベッドの上に倒れ込んで言った。
「…ごめんなさいエメさん」
倒れ込んだベッドの近くで申し訳なさげにアンネが立っている。
「…アンネは悪くないよ。ただ、私が勝手にのぼせかけただけ…基本長風呂しないタイプだから…」
顔だけアンネの方に向けた。
そうだ…私は温泉は好きだが、長風呂は苦手だ。
「…私、すっかりファーシルさんに揶揄われましたね」
とアンネが私がうつ伏せになっているベッドに隅に腰掛けた。
「うん、完全に遊ばれてたね」
と力無く笑う。
「でも…こんなことを言って良いのかは分かりませんが…私、楽しかったです」
アンネが私に視線を向けた。
…なんとなくアンネの言いたいことが分かる。
「…いいんじゃない楽しくて」
と笑みを浮かべた。
すると、ベッドの隅のアンネの表情が曇る。
「…楽しんでもいいんですか?」
アンネが私に視線を合わせずに訊いた。
「まあ、いいと思うよ。何よりファーシルもそれを望んでいるからね」
私の返答もアンネの表情は曇ったままだ。
「…一つ聞いてもいいですか?」
アンネがやや言いづらそうに訊いた。
「いいよ。遠慮なく訊いて」
と体勢を戻して上体を上げた。
「…お祭りが終わったらエメさんはどうするんですか?」
アンネが私を見ずにそう訊いた。
「…勿論、約束通り七魔衆を倒す。アンネももう知っていると思うけれど、私は調律者。だから、それをしなければならない」
少し真面目な口調でアンネに説明する。
「…どうしてもファーシルさんとの戦いは避けられないんですか?」
アンネが私に視線を向けた。
なんとも真剣な表情で私に訴えかけてくる。
「避けられない」
真っ直ぐアンネを見て答える。
するとアンネが悲しげな表情を浮かべた。
「…そうですか。そうですよね…エメさんの気持ちも考えずにごめんなさい…」
アンネが私の心情を察して謝る。
…私だって戦わずして終われる道があるなら選びたい。
でも、セブンシスターズである私が私情を挟むわけにはいかないのだ。
「でも、それまでは彼女は敵ではない。だから、私もありのままの私で彼女に接するつもり。アンネも気にせずに仲良くしてあげて」
と頑張って笑顔を作る。
「分かりました」
アンネが素直に受け入れた。
…ファーシルが私たちと仲良くしたいということにどんな理由があるのかは分からない。
もしかしたら、単に私を欺くためだけなのかもしれないし、そうじゃない可能性もある。
「まあ、お祭りまでまだまだ時間はあるんだし、今から祭りのあとのことを考えてもしょうがないでしょ?アンネは自分が思うように行動すればいい。だだし、さっきみたいなのはマジで勘弁して…」
温泉での出来事を思い出す。
「…ごめんなさい」
推しがしゅんとして謝る。
なんとも可愛いらしい…
気が緩んだ瞬間、私のお腹の音が豪快に鳴った。
それを聞いたアンネがクスッと笑う。
「そろそろ晩御飯食べに行きましょうか?ファーシルさんも誘って」
アンネの言葉に頷く。
…やっぱり無理せず昼食を食べておくんだったと後悔する。
アンネと一緒にベッドから立ち上がった直後、ベルが鳴った。
そして、私たちが扉に辿り着く前に扉が開く。
ファーシルだ。
「迎えに来ましたよ。ラストアさんに確認したら、もう晩御飯の準備は出来ているそうです」
ファーシルが笑顔で報告する。
ファーシルの言葉に良かったと安堵した。
…もう、お腹がペコペコだ。
でも、今日はデザートをおかわりしないようにしようと、服の上からお腹の脂肪をつまみながら心に誓う。
そして、私とアンネとファーシルは仲良く会話をしながら、食事の広間へと向かった。




