私は女だぞ?
ファーシルに誘いを受けて、私とアンネは一緒に温泉へと向かった。
行く途中でアンネとファーシルが仲良く会話している様を後ろで見ながら安堵する。
さっき、部屋でアンネが私とファーシルに嫉妬していたからだ。
…ただでさえ、訳が分からない状況になっているというのに、これ以上ゴタゴタはマジ勘弁してくれ。
豪華な脱衣所にたどり着き、服を脱いで裸になる。
ファーシルは小さめなタオルを腰に巻き、下半身の大事な部分をしっかり隠していた。
しかし、上半身は立派なものがこれ見よがしに顕になっている。
アンネもファーシル同様に小さなタオルで身体の前方を隠していた。
タオル越しに身体のラインがくっきりと見える。
前の時も思ったが、モノは小さいが綺麗な形をしているなと横目で確認した。
対して私はタオルを持たずに堂々とすっぽんぽんである。
女同士だ。
隠す必要なんてない。
脱衣所からクリスタルガラス製の扉を開けて、温泉の空間へと出た。
湯煙で覆われて湯船が薄れて見えているため、ゆっくりと歩いていく。
そして、足からゆっくりと湯に浸かった。
「ふうぅぅ…」
気持ちが良さすぎて思わず声が漏れる。
「良い湯ですねエメさん」
と左隣にファーシルが寄ってくる。
すると、間髪入れずに反対側にアンネが寄ってきた。
顔はやや不機嫌だ。
…ん?何これ?
「…にしても温泉にありつけたのはいつ振りだろう」
と無理矢理話題を振るため、独り言のような発言をする。
「私は初めてです」
アンネが手で湯をすくいながら、私の言葉に反応する。
「…そっか。シスターだもんね…そりゃ温泉なんて入ったことないか」
と納得する。
「あらっ?エメさんもシスターじゃないですか?」
ファーシルがすかさず疑問を私に投げかけた。
「…私はほらっシスターと言ってもアレだから、まあ…行く先でたまたま温泉があってたまたま入るだけ」
と嘘をつく。
同時にセブンシスターズの仕事にかこつけて無理矢理温泉を経由した過去を思い出した。
「…私は七魔衆で制圧した町や村で温泉が湧いていたところがあって、仲間は入っていたけど私は入らなかったな」
と隣のファーシルが空を仰いで懐かしむように言った。
おいおい制圧って…
でも、そのファーシルの表情が今まで見たことのないような切ないものだった。
その顔が少し気になる。
左隣のファーシルに視線を向けていると、ぐいっと右腕を掴まれた。
「何でそっちばかり見てるんですか?」
とアンネが頬を膨らませて私を見上げた。
右腕に目一杯推しの胸が当たる。
すると、今度は左腕にめちゃくちゃ柔らかい感触がした。
ファーシルがアンネに対抗して、豊満な胸を私に押し付けてきたのだ。
「アンネさん。エメさんの独り占めはよくないですよ?」
「ファーシルさんこそエメさんを独り占めしないでください」
と私の前に互いに顔だけ出して歪み合う。
…何やってんのアンタたち?
「アンネさんはいつも一緒にいるから良いじゃないですか?」
「嫌です!いつも一緒に訳ではありません。この間もエメさんは長い出張に行かれて、随分と会えなかったんですからっ」
アンネが声を荒げた。
えっ…何の話?
推しの暴走にもう訳が分からない。
「…なるほど、そういうことですか。だから、今回は無理矢理でもついて行こうとして、迷惑かけたんですね?」
ファーシルが鼻で笑う。
それがアンネを逆上させた。
「自分でも迷惑かけたのは分かっています!でも…どうしても今回だけは一緒にいたかったんです…」
とアンネがしゅんと顔を下げた。
なんとも可愛い推しの仕草に思わず悶えそうになる。
「私もエメさんたちの部屋で一緒に寝させてもらってもいいですか?私だけ一人は寂しいです…」
とファーシルがでかい胸を更に押し付けてきた。
すると、アンネが下げていた顔をバッと上げてファーシルを睨んだ。
「…いや、流石にそれは容認できないし、オーリュウ様も許可してくれないって」
私の言葉にアンネの表情がパッと明るくなった。
「えっー駄目ですか?なら、今だけでもエメさんに甘えていたいですぅ」
ファーシルがそう言って私に抱きついた。
アンネがそれを手で押して、引き離す。
「大きな胸でエメさんが苦しそうなんでやめてください」
「大丈夫ですよアンネさん。私の胸は柔らかいので。ねっ、エメさん?」
とファーシルが私に同意を求めてくる。
「そうなんですか?エメさんは大きいのと小さいのと、どっちが好きなんですか?」
今度はアンネがよく分からないことを訊いてきた。
…おいおい、私は女だぞ?
勘弁してくれ…
と思わず深いため息が出た。




