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「で、アンタの目的は何なんだ?」
と単刀直入に質問する。
それでもファーシルの笑顔は崩れない。
オーリュウと話したあとで、オーリュウと一緒に書庫に行き、オーリュウはアンネを町へと連れ出し、私はファーシルに少し話しがしたいとこの屋上に連れてきた。
その時、ラストアに昼食はいかがなされますか?と訊かれたが、断腸の思いでそれを断ったのだ。
教会での食事は基本は朝夕のみである。
でも、こういう出張的な時は昼食を取っていた。
だから、いつもの私なら二つ返事で食べに行っていただろう。
まあ、昼食を食べている場合じゃないのもあるが、アンネならそうすると思って断ったのだ。
…あと、最近少し食べ過ぎ。
「どうしたんですかエメさん?顔が怖いですよ?やっぱり昼食を頂いた方が良かったんじゃないですか?」
風でなびく髪を触りながらファーシルがそう言って、景色に視線を向ける。
そして、鋸壁に両手を乗せた。
「言ったじゃないですか?私はただあなたたちと仲良くなりたいって」
「そういうのはいらない…私はアンタの腹の内が知りたいんだよ」
私は景色を眺めるファーシルに投げかける。
すると、ファーシルが景色から私へと顔を向けた。
ただし、表情は崩さず笑顔だ。
「私があなたたちに近づいたのはオーリュウ様が人間界から連れてきた人間が私たち七魔衆にとって脅威になるかを見極めるため…もしそうなる可能性があるなら隙を見て排除しようと思っている…とでも言えばエメさんは満足ですか?」
ファーシルが笑顔で言った。
「…そうじゃないの?」
私の問いにファーシルが首を横に振った。
「違いますよ。たしかにオーリュウ様が人間界に行って、私たち七魔衆を倒すためにセブンシスターズを連れてきたのは知っていましたし、それを知ったからこうやってオーリュウ様の屋敷にわざわざ刻印を入れて乗り込んできたのは事実です」
ファーシルが自身の首にある刻印を指差した。
「でも、隙を見てセブンシスターズのあなたに何かしようとか、何か企んでいるとかはありません。私はオーリュウ様があなたに依頼した私たちの討伐を止めたい訳でもないんです。ただ、普通にあなたとアンネさんと仲良くなってみたい…そう思っただけですよ」
ファーシルの言葉に納得のいかない私はきっとそんな表情を浮かべているに違いない。
「…信じて貰えなくてもいいです。だから、お祭りが終わるまででいいです。私と仲良くしていただけませんか?」
ファーシルが笑顔を崩し、切ない表情でそう言った。
「…ただ私たちと仲良くしたいだけ?それを鵜呑みにしろと?」
疑いの目で問いかける。
「… 本来ならオーリュウ様が人間界から連れてきたというセブンシスターズであるあなたのことを確認したら、クナモテアを出てすぐに仲間のところへと戻る予定でした。でも、オーリュウ様が人間のシスターを二人連れてきたことで正直言って戸惑いました。セブンシスターズを二人も連れて来たのかと…だから、あなたたちに近づき、それを確認しようとした。でも、温泉で楽しそうにしているあなたたちを見た時、なんだか羨ましく感じたんです…」
ファーシルが再び微笑む。
「七魔衆の中ではそれなりに居心地は悪くありません。でも、あなたやアンネさんのような自分と見た目の近い女性との接点は私にはない。たしかに私は魔族であなたたちは人間…分かってはいます。ただ…一緒に話したり食事をしたり温泉に入ったりしたら、きっと楽しいんだろうなって思うと居ても立っても居られない気持ちになり、思い切って今朝にあなたとアンネさんをここにお誘いしたんです…」
ファーシルが訴えかけるような瞳で私を見る。
「お祭りが終わったら、すぐにでも私を倒して頂いても構いません。なので、それまででいいんです…エメさんとアンネさんと仲良くさせてください。お願いします」
ファーシルが私に頭を下げる。
…おいおい、なんじゃそりゃ?
どうするエメ…?
思わずヴェール越しに頭を掻いた。
「…仕方ない。分かった…分かったよ!お祭りが終わるまでは互いの立場を忘れて仲良くする。ただし、それまでに怪しい行動が少しでも見られれば、いくら首筋に刻印があろうが、私はあなたを始末しないといけなくなる。それは忘れないで…」
と随分と甘いことを口にしてしまう。
すると、ファーシルが勢いよく私に抱きついてきた。
「エメさんありがとうございます!嬉しいです!」
抱きつくファーシルを見下ろしながら、私は深いため息をついた。




