仲良くなってません?
「…エメさん。なんというか…仲良くなってません?」
ファーシルと仲良く朝日を見て、一緒に朝食を取った後、更に屋敷内にある書庫に誘われたので、私とアンネはファーシルと共にラストアの案内で書庫を訪れた。
で、その途中に書庫にオーリュウがやって来て、私を連れ出したのだ。
現在の場所はオーリュウの部屋である。
テーブルを挟んでソファに座り、向かい合っていた。
「…仲良くしてますね。オーリュウ様から見ても仲良くしているように見えますか?」
無感情で訊ねた。
あれから寝ずに過ごしている…
寝不足の状態でファーシルの行動に翻弄されているため、最早どうでも良くなっていた。
「…私は見ていませんが、ラストアの報告によるとそう見えるそうです」
オーリュウがそう言った矢先、私は深々と頭を下げた。
「すみません…申し訳ありません神父様…」
と私は朦朧とする意識の中で神父様に頭を下げている。
どの神父かなんて分からない。
何故なら神父様の頭はカボチャなのだから…
「神父様…?大丈夫ですかエメさん?もしかして、昨晩寝れていません?」
…オーリュウの言葉に私は夢から覚めた。
少々ばかり寝ぼけていたようだ…
「…はい、ちょっと寝れませんでした。私、寝相が悪いので…」
私はそう答えたあと再び、眠気に襲われる。
すると、急に頭がパッと冴え渡った。
ハッとなり目の前を見ると、オーリュウが私に手を翳していたのだ。
「目覚めの魔法です。今日一日はもう眠気に襲われる心配はないと思います。ただ、今晩はしっかりと寝てくださいね?」
オーリュウが心配そうに私を見ていた。
…なんともお恥ずかしい。
で、なんの話だっけ?
と思っていると、今度はオーリュウが私に深々と頭を下げてきた。
えっ…えっ?何!?
と思わず慌てる。
「…元はと言えば私が彼女をこの屋敷に招き入れたことが原因なのに、あなたを責めるようなことを言ってしまい本当に申し訳ありません」
「頭を上げてくださいオーリュウ様!前にも話しましたが、立場上そうするしかなかったのですからっ」
立ち上がって、そう言った。
すると、オーリュウがゆっくりと頭を上げたので安堵してソファに座る。
「…にしても彼女の目的はなんでしょう?エメさんに近づき油断させ隙があれば攻撃でもするつもりでしょうか?もしくは仲良くなって討伐を諦めさせようとしているのでしょうか?」
オーリュウが首を傾げる。
「…分かりません。ただ、おそらく今のところはファーシルに敵意はないように思えます。それと仲良くなって私に討伐を諦めさせるなんてことは、彼女がセブンシスターズという存在を知っている以上、それはないかと思いますね」
…それに、ファーシルはそんなチンケな思考の持ち主ではない。
もっと、利口で狡猾だ。
「…魔界七魔衆が魔王の事情を知って尚、オーリュウ様に逆らわない意思が分かった場合はどうなさるんですか?」
…と言わないつもりだった選択肢を示唆する。
オーリュウが後に脅威になると思って、私に依頼してきた。
これはその考えを邪魔することだから、出来れば言いたくはなかったのだ。
それに私は調律者。
その私が人間より魔族の方が勢力をつける可能性をみすみす逃すなんて、本来ならしてはならない…
ただ…どうもファーシルの行動が私との戦いを望み、そのための駆け引きをしているようには思えなかったのだ。
「…それは愚問ですよエメさん」
オーリュウの口調がやや鋭くなる。
…だろうな。
ヴェール越しに頭をポリポリと掻いた。
「すみません…失言でした」
「…いえ、エメさんには色々と迷惑をかけていますね。ただ、依頼通りに討伐をして頂くだけだったのが、随分と拗れてしまった。ドシーの件にしても、私の行動がファーシルに気付かれてしまったことも…本当にこちらこそすみません…」
オーリュウの口調が戻る。
「…一度、ファーシルと二人で話させて貰っていいですか?話がしたいと持ちかけたら、ファーシルはすんなり受けると思いますし…ただその間、アンネのことを頼みたいんです」
私の提案にオーリュウが頷いた。
「分かりました。なら、ファーシルのことはエメさんにお願いしますね。その間、私が責任を持ってアンネさんをお守りします」
「ありがとうございます。オーリュウ様自らそう言って頂けると安心です。よろしくお願いします」
と頭を下げる。
オーリュウともあろうお方にアンネをお任せするのは烏滸がましいとは思うが、ここで信頼出来るのはオーリュウしかいない。
いくらオーリュウの部下のラストアでも、私の信用は欠ける。
それはオーリュウも分かっているから、あっさり引き受けてくれたのだろう。
「では、私はアンネさんにこのクナモテアの町を案内してきますね」
オーリュウの提案に私はにこやかに頷いた。




