何なのこの状況?
朝日を見に行ったあと、屋上から部屋に戻る廊下でラストアに会い、私とアンネとファーシルはそのまま朝食へと案内された。
場所は昨日、食事をした場所と同じだ。
ただ、そこにオーリュウの姿はなかった。
広間の中央にある長いテーブルに私とアンネとファーシルが座る。
ざっと五十人くらい席がある長いテーブルが連なるところに空席の上座から右隣に三席だけ使用していた。
なんとも言えない光景である。
空席の上座の隣が私でその隣がアンネで次にファーシルだ。
ラストアが準備して来ますと、広間をあとにした。
そして、しばらくしてラストアが広間に戻ってくると、目の前に水が入ったグラスと丸くて平たい皿に入ったスープが現れる。
昨日と同様に魔法で料理が運ばれてきた。
「どうぞ召し上がってください」
相変わらず無表情で淡々とした口調でラストアが接客する。
すると、アンネが食事の前の祈りを始めた。
勿論、今日は私も倣って行う。
ファーシルは私とアンネの祈りが終わるまで、視線を向けてじっとこちらを見ていたようだ。
祈りの最中は目を瞑っていたため確認はしていないが、終わった時、ふと彼女と目が合ったので間違えないだろう。
「流石はシスターですね。お二人とも本で見た通りのことをしていらっしゃる」
ファーシルが笑みを浮かべた。
「…まあ、一応シスターなんで」
とややドヤ顔で言った。
昨日は全く頭になかったけどね…
それから私たちは食事を始めた。
昨日とは違って朝食なこともあり、出てくる料理は野菜中心で実にあっさりしている。
パンがとても柔くて美味しい。
タオカモイの教会のパンもそれなりに美味いがこれはその上をいく代物だ。
まあ、前の村で出てきたパンは硬くてパサパサしていて、よくヤギの乳で流し込んでいたっけ…
食事を楽しみながら、ファーシルとの会話もそれなりに弾んでいた。
まあ、私は合わせていただけで、ほとんど頭に入ってこなかった…何故ならめちゃくちゃ眠いからだ。
前半は私がファーシルとの会話に対応していたが、後半はアンネがしてくれていた。
内容はほとんど魔界と人間界の比較だ。
「人間界でも同じなんですね?てっきり魔界だけの風習だと思っていました」
とファーシルが驚く。
「私もです。それは魔界にはないと思ってました。割と人間と魔族の文化の違いはないんですね。このクナモテアに来て本当にそう思いました」
アンネが感心しながらこくこく頷く。
…ん?何の話?
と食事しながら五秒ほど寝てしまっていた自分に気付く。
「おや?エメさんもしかして昨夜はあまり眠れませんでした?」
私の様子に気づいたファーシルがアンネの横から覗き込むように私に訊いた。
「…まあ、少し」
と答える。
「そうなんですか?もしかして、私寝相悪かったですか?」
私の返答にアンネが心配そうな顔をこちらに向けた。
「いや、そんなことはないよ。ただ、ちょっと環境が違うものだから、気になって眠れなかっただけ…アンネは関係ないよ」
と首を横に振る。
そう…自分の寝相が気になって寝れなかっただけだ…
「あれ?もしかして部屋にベッド一つしかないんですか?」
私たちの会話を聞いていたファーシルが興味津々に訊いてくる。
…ほんと、ぐいぐいくるよなこの女?
「いえ、部屋には二つベッドを用意しています」
とファーシルの質問に私とアンネの代わりに上座の近くに立っているラストアが答えた。
…何でアンタが答える?
「…恥ずかしいんですが、私がエメさんに頼んで一緒に寝てもらったんです。魔界に来たという不安から一人で寝るのが怖くて…」
アンネが正直にバラす。
「…なるほどそうだったんですね。まあ知らない場所に来たら怖いですよね?まして魔界なんて。私も人間界に行ったらきっとそうなります」
とファーシルが断言する。
いやいや、お前とアンネを一緒にするな…
お前は魔界七魔衆のリーダーだろ…?
たとえ、人間界に行っても絶対すやすやと寝るだろうよ。
と心中で毒づく。
「…でも、一緒に寝てもらった相手の方が不安で眠れなかったなんてなんだか滑稽ですね」
ファーシルがそう言ってクスッと笑う。
「たしかにそうですね」
とアンネが私を見て笑う。
…ん?何で私が笑われてんの?
私は不安だから寝れなかったんじゃなくて、自分の寝相の悪さが気になったのと、推しの寝顔に興奮して寝れなかったんだっつーの!
…とは言えず、黙って二人に笑われた。
しかし、敵さんであるファーシルとアンネが楽しげに私のことで笑い合い、それを無表情で聞いているだろうラストア。
…ほんと、なんなのこの状況?
と心中でため息を漏らした。




