朝日
オーリュウの家…屋敷…いや、城の屋上に出て景色を眺める。
クナテモアの町が一望でき、更に朝日がそれを美しく見せてくれて、まさに絶景だ。
鋸壁に両腕をついてそう思った。
…けど、何で朝日なんて見せられてんの私?
部屋でもう少し寝たかったわ…
「綺麗…」
左隣に立っている朝日に照らされたアンネの顔は感動に満ちていた。
なので、私は文句をごくりと飲み込んだ。
「そうでしょ?魔界の朝日も悪くないですよね?」
私の右に立つファーシルが景色を見ながら共感を求めた。
「はい。人間界と変わらず綺麗です」
アンネが実に素直にそう答えた。
魔族は人間と違って魔物を無闇に襲わないし、森や草木といった自然も大切にする。
なので、こういった景観は間違いなく魔界の方が上だと思う。
まあ、人間界も魔族と近い考えをもつ場所もたくさんある。
私が前にいた村なんてそうだった。
「エメさんはどうですか?」
ファーシルが私に振った。
正直言って、部屋で寝かせて欲しかったわ…
とは言えず、にこやかに笑う。
「綺麗ですね。いや…こんな景色久しぶりに見ました。本当に心が洗われるようです」
嘘は言っていない。
ただ、眠いだけ…
「それは良かった」
とファーシルが実に満足そうだ。
…ていうか一体何これ?
何の企みがあるのかさっぱり分からん…
もしかして、ただ能天気なだけなのかもしれない。
「クナモテアは本当にいい町です。私、好きなんですよね…」
ファーシルがそう語る。
「…クナモテアに住んでいたんですか?」
好きというからにはそうなのかと思って訊ねる。
「いえ、住んだことはないです。ただ、何日か訪れたりはしことがあるので…そうですね憧れと言った方がいいですね」
朝日に真っ直ぐ顔を向けたまま、ファーシルが言った。
「憧れですか…」
オーリュウの話によれば魔界七魔衆は最近力を付けている魔族。
魔王の事情を知っているのであれば、無論目指すは魔族の上位だろう。
ファーシルのその憧れという言葉がオーリュウの地位を奪いたい野心なのかと思えてくる…
…でも、何だかそういう風には聞こえなかった。
「エメさんたちはもうオーリュウ様の城へと向かわれるのですか?」
ファーシルの質問に答えを知っているアンネが私の顔に視線を向けた。
実に素直な子だ。
「いえ、オーリュウ様に用事が出来たらしく、しばらくはここに滞在するつもりです」
と正直に答える。
まあ、用事が出来たからではないが…
「それは良かった。もしかして一週間後のここクナモテアで行われるお祭りも見て行かれますか?」
期待を込めてファーシルがこちらに視線を向けた。
なんとも純粋な眼で…
「…はい、せっかくなので楽しむつもりです」
まあ、隠しても仕方ないか…
「私もお祭りまではここに滞在するつもりです。良かったらその日は私と一緒に過ごしませんか?七魔衆は私以外に女がいないんです…だから、一度女子会たるものを体験してみたかったので、エメさんとアンネさんと楽しく色んな話がしてみたい…ダメですか?」
朝日に照らされている効果もあり、随分とファーシルの瞳が輝いて見える。
そんな瞳で訴えられたら、嫌とは言えないじゃん…
と反対側に顔を向けて、アンネに確認を取る。
「どうするアンネ?」
「エメさんがよろしければ私は構いません」
と相変わらずの笑みである。
ファーシルに視線を戻して、こくりと頷く。
「いいですよ。特にオーリュウ様にも言われていないし、一緒にお祭りを楽しみましょう」
にこやかな笑顔を作り、そう言ってみせた。
…が内心はげんなりしている。
当たり前だ…何で敵である七魔衆のリーダーと楽しくお祭りを楽しまなきゃならんのだ…
それに、せっかく推しとの二人っきりのデートを邪魔されることになる。
私の返答に喜んだファーシルが後ろを回って私とアンネの間にやってきて、私とアンネに抱きついた。
「…嬉しいです。お二人とも私の我儘を聞いて下さってありがとうございます。魔族の私にこんなに優しいなんて、なんて素敵な方々なんでしょう…」
ファーシルの感激ぶりにもう今更嫌だとは言えないなぁと思った。




