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第4話:クソ、ぽかぽかしてんじゃね~よ。

コン、コン、グリコールと話し込んでいるとドアをノックする音が響く。

ギ、ギィ―、相変わらず建てつけが悪いのか、ヒンジ部分の油切れなのか——

そもそも、この世界に油?グリス?とか存在するのか…?


そんなどうでもいいことを考えていると「失礼します。グリコール様。」

少し可愛らしい声と共に、トゲトゲでもなく、モヒカンでもない女性が入ってきた。


「ジャスミンか、どうしたのかね?」


「はい、農作物なんですが…」


ジャスミンと呼ばれた女性は歯切れ悪く答える。

その後も、「農作物が上手く育たない」「どうしたらいいのか」などしばらく話し込んでいた。


((農作物ね~、なんかスキルあった気がするな))


「ヒミコちゃん、農業関連のスキル持ちなのかい?」


((おっ、これは念話になるのか…さっきの考えごとは、念話にならなかったのにな。う~ん、境界線が明確じゃないと、脳内が開けっぴろげみたいになるじゃね~か、クソっ))


「ヒミコちゃん…もしかして、聞こえてない?」


((あっ、ごめん、ごめん。別なこと考えてた。それで、なんだっけ?農業関連がどうとかだっけ?))


「うん、そうそう、ヒミコちゃんが農業関連のスキル持ちなの?って聞いたんだ。あっ、ジャスミン、悪いんだけど、お茶淹れてきてくれないかな?」


「わかりました、グリコール様」


「うん、悪いねジャスミン」


「いえ、お気になさらないでください」


ジャスミンは、静かに扉を閉めて部屋から出て行った。


((あっ、そうそう、肥料とかなんとか、そんなスキルあるわ))


グリコールは、顎に手を当てて少し考え込んでいる。


((他のスキルも確認しておくか、あっ、でも、その前に、グリコールのスキルってなんだろな?))


《スキル確認》と頭にイメージすると、前回同様スキルが一覧で表示される。


((っていうか、頭の中にイメージで出るのは確認しにくいよな、クソ。表示方法は変えられないのかな…))


その時、頭の中で『スキルレベルがアップしました。』と機械的な音声が聞こえた。


《えっ、なに、レベルアップ?そんなの聞いてないぞ、あのおっさん、ホント使えね~な、クソが》と、心の中で呟く。


『拡張機能が有効になりました。機能を有効化しますか?』と続けて聞こえる。


《はぁ?有効化?なに、言ってんだろ。とりあえず、有効化で…》と思考。


『拡張機能を有効化します。』と聞こえた瞬間、頭の中に表示されていたスキル一覧が、透過性のウィンドウのように目の前に表示された。


((おっ、なに、これ、すごい!あぁ~、これ、あれだ、異世界転生でありがちな、ステータスウィンドウみたいなもんだ。異世界きた~!って感じだな。今までが、UI悪すぎたもんな。ふぉっふぉっふぉっ))


表示されたウィンドウのようなものを手で触ってみると、特に何も起きなかった。


((ちっ、触れないのか、このウィンドウは…クソ、使えね~…けど、視認性は上がったな。でも、下とか横とか、どうやって動かすんだ?クソ、あのおっさん、説明書くらいくれよ、役立たずが))


目線を下げたり、横にずらしてみたり、試行錯誤してみる。


((なに、これ、固定画面なの?クソ、使えね~))


呆れて、頭を左右に振っていると、ウィンドウが左右にスライドした。


((はぁ?頭の動きに連動してんのかよっ。ちっ、ホントわかりにくいな))


頭を下げてみると、ウィンドウも下にスライドする。


((はぁ~、でも、スキル多すぎ、一つずつ確認するとか、めんどすぎ。クソ作業だわ。やってらんね~。ウィンドウ閉じろ))


頭の中で《閉じろ》と思い描いた瞬間、目の前のウィンドウはスーッと閉じた。


コン、コン、とノックの音がして、お茶を淹れたジャスミンが戻ってきた。


「お待たせしました。どうぞ」


お茶の入ったコップをグリコールとヒミコに手渡す。


「ジャスミンありがとう。悪かったね」


グリコールは、ジャスミンに優しい眼差しでお礼を伝えていた。


「いえ、お気になさらないでください」


「ど、ど、ど、どうも。あ、あ、あり…がとう」


ヒミコもジャスミンにお礼を伝えた。


((声に出して話すのめんどくせ~な。あぁ~、クソ。契約))


ジャスミンの頭上に、ぽわんっと『ヤマダヒミコ』と表示。


((あっ、またやってしまった。クソ、ごめん。ホント、ごめん))


ヒミコはジャスミンの方を恐る恐る見る。

怒っている感じはなく、少しだけ驚きの表情を浮かべていた。


「ヒミコちゃんだっけ?すごいね、二面性がすごいね。わたし、驚いちゃったよ」


((あっ、うん、ごめん。また、勝手にスキルが…グリコーゲン、いや、グリコールの時と同じ感じで))


「うん、大丈夫だよ。特に念話が伝わってくるだけで、なんの害もないみたいだし。ヒミコちゃんにとっては、有効なコミュニケーションを取る方法なんじゃないかな」


「ジャスミン、さすがだね。よく分析できている」


グリコールは、自分のことでもないのに少し自慢げな表情をしていた。

ジャスミンは、少し照れたように微笑む。


((分析…もしかして、スキルなのかっ!もしや、わたしのスキルを狙って、丸裸にしようと考えているな。ちっ、迂闊だったぜ…お茶で毒でも盛られたかっ、クソ。不覚…))


「ヒミコちゃん、まだお茶飲んでないよね?あと、スキルって奪えないと思うよ。正確に言うと、スキル強奪ってスキルは、スキル戦争の時に失われたはずだからね。あと、スゴイ口悪いね、ヒミコちゃん。わたし、驚いちゃったよ、口悪すぎて。でも、正確に言うと口が悪いってことではないね。頭の中?心の中?内面の言葉が悪いって言った方がいいのかもね。うふふ」


((あっ…ぐうの音も出ないぜ、クソ))


「うふふ、面白いねヒミコちゃん。あっそうだ、わたしね、ジャスミン・キース。スキルはね、補佐官なの。簡単に言うと、指示出しや調整、情報整理、分析などのサポートに特化しているんだよ。でもね、分析家や情報収集などの専門スキルには敵わないんだよね」


((へぇ~、補佐官か。しかも、その分野の専門スキルもあるのか。勉強になるぜ。ありがとう、ジャスミン))


頷きながら聞いていたグリコールも話に入ってくる。


「ジャスミンは、わたしの補佐官をしてくれているんだ。ちなみに、わたしのスキルは領地運営(町)だよ」


((領地運営で町ってことは、規模制限があるってことか。うんうん、なるほど。スキルって奥深いな))


「ヒミコちゃんも、さすがだね。わたしの領地経営は、町規模が限界なんだ。だから、町規模のスキルで結託するとか、町以上のスキル持ちの傘下に収まることが必要になってくるね」


((なるほど、領地経営スキル持ちの同盟、もしくは上のスキル持ち…州とかそんな感じってことか))


「そうそう、そんな感じ。ヒミコちゃんは、スキルもスゴイけど、頭脳も明晰なんだね」


((えっ、いや、それほどでも~…ないです))


「うふふ、ヒミコちゃん可愛いな。妹にしたくなっちゃう」


優しい笑顔で、ヒミコを見つめるジャスミン。


「これも何かの縁だし、力を合わせることができればいいね、ヒミコちゃん」


グリコールも、親が子供を見つめるような笑顔でヒミコを見る。


((お、あっ、うん、そうだね。))


「照れてるね、ヒミコちゃん。可愛い」


「そう言えば、ヒミコちゃん。その着ている服は、どこかの制服なのかい?」


((あっ、そうそう、学校の制服。使えね~おっさんが、現地衣装くれないからさ、仕方なく着てる))


グリコールとジャスミンは、少し不思議そうに顔を見合わせている。


「ヒミコちゃん、学生なんだね。わたし、23歳だから、本当に妹でも不思議ではないよね。やった、可愛い妹ができた」


「ここら辺では、見たことがない制服だから、他の国からきたのかと思ってたんだよ」


((この制服だと、やっぱりよそ者感あるか。ちっ、あのおっさんめ。クソ。よそ者め~とか、攻撃されたら、どうすんだよ。あぁ~、干物にすればいいか。うん、よし、問題解決))


ジャスミンの笑顔が、少しだけ引きつっていた。


「ヒミコちゃん、干物スキルは、わたしたちには使わないでね」


((大丈夫。スキルの使い方がよくわかってなかっただけだから。うん。あの4人は事故ってことで…お願いします))


「うふふ、少し驚いちゃったけど、事故なら仕方ないものね。グリコール様もそう思うでしょ?」


「まぁ、そうだね。戻す方法もあると思うから、いいんじゃないかな」


((スゴイ、寛容だ))


天涯孤独?の身から、仲間?家族?のようなものができた気がする。

グリコールの部屋の中は、ほのぼのした空気に包まれていて、おばあちゃんが亡くなってからは、久しぶりに思い出す感情。

ぽかぽかする心は、とても温かく感じた。

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