第2話:クソ、干物スキルってなんだよ。
((ちっ、ホントここ、どこだよ))
かろうじて残っている建物の方へと歩き出した。
((クソ、現地衣装とかくれないのか。あのおっさん))
ドロロロロロ——
どこからともなく、何かが向かってくる音。
地を這うような重低音が響く。
音のする方向に目を向けると、猛烈な土煙が巻き上がっていた。
目を凝らしてよく見ると…
((クソっ、ぜんぜん見えない))
何かはこちらに向けて加速。
ドロロロロロォォッ——
((ちっ、こっちきてるな。めんどくせ~))
ブォン、ブォォォンッ——
キーッ、と音と共に目の前にモヒカン。
モヒカン、トゲトゲ、それ以上の形容が見当たらない。
((ちっ、なんだこいつ))
「ウッヒャヒャ~!ここはグリコール様の領地だぜぇ!」
((クソ、話しかけんな))
「ど、ど、ど、どうも」
「あ~ん、なんだお前は~。変なやつだな」
((お前に言われたくないわ、ゴミカスが))
モヒカントゲトゲ野郎は、トゲトゲがふんだんにあしらわれたバギーのような乗り物から降りる。
「ウッヒャヒャ~!ここはグリコール様の領地だぜぇ!」
((さっきも言ったろ、こいつバカか))
「あ、あっ、は、はい」
「あ~ん、話もできないのか、お前は~」
((ちっ、うっせ~な))
「あ、え、えと、なにが…です、かね」
「まぁ、いいや、ヘッヘヘ、グリコール様の所に連れていくか」
「え、えっ、あ、いや、こ、困ります」
「あ~ん、口答えするんじゃねぇ」
モヒカントゲトゲ野郎は、腕を掴んで無理やりバギーのような乗り物に乗せようと引っ張る。
「オラオラ、俺様の三眼の魔獣に乗りやがれってんだ」
((ちっ、クソダサいネーミングセンス。クソ、腕を引っ張るな))
「ウッヒャヒャ~!強情なやつだぜぇ」
((クソ、これ魔獣なのか?乗り物なのか?どっちなんだ?))
「す、す、すいま、せん」
「三眼の魔獣の乗れってんだよ」
((ちっ、うっせ~な。干物にすんぞ、コラ))
モヒカントゲトゲ野郎の腕を掴む力が弱くなる。
体からシュワシュワと蒸気のようなものが噴出してきた。
シュー、ポン、ボトッ——
目の前にいたモヒカントゲトゲ野郎は消え、代わりに人形のようなものが落ちていた。
((ん?まさか…))
地面に落ちた人形のようなものを拾い上げる。
((あっ、これモヒカントゲトゲ野郎だわ。ふぉっふぉっふぉっ))
とりあえず、モヒカントゲトゲ野郎人形を三眼の魔獣に置く。
((あのおっさん、スキルのこと何も説明しないから、無駄に人形を作っちまったぜ。クソが。
でも、干物にしてやるって思ったけど、なんで人形になったんだ))
三眼の魔獣をよく見てみると、なんてことはない魔獣に見立てたトゲトゲのバギーだった。
((ちっ、乗り物かよ。魔獣かと思ってわくわくしてたのによぉ。わたしのわくわく返せってんだ))
三眼の魔獣に乗り込み、エンジンをかけてみる。
ブォン、ブォォォンッ、ブォォォンッ——
((へっ、いいじゃね~か。気に入ったぜ。でも、どうやって動かすんだ))
スロットルをクイッと回す。
ブォン、という音と共に前へと走り始めた。
((ほぉ~、いいね。これは、わたしのもんだな))
((さてと、これからどうしようかな。
グレゴリーだっけ?グリコーゲン?そいつのところに行ってみようかな))
((モヒカントゲトゲ野郎が来た方に向かえばいいんだな))
ガォン、ガォン、と土煙を上げながら走り始める。
((あっ、その前にスキル確認しておこうかな))
一旦、三眼の魔獣を停める。
((えっと、スキル確認だったな))
頭の中に所有スキルが一覧で表示された。
干物:水分含有量60%以上の物質が対象(全ての生命対象)
翻訳:あらゆる言語が理解できる
肥料:土壌をあらゆる植物が育つ状態にする
水脈:地下水・水源の位置がわかる
貯蔵:食物の鮮度を長期間保つ(半永久的に効果継続)
調理:あらゆる食材を最大限に活かせる
鑑定:対象の詳細情報が把握できる
結界:半径20m以内に防護フィールドを展開(全ての攻撃無効)
治癒:あらゆる傷や病を回復させる(他人に使用可能)
地図:踏破した土地の地図が頭に生成される
念話:離れた相手と意思疎通できる(契約した相手のみ)
採掘:地中の鉱物・資源の採取が容易になる
契約:他人と契約を結ぶことができる
不老:年老いない
不死:死なない(例外あり)
…
…
…
((クソ、スキルが多すぎて把握するのがめんどくせ~))
再び、三眼の魔獣を走らせた。
((あっ、地図。う~ん、踏破してないから意味ないな。閉じろ))
((モヒカントゲトゲ野郎の痕跡を追えばいいんだ))
三眼の魔獣が走ってきた跡に沿って、走らせていく。
しばらく走っていると、石を積み重ねたような壁が見えてきた。
((これ、絶対、グリエルのことろだな))
石壁には切れ目があり、門のような造りで扉は閉じていた。
門の側にはタワー構造の建造物があり、見張りの人員が配置されている。
((ふ~ん、意外とちゃんとしてるんだな))
見張りのタワーから、こちらに向かって手を振っている。
((モヒカントゲトゲ野郎と勘違いしてるのか。目が腐ってやがるな))
モヒカントゲトゲ野郎人形を手に持ち、手を振り返してみた。
ギッギギ、と門がゆっくり開き始める。
((セキュリティがザルだな。グリコシド))
門へ向かって三眼の魔獣を走らせ、難なく石壁の内部へと入り込むことに成功。
エンジンを停止し、三眼の魔獣から降りる。
((何にもないな、ここは))
奥にある石や木といった廃材で組み上げられた建造物から、3人の影がこちらに向かってきた。
当然のように3人共、モヒカンにトゲトゲの衣装を着ている。
「ウッヒャヒャ~!ここはグリコール様の領地だぜぇ!」
真ん中のモヒカントゲトゲ野郎が声を発した。
((うわぁ、モブってこんな感じか))
「ど、ど、ど、どうも。あ、あ、あと、これ」
モヒカントゲトゲ野郎人形を手渡す。
「ヒャヒャ、兄貴~、こんななっちまって、どうしたんだよ~」
モヒカントゲトゲ野郎弟がモヒカントゲトゲ野郎兄の人形を手に泣き出した。
((あれ見て、わかるんだ。スゲーな兄弟愛))
「き、貴様、よくも兄貴を~、やってくれたな」
3人のモヒカントゲトゲ野郎は、手に角材や鉄パイプを持ち臨戦態勢。
「あ、え、え、えっと、ご、ご、誤解なん…です」
「な~んだと~、何が誤解だってんだ」
「う、う、う~んと、ま、間違って…スキルが、です」
「あ~ん、間違ってスキルを出しただと~。ふざけやがって」
「あ、い、いえ、ほ、ほ、本当、なん…です」
((くそっ、説明するのがめんどくせ~。いっそ全員を干物にしちまうか))
((あっ))と思ったのも、時すでに遅し。
3人のモヒカントゲトゲ野郎から、シュワシュワ音を立てて水分が抜けていく。
((あちゃ~、またやっちまったぜ。ごめん))
ポトッ、ポトッ、ポトッ、3体のモヒカントゲトゲ野郎人形が追加された。
((うわぁ、どうしよ人形4つもあるし。捨てようかな。でも、これって死んでるのかな?))
片手に2体ずつ人形を持ち、凝視してみる。
((う~ん、わかんないな。あっ、鑑定スキルってあったよな))
((鑑定。これでいいのかな))
人形それぞれの上部にウィンドウが表示された。
ウィンドウには各人形の詳細情報が記載されている。
名前:ゲル
性別:男性
年齢:23歳
スキル:マシンメンテナンス
状態:干物(状態異常)
三眼の魔獣の生みの親。ジルの兄。
マシンメンテナンスが得意で、どんな状態でも修理が可能。
ただし、兵器や武器になりそうなものには無効。
名前:ジル
性別:男性
年齢:20歳
スキル:マシン操作
状態:干物(状態異常)
ゲルの弟。
マシン操作に長けている。
初めて乗るマシンでも、全て把握できる。
ただし、兵器や武器の操作は不可。
名前:クリオ
性別:男性
年齢:25歳
スキル:建造物メンテナンス
状態:干物(状態異常)
建造物の不良個所を瞬時に見抜き、最適な修繕方法がわかる。
ただし、兵器や武器に関わる建造物はメンテナンス不可。
名前:チモシ
性別:男性
年齢:23歳
スキル:料理
状態:干物(状態異常)
あらゆる食材を使用して、料理をすることが可能。
可能な限り美味しいものを生み出せるが、失敗することもある。
ただし、毒殺などを目的とした料理は不可。
((へぇ、鑑定って便利だな))
((それで、干物は状態異常か…つまり、元に戻せるんだ。戻してもな~、微妙な気がするけど))
4体のモヒカントゲトゲ野郎人形を、三眼の魔獣にそっと置いた。
((とりあえず、グリコーゲンにでも会いにいくか))
奥の建造物に向かって歩き出した。




