第1話:ちっ、転生先がクソかよっ。
前日から、雪が降り積もり、辺りは一面真っ白な銀世界。
ガラガラガラ、と玄関を開け外へと一歩踏み出した。
ツルッ——
一瞬の出来事だった。
ゴッ、ゴキッ、鈍い音。背中は雪で冷たいはずなのに、特になにも感じない。
((あれ、わたし死んだんじゃ…))
((クソっ、大学にも合格したばっかなのに…))
((受験料…クソっ、損した…))
そこで意識は途絶えた——
次に意識が目覚めると、なぜか荒野に...ちゃぶ台?
((誰だ、この小汚いおっさんは。クソが))
「うむ、ヤマダヒミコじゃな。まぁ、茶でも飲みんさい」
「あっ、ど、ど、どうも」
((ちっ、なんだよコイツ。慣れ慣れしいな))
「いちおうじゃが、わし神様。小汚いおっさんではないぞい」
((なにっ、心を読めるのかっ。くそっ、めったなこと言えねーじゃねーか))
「ヤマダヒミコ、口悪すぎじゃな」
おっさん、改め神様はお茶をすすりながら、微笑んでいる。
「か、か、か、神様。な、な、なんの用ですか?」
((考えを読めるなら、声に出す必要ないな。くそっ))
「まぁ。そうじゃな。声に出さんでもええわい」
((ちっ、そうじゃろうな))
「ふぉっふぉっふぉっ、わしの話し方うつとっるな」
((くそっ、恥ずかしいわい。屈辱的じゃ))
「まぁ、ええわい。そろそろ本題に入るとするかのう」
おっさんじゃなかった、神様はどこからともなく、せんべいを取り出してちゃぶ台に置いた。
「ヤマダヒミコ、アースグリム出身だったのう」
((うむ、正確には、レムリア銀河・フレイムフレア系・第四惑星アースグリムじゃがのう))
「お主、細かいやつじゃな。ふぉっふぉっふぉっ。まぁ、よい」
せんべいをボリボリ食べながら、お茶をすする元おっさん、いや神様。
「うむ、まぁ、あれじゃ。簡単に言うとじゃな、スキリオンが崩壊したわけじゃ」
((スキリオンじゃと?どこやねーん。知らんがな))
「まぁ、お主が知らんのもムリはないのう。レムリア銀河の隣の隣に位置しておる、
ガルドリア大星団銀河・メガフラン系・第三惑星スキリオンじゃな」
((ぜっんぜん、知らん))
「そりゃそうじゃ、隣と言っても辿り着くことも見ることも不可能じゃからな。
まぁ、簡単に言えば異世界ということじゃな」
((うぉ~、異世界きた~!じゅるる、異世界転生もの読んでたかいがあるぞい))
「アースグリムの神からも聞いておるぞい。お主が異世界転生ものが好きな、
頭脳明晰でちょっとアレなおなごじゃということはのう」
((くそっ、個人情報保護法とかないのかのう))
「うぬ、でも、お主もう死んでおるからのう。それに、わしら神じゃしな。
神のルールには個人情報保護法なんてもんはないんじゃよ。ふぉっふぉっふぉっ」
((まぁ、ええわい。んで、ここはおっさん、いや神様の世界的な感じなのかのう?ふぉっふぉっふぉっ))
「お主、笑い方までうつっておるぞい。まぁ、ええわい。
アースグリムの神的には、その、なんじゃ、予想外に打ち所が悪かったらしいぞい。
その、あれじゃ、不確定要素で、死ぬはずではなかったお主が死んでしまったということじゃな」
((よくある、あれじゃな。死ぬはずではなかったから、転生させてやるわい的な感じじゃな))
「理解が早くて助かるのう。アースグリムでもトップ5に入る秀才じゃもんな。大したものじゃ。
お主、あれじゃろう、アースグリムのヤマタイ皇国出身で、アマテラス総合科学大学にも首席で合格しておるじゃろう。うむ、本当にあっぱれじゃな」
((うむ、惑星でトップ5じゃったのか。それは知らんかったのう))
「惑星も広いからのう。お主の国では一番じゃったな」
おっさん、神様が淹れたお茶をすすりながら、せんべいをいただく。
((せんべい食べながらでも話せるってスゴイのう))
「うむ、お主は声に出しておらんからのう。まぁ、ええわい。
それでじゃ、このスキリオンじゃがな、スキル戦争が勃発したわけじゃ。」
((ふむ、戦争で滅んだんじゃな。ありがちな展開じゃのう))
「そうじゃな、ありがちな展開といったところじゃな。
スキリオンはスキル文明で発展した惑星でのう、全ての住人がスキルを所持しておるのじゃ」
((ふむ、大方、バトル系スキル所持者同志の争いに惑星が巻き込まれたってところじゃろうな))
「その通りじゃな。話が早くて助かるわい。
そこで、わしが神の寄り合いでじゃな、優秀な人材の派遣を申請したわけじゃな」
((ほほう、そこで、このわしが選ばれたというわけじゃな))
「そうじゃな。転生させるためにはのう、死ぬはずではなかったことも条件になるんじゃ。
そうでなければ、秩序が乱れてしまうからのう。ヤマダヒミコよ、お主は不確定要素によってアースグリムでの命運は尽きてしまったわけじゃ。そこで、わしが派遣転生法に従ってじゃな申請をしたところ、お主が転生対象としてスキリオンに派遣されたわけじゃ」
((くっ、知らなかったわい。転生にルールがあるじゃと))
「ふぉっふぉっふぉっ。それはそうじゃ。神にも悪いやつがおるからのう。
悪用されんためのルール制定といったところじゃな」
((わしは、スキリオンでなにをするのかのう))
「うむ、まぁ、あれじゃ。その、スキリオンを再び輝かせて欲しいのじゃよ」
((くっくっくっ、このわしに支配しろというんじゃな。よかろう、存分に発揮してやるわい))
「いや、そうではなくてじゃな。武力行使で支配するのではないんじゃ。
荒れ果てた大地に緑を増やし、住人を豊かな生活に導いて欲しいということじゃな」
((ちっ、チートスキルで無双できないわけじゃな。残念じゃのう))
「ふぉっふぉっふぉっ。お主は、そういうの好きそうじゃもんな。
スキルは使いようによっては無双できるぞい。ただし、無益な争いはしてはいかんぞい。
降りかかる火の粉を振り払うくらいは仕方ないがのう」
((降りかかる火の粉的な輩がおるってことじゃのう))
「まぁ、そういうことじゃな。住人も減ってしまったんじゃが、優秀なスキル持ちも戦争で失ったからのう。
今では、体力と運で生き残った住人ばかりになってしもうたのじゃ」
((なるほどのう。まぁ、なんとかなるじゃろ))
「そこでじゃ、お主にスキルを色々くれてやるわい」
神様は、おもむろに立ち上がり「いくぞい」と掛け声を上げる。
一瞬、パッと眩しい光に包まれた。
((クソが、目を開けてられない))
「終わりじゃ。スキルを色々見繕っておいたからのう。役立てるのじゃ」
((ちっ、なんか思ってたのと違う。雑なスキル譲渡。クソ))
「うむ。スキルの確認はじゃな、頭に所持スキルが思い浮かぶようになっておる。
使い方は、それも思い浮かべるだけじゃ。簡単じゃろ」
((うむ、理解したぞい))
「あとは、植物の種などじゃな。荒れた大地を頼むぞい」
スーッと意識が遠のいていく。
再び意識が戻ると、荒れ果てた荒野のど真ん中だった。
((はぁ?なにここ、どこなんだ。おっさんは?))
とりあえず、起き上がり周囲を見渡す。
おっさん、いや神様の姿はなく、辺りはかろうじて残っている建物の残骸、植物も一切見当たらないようなゴツゴツした岩肌が広がる荒地。
まさに不毛な大地——
スキル戦争の大きな傷跡が残る荒れ果てた世界が広がっていた。




