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Witch Squadron  作者: Se-34gu-0
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FILE 007

FILE 007「空いた席」


訓練が終了した、夕暮れ時。


一日の緊張から解放された安堵と、体にまとわりつく疲労感を抱えながら、ミナは食堂の重い木製の扉を押し開けた。


その瞬間、思った以上の熱気と賑やかさが、容赦なくミナの全身を包み込んだ。魔女たちの弾んだ笑い声が天井に反響している。


厨房の方からは、慌ただしくぶつかり合う食器の硬い音と、香ばしいパンの匂いが漂ってくる。


近くのテーブルでは、誰かが今日の任務に対する容赦のない愚痴をこぼし、仲間がそれに大げさに同意していた。


湯気と活気の向こうに広がるその光景を前に、ミナはスープとパンが載ったトレーを持ったまま、ふと足を止めた。


少しだけ、羨むような、どこか遠い世界を見るような目で周囲を見渡す。


けれどすぐに「自分には関係のない場所だ」と視線を落とし、いつものように誰もいない壁際の、薄暗い端の席へと歩き出そうとした。その時だった。


「み、みなさん……」周囲の喧騒に掻き消されてしまいそうな、けれど耳によく馴染んだ声が、まっすぐミナの鼓膜を叩いた。


驚いて振り返ると、オレンジ色の鮮やかな夕暮れが差し込む窓際の席に、イズモとバレリアの姿があった。


イズモはミナに向かって何かを言おうと、半端に口を開けている。


けれど、極度の緊張のせいか、言葉がそこから先へ続いてくれない。


「あ、あの、その……ええと、つまり……」見る見るうちに、イズモの顔が耳の付け根まで真っ赤に染まっていく。


そのあまりに不器用な様子に、隣に座るバレリアが、あきれ果てたように深い溜め息をついた。


「イズモ、アンタ何年生きてんのよ。たかが声をかけるくらいで、なんでそこまでガチガチになってんの」


「す、すみません……心の準備が……」


「謝るな!余計に情けなくなるでしょ!!」二人のいつも通りの、どこか噛み合わないやり取り。


それを見ているうちに、ミナの張り詰めていた口元が自然と緩んだ。ほんの少し、自分でも気付かないくらい小さな、かすかな微笑み。


しかし、それを見逃さなかったバレリアが、待ってましたとばかりに大きく手を振った。


「ミナ!こっち来なさいよ、ここ席空いてるわよ!」静かだった窓際の席から放たれた、よく通る大声。


その瞬間、周囲のテーブルにいた魔女たちの視線が、一斉にミナへと集まった。他人の視線に極端に弱いミナの肩が、びくりと小さく震える。


「えっ」


「何よ、聞こえなかったの?」


「えっと……、あ、あの……」どうすればいいのだろう。


頭の中が真っ白になり、足が床に縫い付けられたように動かなくなる。


一緒に座ってもいいのだろうか。


今さら、私なんかがその輪に混ざってもいいのだろうか。


「迷惑じゃないだろうか」「嫌がられないだろうか」という、いつもの臆病な不安が、頭の中でぐるぐると渦を巻いて離れない。


ミナが困惑して立ち尽くしている間も、バレリアは頬杖をついたまま、品定めをするような目で待っている。


そしてイズモは、自分のせいでミナを困らせてしまったのではないかと、さらにガチガチに緊張した様子で身を固めていた。


「み、ミナさん……その……」


「はい」


「よ、よかったら……ご一緒に、どうですか。せっかく、席も……空いてますから……」消え入るような声で必死に言い終えたイズモが、耐えかねたようにガバッと深く俯く。


もう顔だけでなく、首筋まで真っ赤だった。


ミナは思わずパチパチと瞬きをした。


なんだ。


この人も、私と同じように緊張するんだ。


自分だけがこの場所に怯えているわけじゃないんだ。


そう思った瞬間。


胸の奥を締め付けていた結び目が、するりと解けるのが分かった。本当に少しだけ、ずっと強張っていた肩の力がふっと抜けた。


「……失礼します」引き寄せられるように歩み寄り、空いていた椅子にそっとトレーを置いて、腰を下ろす。


それを見たバレリアが、満足そうに不敵な笑みを浮かべた。


「最初からそうすればいいのよ。変に遠慮ばっかりしてさ、見てるこっちがイライラするわ」


「……簡単に言わないでください」


「なんで?ただ歩いて、椅子に座るだけでしょ」


「それが、難しいんです」


「何がよ」


「……全部です」大真面目に、少し尖らせた口調で答えたミナの言葉に、バレリアが堪えきれずに吹き出した。


つられるように、俯いていたイズモも小さく肩を揺らして笑い出す。


気付けば、ミナの口元からも、今日一番の柔らかな笑みが零れていた。いつも通り、少し冷めかけたスープをスプーンで掬い、口に運ぶ。


食堂の料理の味は、一人で食べていた時と何も変わらないはずだった。けれど。一人で静かに、義務のように飲み込んでいた時よりも。


目の前で笑う二人の気配を感じながら食べる食事は、喉を通るスープも、その温もりを受け止める胸の奥も、ほんの少しだけ、じんわりと温かかった。

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