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Witch Squadron  作者: Se-34gu-0
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17/21

FILE 017

今回の後書きにもYOTUBEのリンクを張らせてもらってます。


過去編は正直な話ミナの部隊に入る前の生活と歌詞の内容がどういった物だったのかの説明回となってます。


読みをえてからEDをもう一度聞くと多分違って聞こえると思います。


こんな感じが「Witch Squadron」の楽しみ方だと、思ってください。


FILE 017 ~出会いと、温かい日々~(過去編)



ここは、かつて私が暮らしていた村。


今では村はずれの水車小屋だけが、私の居場所になった。


それはほんの少し前の話――あの頃の私は、まだ「ミナ」と、名前で呼ばれていた。


「ミナ」と、当たり前のように声をかけられていた。けれど、その時間は長く続かなかった。


物心ついた頃から、私の内側には荒れ狂う風が渦巻いていた。


心が動くたび――怒り、悲しみ、そして何かを強く望むたび、その力は暴れ出した。


周囲のものが浮き上がり、突風が吹き荒れ、時には小さな爆発のように、何もかもを薙ぎ払った。


「ミナは特別だから」最初はそう言われていた。


けれど、その “特別さ” が人を怖がらせ、畑を荒らし、家の壁を傷つけるたびに、言葉は少しずつ変わっていった。


「ミナには近づくな」


「危ないから、あっちにいろ」


「…… あの子は、“危険” なんだ」


いつしか私は、村の外れの、誰も来ない広場に一人でいることが多くなった。


力を抑える方法も分からず、ただ胸の内にある渦を抱えて、空ばかり見ていた。


風が吹くたび、自分の中の力が共鳴して騒ぐのが分かる。


まるで、外の世界に出たがっているように。だけどそれを表に出せば、また誰かが怖がる。私はいつも、力を押し込めるように胸を押さえていた。


そんなある日、村の大通りにとても大きな張り紙が貼り出され、集落中が沸き立った。木々の緑が鮮やかな、晴れ渡った日のことだった。


風には花の香りが混ざり、道には着飾った少女たちが集まって、笑い声が絶えなかった。


――《魔女兵士 大規模招集》

その太い文字を見た瞬間、村中の魔女たちの瞳が一斉に輝いたのを覚えている。


「聞いたことがある! 軍に入れば専用の訓練が受けられて、誰でも自由に空を飛べるようになるんだって!」


「給料も待遇も抜群で、村にいるより何倍も良い暮らしができるらしいわ」


「私たちもやっと、一人前の魔女として認められるのね! この村だけに閉じ込められなくて済むの!」


皆、まるでお祭りのように笑い、希望に満ちた声を上げていた。


この小さな村から外の世界へ、自分の力を試せる場所へ旅立てる喜びが、辺り一面に溢れていた。


あの笑顔の中にいれば、どれほど楽しいだろう。私も、本当はあの輪の中に走っていって、「私も連れて行って」と言いたかった。


だけど私は、その一歩を踏み出すことができなかった。


家の壁の陰、納屋の暗い影、生け垣の向こう側――日差しも届かない、人の視線が絶対に届かない場所に身を隠し、ただ遠くからその光景を眺めることしかできなかった。


(私には、関係のないことだ)


分かっていた。


私は「危険分子」。


力を制御できない欠陥品が、軍なんて大きな組織に入れるわけがない。


もしこの力が暴れれば、自分だけでなく、周りの仲間たちまで巻き込んで傷つけてしまうかもしれない。


「ミナがいると、何かが壊れる」――それは、私が何度も聞いた言葉だった。


皆が笑顔で未来を語る声が、少しずつ痛みになって耳に届く。


同じ魔女なのに、私だけがその道から閉め出されている。


地面に縛りつけられたまま、青く広がる空を見上げることしかできない。


――私だけ、何もできない――私だけ、この世界に合っていない。


そんな風に思って、隠れた壁の陰で肩を落とし、こぼれそうになる涙をぐっと堪えていた、その時だった。


「――やっと見つけた。随分と、待ちくたびれたぞ、ミナ・フェアスカイ」


頭の上から、風を切るような、それでいて太陽のように温かい声が降ってきた。


驚いて顔を上げると、そこには一人の女性が箒に乗っていた。


年の頃は二十代後半くらいだろうか。くるりと巻いた赤茶けた髪は少し乱れ、大きなゴーグルを頭の上に乗せ、油染みのついた作業服の襟元ははだけている。


背中には布で覆われた大きな羽のような装置を背負い、息を少し弾ませている様子から、急いでここまで来たことがすぐに分かった。



何よりも目を引いたのは、その瞳だった。怖がる色も、蔑む色も、憐れむ色も何一つなく、「探し回ったんだぞ」と言わんばかりに、私をまっすぐに捉えている、星のようにきらめく瞳。


「…… だれ、あなた。どうして私の名前を」


声が震えた。誰かとまともに話すのが、いつ以来だったか分からなかったから。


それも、私を怖がらない人と話すのは、初めてだったかもしれない。


女性はため息交じりに笑い、額の汗を拭いながらしゃがみ込んで、私の目線に合わせた。


「私はレイラ。空を飛ぶために魔女の航空隊を作ったのは私さ。この村には昨日から来ていたんだ。噂で聞いた通りの『心に風を宿した魔女』が、きっと招集の日に姿を見せるだろうと思って、あそこの広場で一日中待っていたんだぜ?」


彼女は村の大通りの方を指して、少しだけ頬を膨らませる。


「…… だけどいくら待ってもお前は来ない。姿を見せる気配もない。『もしや、誰かに止められているのか?』『自分から来る気がないのか?』と、気が気じゃなかった。待ちくたびれたから、こうして探し回って、直接迎えに来たってわけだ」


レイラは背中の布を外す。


そこにあったのは、木と金属で精密に組まれた、大きな翼の形をした装置だった。日光を受けて、金属の部分がきらきらと光る。


「招集の話は聞いている。だけどあれはな、軍が定めた “型にはまった力” しか使えない連中のための道だ。規格通りの力、制御しやすい力だけが求められる場所だ。お前のように、生まれつき大きな力を渦巻かせている魔女は、あんな所に入ったら、力を押さえつけられて、いずれ潰れるだけだ」


レイラは私の冷たくなった手を取り、両手で包み込むように握った。


その手は、機械を触っているからか少しざらついていたけれど、驚くほど温かかった。


「私はな、お前みたいな本当に空に向かう力を持った魔女を探して、ずっと旅をしていたんだ。だから昨日、この村に着いて、お前がここにいると分かった時は、飛び上がるほど嬉しかった。…… なのに、待てど暮らせど出てこないんだから、心配したし、寂しかったぞ」


その言葉を聞いた瞬間、今まで堪えていたものが一気に溢れて、涙が頬を伝った。誰も私を探してなんかいない、誰も私を必要としていない――そう思っていた。


なのにこの人は、私のために一日も待っていてくれて、来ないからと探しに来てくれた。レイラはゴーグルを目元に下ろし、私に向かって手を差し伸べる。「お前の力は、抑えつければ暴れるだけだけど、正しい道を示してやれば、誰よりも高く、誰よりも速く飛ぶための推進力になる。

兵士になることだけが、魔女の生き方じゃない。だが空を飛ぶのに、資格も身分も関係ない。必要なのは、飛びたいと思う心だけだ」


「…… 私でも、飛べるの? 力が制御できないこんな私でも、待っていてくれる人の側に行ってもいいの?」


小さく震えた私の声に、レイラは笑顔で力強く頷いた。


「ああ、飛べるとも。だってお前の中には、空へ向かう風が眠ってるんだから。さあ、行こう。ずっと待っていたんだ。お前のための空が、まだ誰も知らない世界が、これから待ってるぞ」


こうして私は、レイラに連れられて村を出た。


拠点である岩山の基地に着くと、そこにはたくさんの仲間たちがいた。皆がそれぞれが自分の箒と独自の空の飛び方を持っていた。


「おーい、レイラおかえりー!」


「何何、その後ろの子は? 新しい仲間?」


わいわいと集まってくる人たちに、私は怖くてレイラの背中に隠れてしまった。


だけどレイラに背中を押され、震えながら自己紹介をすると――

「――――めっちゃ可愛い子来たあああ!!」


「緊張してる顔も反則だろ!?」


「フォー――――!! 新入りちゃん可愛いすぎる!!」


予想外の大歓声に包まれた。誰も私を怖がらない。「危険」だなんて言わない。


ただ「可愛い」「来てくれてありがとう」と、笑顔で迎えてくれた。


特に私の面倒をよく見てくれたのが、エレナとガレリアだった。


エレナは背が高くて明るく、いつも私の髪をくしゃくしゃにしては


「ミナちゃんは部隊の天使だから、絶対に傷つけさせない」と笑ってくれた。


ガレリアは細身でクールな雰囲気なのに、手先がとても器用で、私の箒の調整をいつも丁寧にしてくれた。


「お前の力は荒いけど、可能性が一番ある。私が誰よりも良い箒にしてやる」と、不器用に守ってくれた。


訓練は厳しかった。


自分の中の渦と向き合うのは怖かった。


だけど二人が側にいてくれたから、笑って、泣いて、少しずつ強くなっていけた。


それなのに――幸せな時間は、長くは続かなかった。


最初にいなくなったのはエレナだった。


任務先の山で哨戒任務中に岩崩れに巻き込まれ、帰らぬ人となった。次の冬、吹雪の中へ未帰投の味方部隊の生存者を探しに行ったガレリアが、凍てついた風の彼方から戻って来なかった。


いつも「フォー――!」と盛り上げてくれたあの人も、戦いの最中、私を庇って倒れた。


私は強くなった。


自分の力を完全に制御できるようになり、誰よりも速く、誰よりも高く飛べるようになった。


だけど、強くなるたびに、大切な人たちがいなくなっていく。


そして、運命の日が来た。国の境目で起きた大異変。部隊総力を挙げての、最後の作戦だった。


「ミナ、お前はここに残れ」レイラがいつものように私の頭を撫でる。だけど私は首を振り、彼女の服の裾をきつく掴んだ。


「嫌です! 私も行きます! 私だってもう、皆と同じように戦えるんです! 置いていかないでください…!」


もう誰も失いたくなかった。これ以上、一人になんてなりたくなかった。


「お願いです、連れて行ってください! 私はもう、一人で待つなんて耐えられない…!」


泣きそうな声で訴える私に、レイラは少しだけ困ったように、だけどとても優しく微笑んだ。


彼女は自分の額から、あの大きなゴーグルを外した。


そして私の前にしゃがみ込み、両手でそっと私の顔を包み込むと、まるで世界を閉じ込めるように、ゆっくりと目元へかけてくれた。


視界が一気に暗く、狭くなる。


周りの景色も、空の青さも、何もかもが輪郭だけになり、消えていく。見えるのは、自分の手のひらと、足元の地面だけ。


レイラはそっと私の耳元に口を寄せ、諭すように、静かな声で語りかけた。


「大丈夫、ミナ。お前はもう、しっかりと自分の魔法が使えるようになった。昔みたいに、感情が高ぶって、心が乱れて、魔力が暴走しそうになったら… このゴーグルをかけると良い」


彼女の指が、ゴーグルの縁をそっとなぞる。


「そうすればミナの視界は狭くなる。余計なものは何も見えなくなる。だから――自分の手元だけを見なさい。今、自分が何をするべきか、自分の力だけを信じて、手元だけを見つめていればいい」


「お休みなさい、ミナ。またどこかで」


それが、彼女の最後の言葉だった。


レイラは立ち上がり、何も言わずに仲間たちの元へ歩いていった。ゴーグル越しの私の視界には、彼女の背中も、飛び立つ箒も、何も映らなかった。


一週間が過ぎても、誰も戻って来なかった。戻ってきたのは捜索隊が持って帰った壊れた箒の残骸だけ。


レイラがくれたこのゴーグルだけが、私の手元に残された。


私は再び、誰もいないあの水車小屋へと向かった。


もう誰も失いたくなかったから。


力を閉じ込め、声を殺し、ただ朽ちていくのを待とうと思ったから。


――そして今。


暗がりの中、私をじっと見つめるゴーグルの魔女がいる。


赤茶けた髪に、星のような瞳。間違いない、レイラだ。


私は立ち上がり急いで震える足で彼女の元へ駆け寄った。


「レイラ、戻ってきてたの? なんで教えてくれなかったの?」


喜びと疑問が入り混じり、私は彼女の服の裾をきつく掴む。


だけどレイラは、悲しそうに、だけど優しく私を見下ろして言った。


「ミナ…… まだ受け入れてないんだな、私たちの死を」


その言葉が、私の心臓に冷たく突き刺さった。


「…… なに、そんなこと言うんですか」喉が乾き、うまく声が出ない。


「帰って来るって言ったじゃないですか!!」


我慢できなかった。


今まで押し殺してきた想いが、孤独が、絶望が、すべて怒りと悲しみになって溢れ出す。


「お休みなさい、またどこかでって…… 約束したじゃないですか!! 私はずっと、ずっと待ってたんですよ!! なんで、今更そんなこと言うんですか!!」


叫ぶ私の肩を、レイラは何も言わずに抱き寄せてくれた。その腕は温かく、昔のままの感触がそこにあった。


だけど彼女は、私の背中を優しく叩きながら、ぽつりと本当のことを告げた。


「そうだな……」


短い相槌の後、レイラは少しだけ笑った。


昔のような、おどけたような、だけどどこか寂しい笑顔だった。


「お前の未来を作りたくってさ! ちょっと部隊のみんなで無理しちゃった感じ?」


頭が真っ白になった。


未来を作りたかった?みんなで無理をした?


「…… 何、それ」声が震えて、うまく言葉にならない。


私は彼女の胸元から顔を上げ、涙でぐしゃぐしゃになった顔でレイラを見つめた。


「エレナも、ガレリアも、あの時笑ってたみんなも…… それにレイラも…… 私のために、無理して戦いに行ったって言うんですか?」


レイラはただ、静かに頷いた。


「お前には、私たちとは違う、もっと広い世界が見える力があったから。この狭い空の中で埋もれさせるには、あまりにもったいない才能だったから。だから私たちは、お前が自由に空を飛べるようになるための道を、命を賭けて切り開こうとしたんだ」


「そんなの……!!」


私は彼女の胸を、子供のように何度も叩いた。


嬉しいはずなのに、感謝しなきゃいけないのに、心が痛くて痛くて、どうしようもなかった。


「そんなのずるいじゃないですか!!」


泣きじゃくりながら、私は何度も叫んだ。


「私は…… 私は未来なんていらなかったんです!! レイラや、ガレリアや、エレナや、みんなと一緒に、ただ笑って飛んでいられれば、それだけで良かったのに……!! 誰もいない未来なんて、意味なんてないじゃないですか……!!」


何もかもが嘘だったように思えた。


強くなるために訓練した日々も、仲間を失って泣いた夜も、レイラを待って閉じこもった日々も。


全部、私のために誰かが命を捨てた結果だったなんて。


レイラは私の髪を、何度も何度も優しく撫でてくれた。まるであの日、村で私を迎えに来てくれた時のように、何もかも包み込むように。


「ごめんな、ミナ」彼女の声は、風のように優しく私の耳に届いた。


「でも、お前はちゃんとこうして生きてくれていた。私たちの選択は、間違ってなかったんだと、今なら思える」


私はレイラの胸に顔を埋め、声を上げて泣いた。


今まで我慢していた分の涙を、全部流すように。


彼女がもうこの世にいないこと。


これが最後の別れなのだということ。


それでも、私のために生きてくれた人たちがいたこと。


全部を受け入れながら、私はただ、泣きじゃくった。


ゴーグルの向こうに見えていたものは、自分の手元だけじゃなかった。


こうして守られていた、温かい絆のすべてだったんだ。


レイラの姿が、少しずつ風に溶けるように薄れていく。


「さあ、ミナ。もう大丈夫,手元だけじゃなく、前を見て飛べ。お前の空は、まだ始まったばかりだ」


最後に見えた彼女の笑顔は、あの出会った日と同じ、星のようにきらめく笑顔だった。


私は涙を拭き、顔を上げた。手元には、あのゴーグルがしっかりと握られていた。

水車小屋を出る。


風が吹く。


胸の内の渦は、もう怖くない。


私はゴーグルをかける。


もう、視界を閉ざすためじゃない。


守ってくれたすべての想いを、この瞳に刻むために。


エレナの笑い声も、ガレリアの不器用な優しさも、レイラの温もりも、全部この風に乗せて。


――今度こそ、私だけの空へ、飛び立つ。




「Witch Squadron」のEDテーマ


実は17話とシンクロした歌詞になってます、もしよろしければ17話読了後もう一度曲をお聞きください。


https://youtu.be/RCTd8ZcuoiY

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