FILE 014
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14話を読み終えた後に、聞いてもらえると嬉しいです。
セレーネは狙撃体勢のまま、引き金に触れない。
撃つ理由が消えたまま、姿勢だけが残っている。
誰も「誰がいない」とは言わない。
FILE 014 「護りたい。」
前線が静まる。
さっきまで埋まっていた通信帯が、ぽっかりと空いている。
ノイズだけが細く流れ続けて、誰の声にもならない。
ルナの報告は短い。
「未帰還」
それ以上を足さない。
イズモは端末を一度だけ見て、何も更新しない。
更新できる情報が、もうない。
それを言えば、確定してしまうから。
ミナは、そこに立っていた。
さっきまで普通に聞こえていた声の場所を、無意識に探してしまう。
でも、何も返ってこない。
空間だけが、少し軽い。
軽すぎる。
「……いつもの顔がいない」
声は小さい。
自分でも驚くくらい、淡々としていた。
でも、その言葉のあとに続くものがない。
バレリアが一瞬だけ、息を止める。
冗談に変えようとして、やめる。
誰もが同じ方向を見ている。
でも、さっきと同じじゃない。
そこに“いないこと”だけが、全員の中に同時にある。
ミナはもう一度だけ、空を見てから前に出る。
誰も名前を呼ばない。
呼んだら終わる気がしたから。
でも、完全な静寂じゃない。
まだ遠くで小型の群れが流れ続けている。
核は生きている。
戦場は終わっていない。
ただ一瞬だけ、“穴”が空いただけ。
その穴の中に、名前だけが残る。
通信の途中で途切れたログ。
未帰還の表示。
数が合わない隊列。
でも、誰も数を言わない。
言ったら現実になるから。
ルナが短く言う。
「……再展開必要」
イズモが続ける。
「こ、このままでは押し戻されます」
セレーネは引き金に指をかける。
でもまだ撃たない。
その“間”ができた瞬間。
ミナは気づく。
さっきまでそこにあった“流れ”が止まっていることに。
止まっているのに、まだ戦場は続いていることに。
そして、その静止が一番危険だと理解してしまう。
「――待ってる暇はない」誰に言うでもなかった。
次の瞬間、ミナの身体が爆発的に動く。
二つの部隊が消え去った、あの敵の牙城の中へ。
仲間たちの血煙が舞う、敵の核へ向かって。
「駄目よ、ミナ!!」バレリアの鋭い制止。
だが、止まらない。
ミナの初速は異常だ。
文字通り命を燃料にして加速している。
「っ、このバカたれが……!!」毒づくと同時に、バレリアもまた地を蹴った。
愛用の獲物――箒の両端に凶悪な巨爪を戴いた「Raven's claw」の推進力を、限界を超えて爆発させる。
黒い魔力の尾を引きながら、弾丸と化したバレリアが猛烈な速度で空間を裂いた。
「ルナ! イズモ! ぼさっとすんじゃない! 射線を開け!!」
「――了解」ルナの返答は一瞬だった。
端末のキーを叩きつける。
残存する自動兵装が、ミナの突撃ルートの左右へと一斉に牙を向いた。十数発の対空ロケットが、ミナを囲もうとしていた小型の群れを側面から爆砕する。
「う、動けます! 動かします……!」イズモが叫ぶ。壊滅した二個部隊が遺した、無人の重火器群。
その制御権を強引に奪取し、ミナの前方を塞ぐ敵の防壁へと全弾叩き込む。
硝煙と爆炎が、敵の群れに一筋の亀裂を作った。爆風を突き抜けて、ミナはただ前だけを見て飛ぶ。
だが、敵の核もまた、突入してくる「個」を圧殺せんと、無数の触手と光線を収束させつつあった。
遮蔽物のない直線。
ミナの身体が、敵の照準に完全に捉えられる。(しまっ――)――ガギィン!!!鼓膜を破るような金属音。遥か後方からセレーネが放った超長距離の「一発の弾丸」が、ミナの鼻先数センチで、敵の放った致死の光線を弾き飛ばした。
「……行きなさい」セレーネが作った、たった一瞬の空白。
敵の核が、次の一撃をミナへ向けようとした――その直前。
「Raven's claw」の推進力で死線を踏み越えたバレリアが、ミナの真横へと滑り込み、その肩を並べた。
「何一人で突っ走ってんのよ!!」驚愕に目を見開くミナの視界で、バレリアが不敵に、そして狂おしいほどの熱量で笑う。
「合わせるわ!! 行くよ!!!」その言葉に、ミナの瞳に灯っていた冷たい決意が、熱い炎へと変わる。
言葉はいらなかった。ただ、短く。
「――うん」二つの影が、一つになる。
二個部隊を貪り食った化け物の懐へ、二人が同時に跳ぶ。
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」
バレリアの「Raven's claw」の巨爪と、ミナの掲げた「future sky」が、完璧なシンクロニシティで敵の核へと牙を剥いた。
「Witch Squadron」EDテーマ「小さな魔法」制作 Se-34-gu0
https://youtu.be/RCTd8ZcuoiY
この物語のEDテーマです。
ここまで読んでくださってありがとうございます、物語の投稿終了ではございませんが。
一旦物語の流れとしてここにYOUTUBEにUPしたEDテーマ「小さな魔法」のリンクを張らせていただきます。
わたくしの作品を読んで、曲を聞いて何かあなたの心に残れば幸いと思います。




