FILE 012
FILE 012「新しい翼」
あの夜間飛行任務から数日。
ミナたちが朝の食堂で席を囲むようになってから、不器用だった3人の距離は急速に縮まっていった。
しかし、あの戦闘の最後にミナが感じた「不気味な黒い煤のような魔力」の違和感だけは、今も胸の奥に燻り続けている。
そんなある日、3人は統合魔女飛行隊の本部から、ある特別な招集命令を受けた。
指定された大型の地下格納庫に足を運ぶと、そこには眩い照明に照らされ、鈍い金属光沢を放つ5機の新型飛行ユニットが鎮座していた。これまでの物とは一線を画す、個々の特性に完全に特化された専用機――。
その重厚な空気の中に、二人の魔女の姿があった。
「――来たな、夜間任務の英雄たちが」凛とした、よく通る声で3人を迎えたのは、長い髪をなびかせた魔女、セレーネ・アークライトだった。
彼女の背後には、バランス型と呼ばれる指揮官用のユニットが静かに輝いている。
「セレーネさん……?」ミナが驚いて声を漏らすと、セレーネの隣から、数々のモニターや魔力デバイスを淡々と操作していた小柄な魔女が、眠たげな目を向けながら一歩前に出た。
索敵・偵察型のユニット『ナイチンゲール』を背負う、ルナ・スフィアだ。「ミナ先輩、ヴァレリア、イズモ……。夜間任務の戦闘ログ、全部見せてもらった」
ルナは抑揚の少ない声でそう言うと、空中にホログラムの画面を展開した。そこには、ミナが放った蒼い閃光の軌跡と、消滅した「敵」のデータが映し出されている。
「ミナ先輩が最後に気付いた、あの妙な違和感……。ただの気のせいじゃない。
私のナイチンゲールのセンサーだけが、あの瞬間に不自然な魔力の歪みを拾ってた。
通常の敵の波長じゃない……もっと根の深い、何か別のモノ」ルナの言葉に、ミナの背筋が冷たく張り詰める。
やっぱり、あの感覚は間違っていなかったのだ。
「あの正体不明の『敵』が、なぜあの海空域に、何のために現れたのか……その調査と追跡が、私たちの新しい任務だ」セレーネが真剣な眼差しで3人を見据え、その口元を不敵に歪めた。
「ミナ、お前の『ランサー型』としての爆発力。バレリアの『格闘型』の突進力、イズモの『解析・支援』のサポート。そして、ルナの『索敵』これらを一つに束ね、私が『狙撃』と指揮で戦場を完全にコントロールする。……どうだ、この5人でチームを組むぞ」
「へえ、面白そうじゃん。その新型ユニット、早く使わせてよ」バレリアが物怖じしないタメ口で新型機を見上げ、不敵に笑う。
「セレーネ隊長の狙撃があれば、どんな遠距離の敵でも一撃ですね……! 私、全力で皆さんのサポートします!」イズモも大緊張しながらも、嬉しそうに拳を握りしめた。
ミナは額のゴーグルにそっと触れ、目の前に並ぶ4人の仲間たちを見つめた。
かつては一人で、自分の力を恐れながら孤独に飛んでいた。
けれど今は、背中を預けられるバレリアとイズモがいる。
そしてさらに、進むべき道を照らしてくれるルナの索敵と、どんな困難も撃ち抜いてくれるセレーネの狙撃がある。
「……はい。この5人で、なら」ミナの静かな、けれど力強い言葉に、セレーネは満足そうに深く頷いた。
「よし、統合魔女飛行隊、新生チームの初陣だ! 各員、新型ユニット換装!――大空の不穏を、すべて撃ち落とすぞ!」
「「「「了解!!」」」」眩い光の中、5人の魔女たちはそれぞれの新しい翼を纏う。
まだ見ぬ強大な謎の敵に向けて、彼女たちの本当の戦いが、今ここから新しく始まるのだった。




