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ただ咳をする  作者: haremame
廻編 第一章 星に願いを 月に幸せを
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悪食なる者 Ⅲ

「おいっ!?シュウサ!?」



おいおいどうしやがった。

シュウサがすっげー動きで魔王の腕を切ったと思ったら倒れちまいやがった。



「ユーサぁ!」



ユーサに合図を出せば転移させてくれる。

俺とシュウサの位置を変え、転移後すぐに後ろに下がる。でも、なぁんか殺気を感じねえな。



「どうした?なんかあったのか」



シュウサの回復のため時間稼ぎたいな。



「まあね。嬉しいことならあったかな」



おっと、ノッてくれるとは。



「はっ。随分と口調が違うじゃねえか。敬語はもういいのか?」



「人間慣れないことはするもんじゃないね」



「刃物を飛ばしてくる人間がいてたまるか」



「君が言うのかい?人の攻撃をさんざん防いだくせに」



「俺の特技はミュートで音ゲークリアなんでな」



「きもっ」



「うるせー」



なんだこれ。不思議な気持ちになるな。なんつーか。




親友と話してるみてえな。




ん?なわきゃねえか。



「で、魔王様はなんか辞世の句は在るのかい?」



「そうだね。言うとすれば」



なんだか悲しげな雰囲気をまとった魔王が口を開く。



「友を呼ぶ 叶わぬ願いと知りながら 空に向け 今際の際に 君の名叫ぶ」



「随分といい詩じゃねえか」



五七五七七。



「でしょ。会心の出来さ」



「季語はねえけどな。そんな詩を歌うやつがなんで魔王なんかやってんだ?」



「私の願いは飢餓のない世界さ。そのために平等な世界を作りたいんだよ」



「殊勝なこった。生きづらくないのか?」



「ないね。私の飢餓のために命を失った親友がいるんだ。そのためなら私は命すら捧げるよ」



ほ〜ん。言うね。



「というか、彼を起こしてくれないかい?話ができないんだけど」



「あ?お前話がしたいのか?」



「そうだよ、ずっと言ってるじゃん。ご飯も用意したのに」



人の仲間を殺したやつが対話を求めんなよ。

まあいいや。



「おーい。シュウサ起きろ〜」



「ん⋯。ムササビッ!?」



「随分と変わった寝起きだなお前」



ムササビて。



「奴さんはどうやらお話をお求めらしいぜ」



「話?」



起き上がったシュウサは多少顔色が悪いが、大丈夫そうだな。



「そうですよ。私はあなた達に大事な話があるんですよ」



そう言った魔王は、残った左手をこちらに差し出し⋯……。



「翔馬さん。私と一緒に世界を滅ぼしませんか?」



特大の爆弾を落っことしてきやがった。













< ーシュウサ目線ー >


「翔馬さん?」



なんで、俺の前世の名前を。そうか、【鑑定】か。何個か工程を挟めば前世の名前を見ることはできる。それで見たのだろう。



「残念だが、その提案に乗ることは出来ない」



勇者として、俺として………この存在はもう放っておけない。



「そうですか。ならしょうがない」



ギイナは両の手を叩いて心地の良い音を鳴らした。


あれ、右手。




いつの間にか再生された右手は、俺の真横を駆け抜け。ユーサの頭を握りつぶした。



「さようなら」



この世界には溢れている、死。

見慣れている、死。

それなのに、味方の死はなにか根本的なものが違う。


一瞬だった。

ギイナの拳をゴルトは防ぎ、その勢いを残したままカウンターを仕掛ける。そのカウンターをギイナは片手でいなし、蹴りをゴルトの腹に叩き込む。俺に向けられた凶刃をカキアがその身を持って防ぎ、2つに別れた物言わぬ屍となる。


そこに残ったのは、俺だけになった。



「はっ!はっ?はっ!?」



息、息息息息息息!


落ち着け、落ち着け!

無理だ!



「辞世の句とか、あります?」



にこやかな笑顔。


ああ、逃げられねえ。

逃げられないなら、せめて一撃。

勇者として…!!



「【明日ヘノ――」



最後の、万が一つもない、億が一もない一縷の望みを駆けて振るった刃は……当然の如く虚しい音を奏で遠い床に刺さる。純白だった城内は暗く、あたりが傷だらけで。まさに魔王城だ。



「さようなら。また会いましょう」



勇者が死ぬのは⋯⋯、魔王城だしな。



「ボケっとしてんじゃねえっ!!!」



「え?」



眼前まで迫ったナイフ()を、払ったのは親友の拳。


ゴルトは、生きていた。



「辞世の句だっけかぁ!?んなもん詠んでる暇があったらよぉ!」



凄まじい膂力が込められたその拳が、ギイナの左頬を砕く。



「百回死ね」





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