悪食なる者 Ⅱ
「スイッチ!」
入れ替え、攻撃。防御して、攻撃。
「なんか調子良くなってきたぜぇ!ジャストォ!」
だいぶ長期戦になってきている。
ギイナもそれに気づいているのか堅実にこちらを狙ってきている。どうやら、ユーサがこの戦いの要だということに気づいたらしい。バレそうになったら誰かと位置を変え、即座に隠れる。
それでなんとか出来ていたが、もう無理らしい。
「グッ!?」
ユーサとギイナが鍔迫り合いをしている。
ギイナは、いつの間にか武器を呼び出し、こちらを攻撃してきていた。
ユーサとカキアを中心に、遊ぶ気もなくなったのか苛烈な攻撃を仕掛けてくるギイナ。
正直、かなり辛い。
ユーサの位置替えも、何も無制限じゃない。
「【明日ヘノ光】!」
光を纏う魔剣を、その重みに任せて振り下ろす。
これまでの反応から、光属性が弱点だと思われるギイナには【煌撃】が有効だ。
凄まじい破壊力を内包した一撃で、ユーサへのヘイトは外れた。けどっ!
1,2,3と斬撃が目の前をかすめていく。
パリィは⋯⋯無理そうだな。
風切音が俺の神経を逆撫でしていく。
生きてる心地がしない。
その時、パッと視界が変わり、視界の隅にジャスガのエフェクトが光る。休んでられないな。
ブラフは十分。
切り抜けるギリギリのラインの見極めも終わった。シュウサに25%、ゴルトに55%、ユーサとカキアにはそれぞれ10%ずつ。
あの謎結界の解析も終わったし安心。
さて、始めようか。
【血の雨】。
なんだ?
違和感に気づけたのは、俺が今離れた場所にいて落ち着いて戦況を見極められたから。
ギイナが、何かを準備している。
「もういっちょォ!」
ゴルトが攻撃を弾いて、ギイナが体勢を崩した時。ギイナの右の、中指と親指に力が込められていた。
地面の影が、俺達の居場所をシャッフルしようとしたのと同時。ギイナの口が、フッとほくそ笑み、パチンッと音がなる。
視界が暗転し、また光を取り戻した時。
天井から迫ってくるのは命を刈り取る無数の凶器。
「なっ!?」
ギイナは今まで遠距離攻撃を仕掛けてこなかった。ユーサを狙うべき盤面でも、遠距離攻撃がどんなに有効な場面でも。その葛藤すら見せなかった!
踊らされていた。今この瞬間のためだけに、俺達を仕留めるためにここまで!
「【正界】!」
結界を即座に展開する。
【護ルベキ者】には及ばないが、刃物を防ぐ程度には十分。魔力の消費もないから戦闘開始のときみたいにはならない。
取り敢えず、ユーサとカキアの援護に⋯。
そう二人の方向に駆け出した俺は、本当に運が良かったのだろう。
「は?」
俺の、後ろ髪の一部が切れていた。先程まで、俺の心臓があった場所。
そこをまっすぐ。刃が通り過ぎていた。
「ッ!?!」
体中から嫌な汗が吹き出す。死んでいた。逃げ切れなかった。
結界が通じない。
ただそれだけで俺の心の余裕は崩れ去った。
呆けている暇はない。その一瞬で俺の命はなくなる。恐怖で凍った体を、その上を行く恐怖で燃やし尽くす。
迫りくる刃物を、弾いて、弾いて、弾いて!
「!?」
砲弾!?これは、切れない!駆けながら身を捻る。俺の胴体ギリギリを砲弾が通過し、爆風を撒き散らす。
「うわっ!?」
なんかスローに見えたぞ!
やっべ。なんか楽しい。
またこちらに狙いを定めるのは、さっきよりも多い凶器の群れ。
さっきまでは怖かった。だけど、今は⋯。
「来い!」
[スキル【思考加速】を入手しました]
ナイフ、ショートソード、ロングソード、盾、矢。何だっけこれ、ツイストダガーナイフだっけ?
よっすギイナ。
悪さしてるのはその光ってる右手か?
「【仇討堂々】」
「っ!」
有り得ない機敏さで肉薄した俺は、謎のスキルで腕を切断する。なんだろうねこのスキル。あだうちどうどう、かな?
俺の読みは当たっていたようで、武器の嵐は消えていく。みんなも大丈夫そう。
「うん。OKそうだね」
んえ?今の誰の⋯声⋯⋯。
【仇討堂々】:自身の仲間を殺害した対象と戦闘した場合身体能力を2倍にする




