↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただ咳をする  作者: haremame
廻編 第二章 月下日昇 災禍は来たる
62/65

嵐前夜

私は結局、人類の最高位に立った。


みんな何を思って中学生に票を集めるのだろうか。でも、私に導いてほしいって人たちが大勢いる、それに対して悪い気はしない。なんなら、嬉しかったりもする。


斜月のみんなには、まだ自分を明かし切れていない気がするけれど。


それでも、まだ戦いは続いてるし。失われたものは何一つ返ってきていない。



それでも私なりに、人類復興に向けて仕事をしている最中。



「この手紙が届いた」



私が手に持っているのは、白い手紙に赤い封蝋が押されたものだ。封蝋には山羊の頭骨が施されていて、邪な雰囲気を醸し出していた。



「手紙の差出人は、あのクイナだ」



クイナ、その名前に歴戦の猛者たる斜月でも少なからず緊張が走る。クイナを圧倒できる火力を持つ私ですら、面と向かって相対するのは控えたいのだ。魔力という超常の力を持っていない者たちでは、怖気ずくのも頷ける。



「安心しろ、どうやら相手はパーティーを望んでいるらしくてね。会場までの安全は保障してくれるそうだ。落ち着いて招待されてやろうじゃないか」



今回の要件をパーティーと表したのはピッタリだと思ったのだが、なぜか反応が微妙だ。



「日ノ出ぇ」



「なんだジョンソン」



授業中に疑問を提示する学生のように、ジョンソンは右手を挙げた。



「俺ら手紙の内容知らないんだが」



「おっと」



なるほど。だから反応が微妙だったのか。



「失礼した。それでは、内容の話をしようか」



魔力を光と音に変換し、音声と映像を空中に投影する。魔力の無駄遣いになると思ったが、ご丁寧に手紙に魔力を込めてくれていたようで、魔力の消費はゼロだ。


感嘆の声が上がっているが、確かにこれは少し興奮する。



『———映ってるかな‥‥‥‥あ、ダイジョブそう。え?すぐ喋れって?いやだって‥‥‥』



画面の中で、だらだらと文句を垂らすクイナの姿を見て、斜月の緊張は解けたようだ。



『ああ~、うしっ。人類のみんなこんにちわぁ、クイナだよ~』



にこにこと、人類を追い詰めた元凶は笑う。



『この世界を侵攻し始めてから、かなりの時間が経ちました。そろそろあなた方人類もうんざりしてきたんじゃないかなぁっと思いまして、最終決戦を申し込みます!いぇ~いパチパチパチパチ!』



明るい雰囲気とは裏腹に、言葉の意味は、私たちを殲滅することにしたということ。



『それで、来週の12時ごろに日本の東京都庁まえに集合でどうかな?というかそれで決定ね』



あまりにも横暴な決定。何か考えがあるのかと思ったが、クイナたちには小細工する必要なんてないのだ。ただ全力で戦えばこちらを打ち負かせられるのだから。



『でも、それだと旅の疲労とかで万全に戦えないだろうからさ‥‥‥———』



少しだけ、クイナは言葉を溜めた。






『取り敢えず残ってる9割9分の赫は殺しておいたから、安心しておいでぇ』






衝撃の事実をさも当然のように言い放った。



「嘘‥‥だろ」



事前に内容を知っていた私以外、その発言にほぼすべての意識を持っていかれる。


世界人口約82億3200万人、そのほぼすべてはここ数年で異形の怪物と化した。人類はそれに対抗するべく奮闘し、敢え無く住処を追われた。その圧倒的な物量と力は、人類を絶望の底に叩き落し、今なお心を蝕み続けていた。


今までの7年間、私たちが殺してきた赫は、世界人口の中のほんの数割。その残りを数人。もしくは一人で一夜にして殺した。


細かいところはずれているだろうが、ほぼ事実だ。



『残りすべての赫も東京に集めておくよ。大体数千だから、そっちも心配しないでね』



人類の敵は、残り僅か。



『今回の戦いに、バラン達は参戦しない』



ただ、それでも。



『私と、もう二人の子がいるけど、まだまだ弱っちいから』



より大きな絶望が、もう一体。



『それじゃ、いい最後にしようねぇ~』



私たちの前に立ちふさがっていた。










「とまぁ、先程の通りだ。今回の勝負、ほぼ勝ち目は‥‥‥いいや。言葉を濁すのはやめておこう。絶対に勝てない」



私の口から出た言葉に、その場の全員が驚きながらも、心のどこかで納得していた。


来週、自分たちは無様に散るのだろう。


表情などではなく、立ち姿が物語っていた。



だが‥‥‥!



「だからといって、我々が負けていい理由にはならない」



そうなのだ、私達は勝たねばならない。



「お前たちは、何のために銃を持った」



きっかけは、父と祖母の死だ。



「何のために、歩を進めた」



それがいつしか、仲間のため、部下のためになった。



「民は、この絶望を知らない。知る必要がない」



銃を握り、屍を踏み越えたときから、私たちは逃げられない。



「ならば、我々は戦わねばならない」



絶望とともに戦場を駆けなばならない。



「死ぬにはいい日だ」



駆け抜けた先に‥‥‥。



「存分に抗おう」



どんな結末が待とうとも。







































二人は口にする。



「相手は戦いのプロだ」



二人は紡ぐ。



「半端な覚悟じゃ飲み込まれる」



二人は揃う。



「だから、私が教えよう」



ここで、ずれる。




「人間の殺し方を」

「怪物の殺し方を」





奇しくも二人は、物悲しそうな表情をした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。