やっぱり君が
あまりに短すぎるため次の話も投稿しちゃいます。
こんなに短いのは想定外でした……。
対赫戦線の報告書
氏名 内田 慎太郎 作成日 2033年 8月4日
1週間後、旧オーストラリア領の奪還作戦開始が決定した
作戦コード〔オルペウス〕
一 日ノ出元帥を筆頭とした斜月の全部隊、新兵総勢232名を動員
道中蠻鼓を滅ぼしたXと会敵した場合全戦力をもってこれに対応
如何なる犠牲も問わずその場で確実に排除すべし
バラン、クイナとの接敵時一 日ノ出元帥を除いた他隊員は即時離脱
半径10kmを接近禁止エリアとし、元帥は30分以内に確実に撃退すべし
何があろうとこの作戦を中止することはなく、
邪魔をするものは味方であろうと即時排除すべし
何があろうとオーストラリアを奪還するまで帰還することは許さず、作戦を無視したものは赫として扱い即時排除すべし
現場の指揮は元帥ではなく簑沢 賢汰が執る
指示に従わないものは如何なる処罰を受けても構わないものとし、積極的に排除すべし
狂ってるとしかいいようがない
「こんなのやはり間違っています!考え直してくれませんか隊長!」
「俺も今回ばかりは内田に賛成だ、上層部の奴ら俺等をなんだと思ってんだ?」
「彼奴等撃ち殺したって文句言われないだろ」
内田、ジョンソン、ケニィは口を揃えて取り繕うことなく不満を零す。この三人の器からは零れるどころではなく溢れているのだろうがな。
だから私はそれに答えなければいけない。
元帥室に、大きな銃声が響いた。
「隊長⋯⋯⋯?」
「日ノ出、どうしたよ」
天井に向けたリボルバーの銃口からは硝煙。
その先には小さく空いた穴。
小さく、それでも深く吐いた溜息。
「上官命令だ。これ以上、この作戦に疑問を持つな」
今の私の顔は、どんなものなのだろうな。
「だけど隊長これは流石に―――」
また、音が鳴り響き、天井に穴が開く。
「もう一度、言うぞ⋯⋯⋯!!」
合わせたくもないのに、私は内田の眉間に銃口を向ける。
「これ以上、疑問を持つな」
私だってわかってる。
この作戦はあまりにおかしい、何故現場に赴くのが新兵なのだ?一般兵は4万ほどいる。だが作戦に使われるのは足を引っ張るだけの新兵200名。
コイツラが使えるとしたら赫の体液を被らないように盾にするくらいだ。
更に指揮を執るのも現場に一度も来たことのないボンボン。そいつの指揮に従わなければ罰される。
おかしいことなんて、誰にでもわかる!
だが、だが!
「私に、お前らを撃たせないでくれ⋯⋯⋯」
三人の顔は見れない。
きっと今の私はひどい顔をしているだろうから。
机に力なくうずくまることしか出来ない。
「隊長、一つだけいいですか」
「⋯⋯⋯⋯⋯なんだ」
扉を開ける音を挟んだ後、内田は言葉を発した。
「みんなやっぱり、君が心配なんだよ」
バタンと、扉が閉まった。
それ以降、作戦当日まで元帥室に誰かが入ってくることはなかった。
飲み込んだ唾と涙の味は苦く、喉に張り付き全身を不快感で覆った。
あぁ⋯⋯⋯、なんてひどい味なんだろ。
あとちょっと。




