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ただ咳をする  作者: haremame
廻編 第二章 月下日昇 災禍は来たる
50/62

人よ、集え英雄のもと

50話突破!読者の皆さんに感謝!!

分類未明の赫Xの調査書


氏名 内田 慎太郎     作成日 2033年 8月2日


旧アジア圏人が多く住んでいた人類国家ノア保護区域、蠻鼓。栄華を極めしかの街をたった一夜で鏖殺してのけたXは不明点が多くある


1.何故赫を生み出さないのか

蠻鼓には約19万人が住み、生活していた。それらが全て赫に殺されていたするならば、20万近くの赫が生み出されたはずだ。だがXがそれを為したと思われる形跡は見つかっていない


2.そもそもXは赫なのか

一部では、特別警戒対象のバランやクイナの仕業ではないかと言われているが、特別警戒対象との戦闘を見た私からすればそれは違うと断言できる。バランがいたにしては破壊規模が小さすぎ、クイナがいたにしては破壊規模が大きすぎる。それに、赫の体液もいたるところに付着していたためやはりXは赫ということになる。


3.芯のある足跡

赫の足跡は地面に液体をこぼしたときのような周囲へ広がる形となるが、Xのものと見られる足跡は広がりが少なく、古代に生息していた恐竜のような、爬虫類に類似した形の足跡を残している。これはXが今までの赫とは違い、骨格、更には肉を有している可能性が高い。もし、Xがどちらも有していた場合海という自然の障壁は意味をなさないことだろう。












「ふ⋯⋯⋯⋯ふッ⋯⋯⋯⋯ふぅ⋯⋯」



ガコンッと、総重量200kgを超えるプレートを付けたバーベルがフックにのせられる。


最近、トレーニングをしても成長が実感できない。



「んっ⋯⋯んっ⋯⋯⋯プハッ!」



体に水分が染み渡っていくのを感じる。


魔力を手に入れてから、水を飲むのはこのトレーニングの後だけとなったが、水を飲むという行為はなんだか心地が良い。異物が喉を通り胃を満たし、全身に広がっていく。


だが、飲み過ぎは良くない。

私一人といえども、水は大切にしなければ。


南極の氷は不純物を含んでいることもあれば未知の細菌がいるかもしれない。


実際、4年前に起きた謎の死は最悪だった。

あれだけで半数が死んだ⋯⋯いや、忘れよう。



「あれ?隊長、今日もトレーニングですか?」



「ん?Oh!日ノ出じゃん!」



「Really?Wow!まだ起きてたのかよ!」



うるさいのが来た。

コイツラの相手は面倒なんだ。


水を飲んでいるときくらい一人にさせてほしいものなのだがな。



「ほう?私がこの時間に起きていることになにか文句でもあるのか?」



「いやもう12時になるんですよ」



「慎太郎の言う通りだぜ!子供は寝る時間だ!」



「子守唄でも歌ってやろうか。ね゙ん゙ね゙ェん゙ ごろ゙ォりィよ゙お゙―――」



「お前なんでそんなに下手くそなんだよ!?子供泣くぞ!?」



「はぁ゙!?俺の歌のどこが下手くそっだってんだよ!?なあ慎太郎!」



「ケニィさん、ステイ」



「なにぃ!?」



騒がしい、喧しい、あぁ⋯⋯⋯⋯楽しい。

思わず頬の肉が緩みそうになったとき。





全ての余裕を掻き消すサイレンが鳴り響いた。






『Cブロックより緊急通達!Cブロックより緊急通達!』



Cブロック⋯⋯昨日の掃討付近だ。



『現在、震度4以上の規則的な揺れを感知!南南西に大きな爆発のようなものが連続的に――!!』



不味い!見える範囲まで地吹雪が見えているなら、ここからでもギリギリ間に合わない!



「こちら斜月!!Cブロック!今すぐにその場から離れろ!全隊退避だ!」



『りょ、了解しました!!全員今すぐ退――うわあぁぁッ!?』



やられた!今まで夜に襲撃かけてくるなんてやってこなかっただろバラン!何を焦っているんだ!?いいや、焦っているのはこちらか!






「全員起床しているな!!今から私はCブロックに赴きバランとの戦闘を開始する!お前たちはその戦闘に巻き込まれないように注意しながら守護隊を救出しろ!!」



了解、一つの音となった部下の声を置き去りにしながらつい最近完成した飛行の魔術を用いて空を翔ける。


薄緑色のエメラルドのカーテンが満天の星空を覆っている。吐く息が白く染まり、冷たい空気が肌を強張らせる。


眼球が凍りそうになるが、無理して目を開く。


速度が足りない気がするが、これ以上は魔力の消費が洒落にならない!もどかしい、そんな気持ちが胸をオーロラのように覆う瞬間。爆発が視界の隅を埋めていった。



魔力を凝縮し銃を再構築する。スコープを作っている暇はないな!というか私の銃は型式が古すぎて付ける場所がない!


煙が晴れて、剥き出しとなる存在を隠そうとしない威風堂々たる態度の男の頭に照準を合わせ躊躇うことなく引き金を引く。


この程度で殺せるわけがない。事実、銃弾は今の奴の手の中にある。弾くなよな、人として!


地面に落ちるまで3秒!


3、2、1、今!!


地面に転がり、銃の先端に刃も再構築。


発砲しながら振り抜いた鋼鉄の先端は、人差し指と親指に挟まれ首に届く寸前で止まる。



「あせんじゃねーよ日ノ出。どうかしたのかよ?落下と同時に攻撃なんてよ。いや違ぇな。煙や攻撃、いろんなことで俺の注意を惹こうとしてんな?」



「ッチィ!!」



バレるのが早すぎる!こちらの狙いを瞬時に理解してきた!これが厄介なんだよバラン、お前の厄介さは戦闘能力、土の軍勢に加わる状況判断能力!


引き際もしっかりと理解しているから大した損害を与えられず逃げられる!お前が来れば私も行くしかなくなる、その隙にクイナが国に来る!


嫌な循環だよなぁ!



「いいぜ、ノッてやるよ。かかってこいや」



「それはありがたいな」



本当にありがたい。


私がやるべきことは斜月のメンバーがCブロックの面々を救助するまでの時間を稼ぐこと。


私は⋯⋯⋯―――



「焼夷」



「ッ!?ハハッ!!」



私の敵を打ち倒すまで!



焼夷は弾速こそ遅いが、掠りでもしたら消せない炎を生み出す術式だ。



「危ねぇなぁ、おい」



あっさりと、至極当然のように躱される。

だが、初めてのことだろバラン。



「お前それ、魔法か?」



「ああ、私の魔法だ」



お前との戦闘で魔法を使うのはな。




日ノ出の今の魔力を扱うレベルは作中トップ。


本来、魔法を使うにはスキルを習得しなくちゃいけないのだが日ノ出はスキルを使わずとも魔法を扱っている。それは、薙峰有菜の助けを借りず、作品の中でも逸脱した存在であることを示している。


作品内に魔力を浸透させたのは有菜であり、彼女の想定する範囲を逸脱することはできないはずだが、バグ二人のせいで日ノ出は逸脱した。


魔力を使った物質の再構築などもできる。




今現在、日ノ出の魔力量は減少している。元が100とするならば、今の彼女は50程度である。魔力量が多いほど自然回復速度が遅くなり、魔力量が少ないほど回復速度が速くなる。


日ノ出の場合、魔力が完全回復するために4か月ほど必要。


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