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ただ咳をする  作者: haremame
廻編 第二章 月下日昇 災禍は来たる
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明日を拝めや兵よ

対赫戦線の報告書


氏名 内田 慎太郎     作成日 2033年 8月1日


2029年10月31日

旧樺太防衛戦開始


2029年11月4日

人類軍の敗北で終了、赫のユーラシア大陸侵略が開始


2029年11月10日

旧ロシア領旧モンゴル領陥落


2029年12月2日

旧モンゴル領奪還作戦開始、奪還に成功


2029年12月24日

特別警戒対象バランにより旧モンゴル領旧中華人民共和国領陥落

これにより人類国家ノアは領土の約30%を失った


2029年12月25日

城壁に空いた穴から大量の赫が旧カザフスタン領に侵入

当時伍長だった一 日ノ出元帥がこれに対応

旧カザフスタン領防衛に成功


2030年1月17日

特別警戒対象バランが出現

当時准尉だった一 日ノ出元帥がこれに対応

特別警戒対象バランの撃退に成功


2032年2月2日

特別警戒対象バラン、特別警戒対象クイナが同時に出現

人類国家ノア全戦力をもってこれに応戦するが、土鎧の巨人と赫の軍勢の物量に押し切られ、人類は南極大陸まで生活圏を削られた


2033年6月2日

南極大陸の11%を構成する主に旧アジア圏の人類及び動物が生活する"蠻鼓"が謎の赫(以下Xと呼称)により壊滅、Xはその後姿を消し今尚行方は不明













よく晴れた夏の日。



「各班、状況を伝えろ」


『こちらB班、軍勢は確認できません』

『こちらC班、こちらも未だ確認できません』

『こちらD班、こっちもまだ何も確認できません』



手に持ったトランシーバー。そこから流れる音声は平穏を唱え、緊張が未だ続くことを伝えた。



地面は白銀。雲一つない空は太陽の光を、地面に余すことなく叩きつけ、大地はそれを反射し眩く光る。


そして――



「全部隊戦闘準備。お客さんだ」



人の敵が、照らされる。





































「全部隊、降りるぞ」


   

今から約二ヶ月前、謎の赫Xにより破壊された”蠻鼓(ばんこ)”。


魔力を持つ人間、一 日ノ出の出現により人類の生活は変化した。人類国家軍ノアルを中心に配布された魔力石が、所持者の存在を登録し南極の厳しい環境から守り、気候をも操作する。


文化の再建も容易となり、蠻鼓は中華系の街を形成していた。昼夜問わず明るく輝くその街は、栄華を極めていた。



「ここはいつ見ても寂しいものですね」



「そうだな、もはや廃墟ともいえない」



剥がれ落ちた赤い塗装と砕け散った白い壁。ここにも人はいたのだと点滅する青い魔力石が、曇天と化した空と大地を淡く染め上げる。



街の瓦礫に身を潜め、地を震わす赫を待つ。赫との戦闘において大事なことは、恐怖しないこと。恐怖は心と体を揺らがせ、赫はそれを探知する。


無駄な動きはいらない。

無駄な言葉はいらない。

無駄な感情はいらない。


命令は端的に、判断は迅速に。



「開始」



鳴るは銃声、鳴らすは悲鳴。


あらゆる場所から打ち出された銃弾は敵を貫き、燃やし、死へと至らせる。



瓦礫を破壊し突き進む赫の頭を、足を、破壊し燃焼させる。隊員の頬をかすめていく赤い飛沫と粉塵。大地を駆け抜け、包囲されまいと流動的な動きで仕留めていく者たちの名は”斜月”。


悲劇が作り出した怪物が生み出した部隊は、微笑を携えながら戦場へ赴く。



「動き合わせてけジョンソン!また日ノ出にドヤされるぞ!」



「うるせぇケニィ!お前が俺に合わせろや!」



「何だとコラァ!?」



「やんのかコラァ!?」



揉める二人に一際大きな赫が飛びかかり、

ドロドロに溶けた牙と鉤爪が二人を脅かさんと迫る。



「「邪魔だ犬っころぉ!!」」



ジョンソンとケニィは横に転がり、同タイミングで赫の頭部に弾丸を撃ち込む。二発の弾丸は、あっけないほど簡単に頭部を貫き燃焼させる。



「っへ、俺のスコアだな」



「俺のだわ、お前は家でママのミルクでもしゃぶってなケニィ!」



「お前はママの腹の中からやり直したほうがいいぜジョンソン!」



くだらないことを言い合いながら二人は赫に肉薄する。障害物がほぼない場所で戦う二人は、その自慢の肉体を使い赫の津波に抗う。



「ジョンソン!」



「Alright , come on!(よっしゃ、来い!)」



ジョンソンの鍛え上げられた背筋を踏みしめ、ケニィは高く跳ぶ。上空から二人を狙うホークを撃ち落とすために。



「Too bad!!(残念だったな!!)」



ケニィはスコープ越しに、突っ込んでくるホークを視認する。



「1,2,3,4,5,6!No problem!(1.2.3.4.5.6!問題なし!)」



けたたましく鳴り響く六発の銃声。

それらは的確にホークを穿ち、墜落させていく。



「ヒィヤホォーッ!!どうだジョンソン!見たか俺のエイム!」



「流石ヘッショマン!FPSでイキって日ノ出にボロ負けしただけあるなぁ!!」



「てめえの頭打ち抜くぞコラァ!!」



「弾無駄にすんなよ玉無し野郎!」



「あるわボケ!」



「お前らうるさい!ケツに鉛玉ぶち込むぞ!!」



「「Sorry!!(ごめーん!!)」」



いつまでも言い争う二人に対し、日ノ出は一喝する。


そして反省していない気のない返事が日ノ出の溜息となる。



「彼奴等の連携は目を瞠るものがあるが、如何せんうるさすぎる⋯⋯」



「でも隊長いつもすごく楽しそうですよね」



「他の者達も問題なさそうだな」



「話逸らさないで⋯⋯って、わかりました、わかりましたって。何も言いませんよ」



慎太郎を威圧を込めた睨みで制する。だが慎太郎は、それに怖気づいたわけではなくいつものようにあしらうのだった。



その後、戦闘は無事終了。

負傷者0の完全勝利で幕を下ろしたのだった。





イキリFPS事件。

あまりに下手くそすぎたケニィを慰めるために、斜月の面々総勢30名で始まった八百長試合。ケニィは勝たされたとも知らず調子に乗り、日ノ出に1v1を申し込むが、仕事しながら片手で操作する日ノ出にヘッショで8連敗した事件。


プライドが砕け散ったケニィに、哀れみの意を込めて「ヘッショマン」というあだ名が付けられた。




魔力石:

魔力石の所持者に対し、体温を一定に保つ効果、身体能力が微増する効果、感覚能力が微増する効果、人類国家ノアの庇護下に入る許可を与える。スマホのようなもので、通話や検索、ゲームもできる。



燃焼する弾丸:

日ノ出が魔力に対し研究している際に発見した、条件下で効果を発揮する性質を持つ弾丸。この弾丸は赫の体組織に触れるという条件を満たすと発火する性質を持つ。

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