それはやがて主とならん
「ねえ〜ぇ〜っ!今日は遊びに行かないのぉ〜っ?」
玄関から外に出ようとする父を、私はよく引き止めていた。
「今日はパパ忙しいから行けないの」
「じゃあご飯何食べればいいの?」
取り敢えず父と一緒に居たかった、どんな理由をつけてでも。
「昨日いっぱいカニカマ買ったでしょ。冷蔵庫に入ってるから、それ食べて待ってて。パパできるだけ早く帰ってくるからね。いい子で待てる?」
私はカニカマが好物だ。
「⋯うん」
「よし、いいこいいこ。じゃあ行ってきます」
母が死んで、父と過ごす時間は少なくなったけど、それでも父は私を大事にしてくれた。
「行ってらっしゃい!」
あの日は⋯⋯確か、そうだ。
「⋯⋯⋯パパもう行ったかな?」
ベランダに出て、父が車で会社に向かったのを確認したあと。
「ふっふーん。私だってもう大人だもんねぇー!」
お気に入りの洋服を着て、ぶかぶかな黒い帽子を被って。
「い、行ってきましゅ⋯⋯」
サングラスをして、サンダルを履いて玄関を開けたんだ。
そして、少し歩いた。特に何も目標は持っていなかったけどどこか遠いところに行こうとしてたんだ。いわゆる散歩、かな。でも、時期は猛暑真っ只中。地球温暖化が進行してたし暑いのなんの。
「あ、暑い」
幼女にはきついよね。だから、近くにある公園で屋根のある場所に入ったんだ。そこで私は出会った。
「おろ?」
「ん?」
灰色のパーカーを肘まで捲ってアイスを食べている、赤い瞳の、長い茶髪の女性に。
「ん⋯⋯」
「珍しいですね、隊長が居眠りなんて。隊員のみんながこの写真欲しがりそうです」
昔の夢を見ている間にこの愚か者は私の寝顔を撮ったらしい。どうやら教育が足りないようだな。それにしても、懐かしい思い出だな。気が緩んだからだろうか。⋯⋯気が緩んだ?この私が?
「全く、なんということだ。”これ”を前に、私は気が緩むようになってしまったのか」
南極の白銀の世界を塗り替えるように広がる”赫”。
10年前、この世界に放たれた厄災は今尚私達を蝕んでいる。
「うおっ、眩し」
燦々と照りつける太陽と、土と木の香り。
いやぁ、山っていいねぇ。
そう、私ことクイナは今現在山の頂上にいます。
どこの山か当ててみな!私も答え知らないから!
「グルルルルル⋯⋯⋯」
「わーおいっつそーびっぐべあー」
おっきいくまさんだぁ。
え?もっとしっかり驚けって?たかだか2mの熊にどう驚けって言うんだい。試作には8m位の熊がいたんだよ、四分の一にはビビらんよ。
いやでも普通に考えたら2mの熊ってえげつないな。やっぱり驚いておこう。
どうしよう、殺しておいたほうがいいかな。訴えられたりしないかな?まあ知る人がいないから訴えるも何もありゃしないんだけどさ。
というわけでサクッと首を落としてハイ終わり。武器の性能も良い感じだしねぇ。
〘火群の黒剣〙
邪神が人に与えし魔剣
黒い刃は魔力に反応し劫火を宿す
能力:
【与えられたもの】
・所持者の種族が人間の場合身体能力を大幅に上昇させる
【赤熱刃】
・魔力を消費し刃に触れたものを発火させる超高温の熱を帯びる
※この武器は種族人間のみが所持、使用可能
この【赤熱刃】がね、結構強いのよ。
注ぐ魔力量を調節すれば、温度も調節できるし遥かに魔法よりも燃費がいい。これがあればアップルパイもっと美味しいのができるぞーって思ってたら、気分の昂揚で魔力を注ぎすぎて灰にしたこともあったけど。
魔剣でね。
料理するのは。
ご法度です。
だいたい全部。
燃え尽きるので。
⋯⋯百一人一首になったかも。まあ季語がないから無理だけど。
というか多分、この世界で剣を使うことはないだろうし。
「ギイナぁ?」
「呼んだ?」
「呼んだ」
「じゃあ帰るわ」
「何故っ!?」
ギイナとの縁は未だ続いている。彼女はどうやら私から逃げたいようだけれど、私は彼女を逃がすつもりはないから、可哀想に。
「というか立場的には逆らっちゃ駄目でしょ!私が”神”で、ギイナは”王”なんだから!」
「王様が神に剣を向けるなんてあるあるだろぉ!しかもお前は邪神なんだから普通敵対してるんだよ!」
「いやいやそういうときは普通邪神と契約して、傀儡国家になるのがオチでしょうよ!」
「言っとくけど、私の国だからな!お前国民からは時たま王城にいる女の人くらいの認識だからな!」
「はぁ〜〜っ!?聞き捨てならないんですけどぉ!」
「残念ながら事実で〜す」
試作の話はやめてくれ。正論っていうか事実だから私が反論できない。
「はあ、いい気分転換になった。後でイティサとバランにも教えとこ」
「泣くぞ?」
「そんなことは置いといて、何用?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯洞窟を探しておいて」
「ごめんって⋯⋯」
せんせーい!この人私を泣かしたぁ!
第二章が始まりました!
心機一転、頑張っていきましょう!
あ、あと現世と書いてアクトと読みます。




