幕間 まっかっか
縦穴が、塞がる。
この空間の核である悔菜がいなくなったことで悔菜が連れて行ってくれた景色がまた、真っ黒な空間に戻っていく。
意味はない。でも、その空間を歩いていく。
歩き進めていくと、木で作られた学校の椅子がポツンと一つだけスポットライトに照らされ、残っていた。それを、無視して歩みを進める。
でも何度無視したって、その椅子は現れる。
⋯⋯⋯座るしかないのか。
諦めて、その椅子に座る。
もう⋯⋯限界だ。
ごめん、悔菜。どれだけ私に会いに来てくれたって、私に話しかけてくれたって。
もう覆しようがないんだ。
ごめんね、悔菜。
こんな、こんな不甲斐ない”お姉ちゃん”で、ごめん⋯⋯⋯ね⋯⋯⋯⋯。
ガクリと、有菜は意識を落とす。その意識は暗く深いどこかへと沈んでゆく。そしてもう浮かび上がってくることはないのだろう。
だというのに。
有菜の体は大きく跳ねる。
俯いていた頭は背もたれに寄りかかるような体制になったことで天を仰ぐ。そして、その目が大きく見開かれる。
彼女達のアイデンティティたる林檎飴のような赤い瞳が天井から降り注ぐ光でより鮮烈に色づく。
だが、その瞳の色が青に侵食されていく。
もとの人格を捻じ曲げるように、塗りつぶすようにその青は瞳を塗り替えていく。そして、青が全てをテリトリーにしようとした時、もとの赤が命を吹き返す。相反する2色は混ざり合い、やがて紫色へと完全に染まった。
「⋯⋯全く、強情なものだ」
その口が開かれ、言葉が綴られる。
「肉体の主導権をかたくなに譲らず、妹の肉体を逃がすとはな」
それは称賛。
「嗤えるな。何をしても無駄だというのに」
否、それは侮辱。
「ああ、”アベル”。もうすぐだ。もうすぐ会える⋯⋯!」
有菜は、その死体は立ち上がる。
歓喜と愉悦を表情に浮かばせながら、姉妹の愛を踏み躙り引き裂きながら。そうあれと描かれた男は、ただただ嗤う。
人物紹介:薙峰有菜
『ーーーーー』である彼女は、かつて自身と妹の命を『ーーー』に狙われた。その際、自身を犠牲にし妹を別世界へと逃がす。そして『ーーー』が妹を脅かさないように、そして妹が傷つかないように
ギフトで妹から自身に関する記憶を全消去する。『ーーー』をなんとか自身の中に封印し、その力を制御下に置くも時間はあまり残されていなかった。そしてその少ない時間をつかい世界”試作”を作り上げ、妹を避難させていた。
その行動の全ては、妹を思うがゆえに。
『私有菜もけっこうお気に入りだなぁ』
『外道』
『ひっでぇ!?』




