不死身な私の殺し方 Ⅵ
逃さなくちゃ、この子を。
繋げなくちゃ、絶対にこの子を、悔菜を!
「時間がないからね。終わらせにいくよ、有菜!」
そうだね悔菜。本気で行かなくちゃ駄目だよね。
〘嬉鬼血華〙、〘緋碧ノ眼光〙同時装備。スキル【血ガ足リヌ】発動。赫喰、蒼喰のストックはないから最低限の強化しか得られないけどそれでも1.5倍位の身体能力の上昇の恩恵は得られる。全く、悔菜の上昇量はどれくらいなのかな?
身体能力だけじゃ叶わないだろうね。
なら⋯⋯!!
「小細工で、埋めようか!」
私の残りLVは65。
分身はおと64体ほど生み出せる。
この際髪型も変えよう。ポニーテールから⋯⋯そうだな、ボブにでもしようか。
【殺尽讐たり】で髪の毛をカット。
良かった、髪の毛からでも再生できるみたい。
分身体64体、完成。そのうちの63体は赫喰に変換、悔菜のような吸収ではなく体内に”循環”させる。
筋肉を無理やり動かす、再生のことは考えるな。何だっていい、悔菜に道を示すんだ!
「”黎喰”」
残った1体の分身が、赫蒼翠白の順で変化しながら人の形を歪めていく。肉体が肥大化し、爆ぜる。真っ赤な鮮血が辺り一帯を埋め尽くす。
弾け飛んだ血が、肉が、急速に腐ったように暗く、黒く、黎に染まっていく。
それを人と呼ぶにはあまりにも悍ましく、獣と呼ぶには人に近すぎる。
化物、その言葉がお似合いすぎるよねぇ。異常に発達した前足、喉元まで裂けた口から見える口内は淡く翠に輝いている。溶けた体表からは常にシューと空気が噴き出る音がする。
あれ、種族が灰炭からもとに戻ってる?うわ、黎喰生み出すと強制解除されるのかな、しくったな。
まあいいや⋯⋯足掻くよ、何時までだって。私は!
「フィナーレといこう!」
「【オッソ】」
悔菜の周囲に骨のみで構成された拳が生成され、それが凄まじい速度で飛来してくる。それを、食らうわけにもいかないね。
「黎喰!迎撃しろ!!」
命令を受け取った、黎喰は巨大な図体に見合わない速度で文字通りの”拳骨”をはたき落としていく。
あの骨に関しては気にしなくてもいいだろう。まずはあの剣だ。
「【鑑定】」
〘盲目ナル白痴ノ王〙
殲滅せよ 生きとし生けるものを
芽吹け命よ 死の上で 其が断ち切るは日々の夢
能力:
・30秒間防御無視:肉質無視:硬度無視:抵抗無視:概念無視:設定無視
(30秒が終了次第、〘シュヴェルト・ワルツ〙に戻る)
※リキャストタイム:200years
うっわえげつな!?
いろいろなことを無視してるけどあれってつまり当たれば即死ってやつでしょ?オワタ式かよ、ふざけんな!どっかの誰かさんの介入が見え見えだよ!このままじゃ勝てないからってチート武器
渡してるんじゃないよ!
足掻いても終わりじゃん!負けだよ負け!
だけど!
「まだ足りないよ!」
肉薄してきた悔菜の上段斬りをただの〘シュヴェルト・ワルツ〙で下に受け流す。それだけで〘シュヴェルト・ワルツ〙の刀身はピーラーで剥かれた人参みたいな状態になり、地面は豆腐の如くスパッと切り裂かれる。
一応この空間破壊不可なんだけどね!概念無視ついてるから意味ないんだね!でもね⋯⋯⋯!
「地面に突き刺してちゃ意味ないよね!」
悔菜の目が見開かれる。
どんな防御を無視できても、まず攻撃できないなら意味ないよね!といっても攻撃するための武器がないから空気を素材に【錬成】。真っ白い長剣ができた。狙うべき箇所は手足の腱、そして目!
悔菜の目を狙った斬撃は、あと数㎝のところで防がれる。というか振った私の右腕が肩辺りから斬られた!お陰様で左目は奪えたけど!
無理やり地中で剣を捻ったのか?まさかあの剣の性能は刃の部分だけじゃなくて峰だったりにも反映されてたりするの!?
取り敢えず今は距離を取らなくちゃ!血の代わりに、体内から大量の赫喰が飛び出してくる。その反動で、地面を転がりながら距離を取れた!
転がってる挙動は吹き飛ばされたみたいな感じで無様なもんだったけどね!
悔菜の方向を見れば、ちょうど全ての赫喰を処理し終えたところだった。早すぎるだろぉ!
その時、悔菜の手が銃の形を表す。何が起きるかは知ってるよ!
「黎喰!」
悔菜の人差し指から放たれた2発の骨弾は、黎喰を貫通した影響で大きく減速したものの、1発左腰に被弾し、もう1つは軌道をそれて見当違いの方向に飛んでいった。
「抉れ!」
主人が命令を出せば黎喰はどんなことでもする。たとえそれが主人を傷つけるものでも。
黎喰の大きな手が私の左横腹を握りつぶす。
それと同時に骨弾が膨らみ、黎喰の片手を吹き飛ばす。
迫りくる悔菜に抗うように黎喰が残ったもう片方の手を悔菜の方向に伸ばす。
ただでさえ大きな黎喰の手が、更に肥大しまるでビルのようなサイズへと変化する。その攻撃を避けきれなかった悔菜は、地面に叩きつけられる。
勝った⋯⋯⋯そう⋯安堵したのは一瞬。
その一瞬で黎喰の肥大化した手が、腕が更に泡立つように膨張しやがて胴体すらも風船のように膨らみそして破裂する。
悔菜は、体内を刻みながら走ってきたのだ。
その勢いのまま、空中に飛び上がった悔菜。その背後、天井に明かりがあるわけじゃない。でも、彼女が落とした影は、真っ黒なこの空間、そして黎喰よりも深く澄んだ色をしていた。
でも!!
「"29秒"だ!」
大剣と化していた剣が、元の形へと戻る。
ゲームチェンジャーの剣は失われた。身体能力の差はあれど、私でも十分に抵抗できる!
絶対的有利の消滅、敗北の可能性が生まれたそんなとき。
絶望が生まれた。それでも尚、悔菜は笑っていた。
その表情に、そして項に感じる、小さな違和感。
「言ったでしょ有菜」
目が、離せない。
「終わらせにいくって」
避けなければならない。
「勝負は――」
ただの剣であろうと、私の命を容易に断てる。
「もう――」
目前に迫る死を、避けられない!
「終わってる」
高所からの斬撃、重力を伴ったその攻撃に私は抗う術を持っていない。恨みも何の悪意も込められていない片刃の剣が、私の体を両断した。
負けちゃった。
< ー悔菜目線ー >
塵になっていく。有菜のその姿を見て、ようやく肩に入っていたちからが抜ける。
それと反対に、私の体に色が戻る。
「勝った⋯⋯⋯⋯」
その事実を認識した私は、肩のみならず全身から力が抜け仰向けになって地面に寝転がっていた。
コツコツと足音が聞こえる。
「良かったぁ。殺しちゃったかと思った」
「ふふっ⋯⋯⋯」
その足音が近づいてくると、真っ黒な空間が白と黄色の花が咲いた草原に塗り替えられていく。蒼く澄んだ空が、優しい風が、全ての緊張を和らげる。
「大丈夫。私はこんなんじゃ死なないよ」
「⋯⋯そうだね。良かった」
LVを削り切られること、それが、私の死に方。
不死身な私の殺し方。
神となった私はそうやって死ぬ。
もしこれ以外で死ぬのなら、私は、泣いて喜ぶだろう。
Q.何をしたのこの不死身分身パーカー転生JK(神)。
A.骨弾をわざと外して、自分が目立つように登場して、意識からなくなったところで項にぶっ刺す。そして骨を浸透させて、有菜の骨を固めて動きを止める。




