不死身な私の殺し方 Ⅴ
まあ、あの子は私がなにもしなくても生きていけるガッツを感じるけどね。それでも時々駄目な子だから⋯⋯⋯。
「うわぁ⋯⋯⋯⋯」
あれ、すごいなぁ。
何ていうか頭が良い、意識を別のところに向けたあと意識外から攻撃。反撃の効果があるように見せかけて攻撃、そして傷口を溶かして再生の阻害。
まあいいや。
え〜と取り敢えず手を銃の形にして⋯⋯、有菜の頭を狙ってぇ⋯⋯⋯!
「バンッ!」
人差し指の先から発射された骨の針は、こめかみから頭蓋に到達し、元の頭蓋骨を【オッソ】に置き換えていく。【オッソ】の骨、つまり私が操作できる。
五本の指を握りしめる。そうすると頭蓋骨は、内側の脳みそを押しつぶすように形を変え、その中身を悉く破壊した。
私の再生はほぼほぼオートだけれど、所々の調整は必要だ。その最たる箇所が頭部。基本的にここの再生は軽傷じゃない限り、意識して作り直す。
なぜかというと記憶の一部が時々飛ぶんだ。思い出すのも面倒くさい。
だからこそ、頭の再生は他の部位よりも丁寧に行わなければならない。更に今回は私から骨の制御権を奪わなきゃいけない。
かかる時間は1分あるかないか、その間に蒼喰を片付ける!
蒼喰の1体に肉薄する。猟豹の突進を避けたあの霧のような現象は、奴自身の体の水分を他の部位に移動させることで、蒼い成分のみをその場に留まらせることで成立させている。魔法という非現実的なものに理屈をつけるのは面倒くさいけど、まぁ幻を見せられてるっこと。
つまり、同時に2箇所攻撃すれば防げないんじゃないか?なんかキャパオーバーみたいな感じで。
「私は武器がないと戦えない無能だと思った?」
肘の骨を発達させ、穴を作る。そこから再生の応用で大量の血液を噴射させる!
「砕け散れぇ!」
爆発的な推進力を宿した拳は、私の皮膚を蒼喰の体表が溶かすよりも尚早く消滅させ、偏った水分もろとも”蒸発”させる。
蒼く染まっていた体をあまりの熱量で紅く染め上げながら。
そして、わかったことがある。
私は死ぬ。
今現在、私のLVは16。
一番最初は689だったLVは、私が再生するたびに減少していった。
そのたびに体から何かが抜けていくような感覚がしていた、そしてゾワリとした冷えた感触がするのだ。
なんていうのかな⋯味わったことはないし、気にしたこともないんだけどこのままじゃ死ぬっていうのを感じるんだよ。
この勝負はどちらかが死ぬまで終わらない。私は殺されはしないと思うけど、私は有菜に負けを認めさせる必要がある。
なんか有菜は死んでも死なない気がするし⋯⋯。
まあだから、その⋯⋯⋯⋯。
「お前らごときに苦戦しているようじゃ駄目なんだよ」
3体目の蒼喰を蒸発させ、手刀で自分の右手首から先を切り落とす。
「【血ハ黒ク】」
這い出てくる血液が大きな手を型取り、残った2匹の蒼喰を掴む。
必死にその手から逃れようともがく。でも、逃がすわけ無いよねぇ?
手は球体へと形を変え、蒼喰を包み込む。生き物を潰したような音が私の手を通し、私の中に流れ込む。真っ赤な手がちょっと紫色になっているのは気のせいだろう。
「あれ、やられちゃってる」
丁度蒼喰を処理し終えたとき、有菜は目を覚ました。⋯⋯なんかちょっと引いてない?悲しいぞ?お?
さて、取り敢えず有菜の残りLVは⋯⋯117か、これ削りきれるかなぁ?
因みに私は1、死んじゃう。
「有菜!」
「なんだい?」
「私に負ける覚悟はできた?」
〘嬉鬼血華〙と〘緋碧ノ眼光〙の同時装備時のみに発動可能なスキル!
「【血ガ足リヌ】」
スキル名を発した途端、私の体に変化が現れる。私の肌が、手の部分から侵食されるように真っ黒に変色していく。それはやがて私の顔すらも覆い、髪の色は灰色へと染まっていく。
私の口からは黒い吐息が出てるし。うん、黒いね。普通白いけど黒いね。
スキルを発動して少し経ったあと、私の体からはすべての色が抜け落ちた。⋯⋯⋯⋯なんで?
< ー有菜目線ー >
⋯⋯⋯脱色された。
一番最初に思ったのはそんなことだった。次に思ったのはやっぱり可愛い、次点でどうして?だ。
剣と盾を装備し、スキル名を叫んだ直後そのどちらも悔菜の体に吸収されていった。そして、まあ起きたことはさっき言ったけどさ。
林檎のように赤い瞳が空のように澄んだ青になっていて、その色だけは脱色されてない。なんでだろう?
でもまあ、この威圧感はなぁ⋯⋯⋯⋯。
全力の私でも負けるよなぁ⋯⋯。
というか現在進行系で悔菜の威圧感が増していってる。その原因は、背中からものすごい勢いで取り込まれていく赤と青の濁流のせいかな?
とうの本人は気付いてるのかな?
「あばばばばばば⋯⋯」
あ、気付いてそう。さっき持ってたのは〘嬉鬼血華〙と〘緋碧ノ眼光〙だろうし、あれが特殊種族”灰炭”なのかな。
1分間限定身体能力が最低で5割増、赫喰から蒼喰、ついには黎喰を召喚できるんだっけ?
「よっしゃ有菜。ここからの時間、瞬き厳禁だよ」
「わかって―――」
止められたのは本当に偶然。というか、もし悔菜が武器の奪取を目的としていないで攻撃を仕掛けていたとしたら私は三枚おろしくらいになっていただろう。⋯それ以上かもしれないけど。
〘シュヴェルト・ワルツ〙を持っていた手が、指の関節ごとに切断される。再生しようにも激痛と違和感でうまく再生できない。
痛みはもう慣れた、だから別にどうでもいいんだけどこの違和感は何だ?
抑え込まれてるような感覚を無理やり突破して再生する。
「ーーーーーーー」
遠くで悔菜が何かを呟いている。
限界まで強化された私の聴力で聞き取れた最後の言葉。
「”【錬成】”」
かつて魔王を形にした黒灰の片刃の剣は、ただ壊れにくい、それだけで邪神と十数年をともにした。
無貌の魔王や、堕落の勇者との戦いでもこの剣は戦い抜いた。並の魔剣では瞬時に崩れ去るような戦いでも、敵を切り裂き邪神の相棒として生き抜いた。
「剣が⋯大きく⋯⋯!?」
元の大きさから2倍にまで届こうとする剣は、もはや片手で扱えるものではない。
灰色の刀身は花紫に淡く輝き、その根本には無数の目玉のような模様が壺菫色に発光していた。
それはもはや魔王の剣ではなく、邪神の剣。
全てを断ち切り、見るもの全てに異常をきたす異常な剣。
〘盲目ナル白痴ノ王〙
それは、向けられたものに絶対の敗北を示す象徴だった。
〘盲目ナル白痴ノ王〙
殲滅せよ 生きとし生けるものを
芽吹け命よ 死の上で 其が断ち切るは日々の夢
能力:
・30秒間防御無視:肉質無視:硬度無視:抵抗無視:概念無視:設定無視
(30秒が終了次第、ただの魔力となり空気中に散る)
※リキャストタイム:200years
30秒後、元の形に戻ったときから200年経過しないとこの状態にすることはできない。この剣があれば勝てる、そんな剣。
ちなみに記憶は飛んでない、元に”戻っている”だけ。




