不死身な私の殺し方 Ⅱ
死。
どの生物にも等しく存在している絶対に逃れることのできない概念。
ただ、私は最近その死とは無縁の存在になっている気がした。
少なくとも、今この瞬間までは。
「なんだ⋯⋯これ⋯⋯?」
体から何かが抜けていくような不思議な感じ。まさしく魂を引っこ抜かれているのではないかと錯覚してしまう。
そのイメージに抗うように、今尚膨れ上がり続ける己が体を体内に引き戻す。
「こなくそぉ!」
ピシリと、巨大になった顔に罅が入る。そしてその罅は全身を蝕み、やがて全てを崩壊させていく。肉体は液体と化し骨はその液体に溶けていく。
そして、全てを取り込んだ私は襲いかかる脱力に負け、意識を落とした。
「⋯⋯⋯⋯⋯んあ」
「起きた!よかったぁ」
あーなんだろ。すんっっごい眠い。
「いやー無事で良かったよ」
「これ見て無事って言える?」
そういいながらユウナが指さした私の右の背中には今、赤い翼のようなものが生えている。そう、翼だ。
つ ば さ で す。
Q.翼とは?
A.鳥類の空中を飛ぶための器官のことです。
鳥類の、器官です。
「what the fu**!?」
「わぁ、お茶の間には流せない発言だぁ」
もう、なんでもいいやぁ。
「ということで、能力を獲得できました!」
「慣れちゃった」
「というか制御がじゃじゃ馬過ぎてできないんだけど」
私の前には、人間の頭蓋骨と、その後頭部から無数に生える何かの生き物のどこかの骨という珍妙なものを持っている。なんだろうねこれ。象牙みたいなのもあるし、コレは歯⋯ギザギザしてるし鮫かな?
何はともあれ能力ゲットだぜ!
「そういえば君は⋯⋯っていうか名前教えてよ」
「あれ、教えてなかったっけ?⋯⋯有菜だよ」
「有菜ちゃん!いいね!かわいい!」
「ちゃん付け?私悔菜よりも歳上だよ」
「え゙?」
「人から出ていい声じゃないよ⋯⋯⋯」
私よりも身長ほんのちょっと小さいのに⋯⋯。
「ひどい」
「ごめん」
「いいよ」
謝ることは大事。争いは何も産まないからね。
え?お前の手にあるその赤い剣はなんだって?
⋯⋯君のような勘のいいガキは嫌いだよ。
「というか、多分私じゃ参考にならないよ?」
何の話?
「ギフトの制御だよ。私のギフトは使いどきが限られるっていうか滅多に使えないっていうか」
「どういうやつなの?」
「⋯⋯⋯大丈夫かな?【貴方への贈り物:忘却】。人の記憶を消して、矛盾が生まれないように別の記憶に書き換える能力だよ」
「なんでそれにしたの?」
「ちょっとね⋯⋯秘密。あーほら、秘密は女を美しくするっていうでしょ?でもそうだなぁ、手っ取り早く習得するとしたら実戦が一番だけど⋯⋯」
「ギイナのところに行く?」
「いや、いま試作は忙しいだろうし、もうあの世界に危険はないから戦うやつもいないし⋯⋯」
「あそこ試作って言うんだ。しかも平和かぁ。ギイナが頑張ってんだろうな」
「となると残るは⋯⋯」
有菜は魔法か何かで空間を開き、そこに手を突っ込みいそいそとなにかを探す。
「お、あった!」
そして、何かを見つけたのか勢いよく手を引っこ抜く。
その手にあったのは⋯。
「心臓?」
「そ。悔菜の」
「Oh!It is mine.」
むしゃり、となんてことなく心臓に歯を突き立て、齧り取っていく。本体を食べ終わったあと、手についた血も一滴残らず舐め取る。その仕草には、なんだか⋯こう⋯⋯大人の魅力がある。
「あらやだ大人だなんて」
舐め終わった手を水で洗い、それをタオルで拭った。不思議とその手に注意が向けられ、視線を戻したとき。
「あれ?」
有菜の身長は、私と変わらないくらいに伸びていた。
「ねえ悔菜」
有菜はゆっくりと歩を進め、私の目の前に立つ。
私の体はストンと、その場に座る。
そうあることが当たり前のように。
「私と戦ってみる気はない?」
有菜は耳元でそう呟いた。
私死んじゃうよぉ?
有菜さんが持ってた悔菜の心臓は一番最初にギイナに貫かれたときのやつ。あと有菜さんはどちらかと言うと青リンゴが好き。
く「邪教徒だ!捕まえろ!」




