我が身織りなす愛しの君へ Ⅲ
O.F状態時に最も注意するべきことは主に2つだ。
「【過去ヘノ未練】」
「はやっ!?」
上がりすぎた身体能力の制御。
小細工も一切無しのただの踏み込みで、地は砕け花びらが舞う。
だが、距離を詰めるだけじゃぁ人は殺せない。
「しっかり受け止めろ!」
【過去ヘノ未練】は全力で相手に攻撃を当てたときから30秒間、更に身体能力を上げるスキルだ。しかも初撃の威力も体感50%割増されている。
次に警戒すべきは体力の消耗だ。O.F状態がきれたとき、無呼で50mを泳いだときくらい苦しくなる。だから、こそ!
俺の額と右の手首に切り傷が現れる。
傷をつけたのだ、俺に。この女は、非常に面白い!
O.F状態がきれたときに再装填できるようにゲージは5段階目を超えていなくてはならない。
「それまで死んでくれるなよ?」
〘未喰〙の形状を変化させる。
黒と赤の二色で構成された細身の長剣、まあそんなことはどうでもいいから楽しんでくれや。
「【牡羊】」
12連続、ノンストップで行くぞ!
超高速の突進!どうしたそんな驚きの表情浮かべて、一番最初だぞ?
「【牡牛】」
さっきは突いたが今度は二連続の斬撃だ。
喜べよ。反撃用に腕を落としてない。
「【双子】」
【怨恨】を発動し左右同時から斬りかかる。
お前はどっちを防ぐんだ?
「ははは、お前まじかよ!」
女が選んだのは自ら腕を切り落とすという有り得ない手段。だが腕は再生し、切った腕からは胴体が生えてきた。片方は俺を、もう片方は【怨恨】の対処!
なんだコイツ。最ッ高にイカれてやがる!
「【蟹】」
実は俺もう一本の剣持ってるって言ったら怒る?んな暇与えねえよ!両手にもった武器を、ハサミのようにして両側から攻撃をする。
それだけじゃない。ついでに【怨恨】も左右追加だ。
4人に増えるか?さあ、どうするんだ!
分身がしゃがみ、その腕が真っ赤な液体となり溶けていく。その液体は瞬時に女を守る殻となり、俺の攻撃を弾く。
「【獅子】」
〘未喰〙を思い切り上から下に振り下ろす。すると、まるで獣の爪のように5本の【怨恨】が殻を切り裂く。
だが女は殻の中にいなかった。
「【最後の審判】!」
後ろから声が聞こえ振り向けば、白く光るエフェクトを刀身に纏わせ振りかぶっている女がいた。当たれば即死。そんな可能性すら見えるその攻撃も。当たらなければ意味がない。
「【乙女】」
「はぁ!?」
【乙女】は周囲3cmの攻撃にオートでパリィをするスキルだ。
どうした?切り札でも失ったか?残念ながらまだ半分だ。
「【天秤】」
剣を地面に突き刺す。すると、女の体は突然上空へ転移する。
そして、このコンボはいわゆる必中だ。
「【蠍】」
俺が地上で武器を振り下ろせば、上空の女に振り下ろした判定になる。どうせ当たってるんだろ?なら次も必中だ。
「【射手】」
貴方の心臓に闇の矢をお届け、ってな。
幾十の闇の矢が女の心臓を狙いながら飛行する。
おいおいあいつすげえな。二十はあったぞ。地上へ落ちてくる女は、腕に六本の矢を刺した状態だった。空中で矢をはたき落としてきたのか。まあ、まだコンボはつながるんだがな。
「天秤よ 均衡を保て」
どうしたんだそんな顔して。遠い地面を見ていたのか?残念ながらその地面はお前の目の前にあるぞ。
【天秤】の効果は、対象を好きなタイミングで上空か俺と同等の高さに転移させるスキルだ。お前のY軸は俺が操るんだよ。
「【山羊】」
ヤギの蹴りって痛ぇよなぁ。食らったことがないなら脚の代わりに剣で蹴り上げてやるよ。
「【水瓶】」
体が縦に等分されてるぜ奥さん。今度は横も割ってみないか。
水面のようにまっすぐ横に薙ぐ、が、コイツ脳みそも半分になってるってのに咄嗟にガードしやがった。
さてと、ついにこれが最後の一撃だ。終わってくれるなよ?
「【魚群】!」
正面からの突き、全方位からの【怨恨】!突きは心臓を、斬撃はお前を粉々に切り裂く!どう避ける?どう凌ぐ!?そうさせるつもりは毛頭ないが、お前はどう対処する!
さあ!見せて――――
「えいっ」
目の前から、女がいなくなった。
そうとしか認識できないなにかを、女はした。
疑問の声を上げようとした瞬間、俺は背中を蹴られていた。
俺の前、斬撃が集中するその球体の中心へと、俺は倒れていた。
頭の中でどうするか、どうすれば生き残れるのかが高速で思考されていく。生き残るとするならば、【怨恨】を全て弾くしかない!
「【殺尽讐たり】ィ!!!」
O.F状態で【殺尽讐たり】を発動すると、俺を中心に全方位に【怨恨】をばら撒ける。
ぬかったな!俺はまだ本気を出しちゃいなかった、その俺に本気を出させちまったんだ!【怨恨】が俺に向かっていた斬撃を相殺し、残った斬撃は全てあの女に集中させる!
また【牡羊】から始まる【破滅の星々】を食らわせてやるよ!
「【牡羊】!」
女のしなやかな肉体。その体を貫くために踏み出した一歩。大地を砕く膂力が込められた一歩。だがしかし、その一歩は大地を揺らすことすらなく、まず踏み出されることすらなかった。
「な⋯⋯んだ?」
急激に俺の体を襲う脱力感。
「うっ!?はぁ、はぁ、はぁ」
突然込み上げる吐き気と疲労!この症状には覚えがある。
まさか⋯⋯⋯。
[O.F状態が解除されました]
【恨痕】[ーーーーー〛ーー]
ゲージが、溜まっていないだと!?
「本っ当に馬鹿だよね」
女が剣を地面に擦り付けながら歩いてくる。
「確かに君は強かった。もし私が負けるなら、君の情報をよぉく調べなかったことが原因だろうね」
最初に見ているはずなのに、その足音一歩一歩が凄まじく恐ろしい。
「【破滅の星々】ってさ、順番通りじゃないと発動できないんでしょ?気付かなかった?私ちゃぁんと【乙女】の番が来るまで反撃しなかったんだよ。知らなかったから弾かれたんじゃない、知っているから弾かせたんだよ」
勢いを増していく火花が、強烈な光を生み出していくと同時に深い影を落としていく。
「ねえ、途中までうまくいってて、その後ボロ負けた気分はどう?ねぇ、どう?」
影に隠れた女の表情は笑っているに違いない。体が震える。本能で、この場から逃げ出そうと、生き延びようとしている!いや、でも大丈夫だ、俺にはまだ呪いがある。コイツを敵だと認識していれば俺は死なない!
「私の名前は薙峰 悔菜」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?
嘘だ、嘘だ嘘だ!そんなの嘘だ!だってあの日、悔菜は俺が!
「見ていたよ、君のこと」
無理だ、勝てない。
「斬ったよねぇ、私の、死体」
魔王と戦ったとき。
「私がその剣をあげたのにさぁ」
いや、それ以上に絶望を感じる。
「君は、何がしたいの?」
俺は見た。振り上げられた剣の切っ先に太陽の光が宿った瞬間を。こいつはきっと、俺を裁きにきた”神”に違いない。
【破滅の星々】
【牡牛】から始まり【魚群】で終わる12連撃。闇堕ちシュウサがO.F状態じゃないと扱えないくらいじゃじゃ馬なスキル。




