Who is liar
「⋯⋯⋯ぁぁぁああああああああッ!?」
あぁ⋯⋯⋯地面って安心するぅ⋯。おお、母なる大地よ、今日も感謝。
ドーンというべきかゴキッとでもいうべきかベチャッのほうがいいだろうか。とりあえず人体からは鳴っちゃいけない音がした気がする。
「うぅ⋯⋯」
うん、気のせいだな。そうだ、これは気のせいだ。
そういうことにしておこう。
「うぇ⋯⋯」
うん、気のせいだ。うん、そう気のせいだ。今私が見ているのは私の体ではない。決して言葉に言い表せないような見た目になっているのは私の体ではない。
ついでに首から下の感覚がないのも同じ、きっと麻痺してているだけ。とりあえず、起き上がろう。ヨイショと地面に手をついて起き上がる。
「あぁ⋯⋯」
いや、違うな。
起き上がった、だな。
⋯さっき見ていた体が。
わあすごいまるでゾンビのような体が自分の体のように動かせる。すごーい。あはははこんな体験初めてだなぁ。
「そうだなぁ。むむむむむ」
これも、傍から見てると首だけが唸ってるのかね。
というか痛い。慣れてないわけじゃないけどすごく痛い。
取り敢えず治そう。
ふん!ぬぬぬぬぬぬぬっ!
「よしっ!私復活!」
とりあえずここはどこだろうか、そう思って周りを見渡すと⋯。
「んぐっ!?」
人がいた。あ、いや違うな、これ私だ。
なぜ私がもう一人?
あ、そっか。私はある一つの結論に至り地面を見る。
うん。やっぱりないね。ないというのは服ではなく、あ、いや服もないんだけどさっきの体がないっていうこと。つまり前の私の体からは首が生えて、私の首からは体が生えたと。
「いや怖。っていうかキモ」
というかまずは服着なくちゃ。え〜っとね、確かイティサと戦ったときにゲットしたと思うんだけど。お、あった!
「【業羅鎧】!」
私がスキルを発動させると、背中から私を覆うように赤い鎧が装着される。う〜ん、でもこれ見た目がなあ。真っ赤な鎧だからなぁ。
私はこれでも青春真っ只中のJKなのだ。首が取れても生きてるJKって何ってなるけどな!
えっと、なんか見た目を変える機能とかないかな〜?
とりま【鑑定】してみるか。やっぱ【鑑定】って便利だよね。
【業羅鎧】
使用者の血液とLVを消費して高硬度な鎧を造る
一定の面積が自身と触れていれば見た目の変化も可能
その場合硬度は本来のものより低下する
血液とLVの量と鎧の性能は比例する
ほうほう。見た目の変化も可能なのか。
イメージすればいいのかな?ふふふっ。これでついにお披露目できる!私の前世のおしゃれ技術を!さあ来い私の洋服よ!
じゃじゃーん!どうだ私の洋服センスは完璧だろう!
もう一人の私よ答え給え!
「⋯⋯⋯⋯」
「そうかそうか言葉が出ないほどよいか」
はあー!この姿を別の視点で見てみたい!
もう一人の私の視点で見れたらこの私の姿を見れるのに。
目を開ける。そこには女神がいた。あ、はいすいません調子乗りましたはい。私の視界に映るのは黒の長袖パーカーと深緑のカーゴパンツを身につけた私の姿。いやね。別にね、私に洋服のセンスがなかったわけじゃなくてね、私ほどパーカーが似合う人はいないわけで、え〜っとつまり⋯⋯。
はいそうですよ私は洋服を選ぶセンスがないんですよ!悪かったですね!
かぁ〜!というか地味に私入れ替わってるし。
さっきまで着てた洋服が脱げてるし、見た景色が違うからわかるけど。
私の作った分身と、私の意識は移動が可能らしい。これで私の属性が不死身分身パーカーJKとなったわけか⋯。ついでに異世界転生と神も追加で。
もう一回入れ替わりたいと思ったら入れ替われるのかな?
ぬぬぬ、やぁー!お、戻った。
へえ、これ意識を入れ替えなくても動かせるのかな?
右手挙げて!ちゃんと挙がった。
左手挙げて!ちゃんと挙がった。
ジャンプ!お〜結構高くジャンプする。
いいね〜結構操作できるね〜。これ結構便利じゃない?
意識をもたせることはできるのか?分身をすぐ出せるようにもしたいなぁ。あーこういうの楽しい〜!よし!
「実験開始!」
「そないなことしとる暇ないで」
ん?ギギギと首を向けるとあらまーそこにはボロボロのイティサさんが。
「イツカラソコニイタンデスカ」
「お前の体だけが立ち上がったときから」
「ほぼ最初からじゃないですか!」
恥ずかしい。
「っていうかここどこなんですか?」
「んなもん僕が知っとるわけ無いやろ。っちゅうかなんかポーションや何か持っとらんか?お前との戦闘でリソース使いすぎたんや。もう回復もできん。」
「えーとポーションポーション。あ、林檎しかないですね。食べます?」
「んなもんいらん」
「いっぱいあるんで一個くらいはあげますよ」
「いっぱいてどんくらい?」
「ざっと50ほど」
「んなぎょうさん持ち歩いてどないすんねん。リンゴ農園でもつくる気か?」
「いいですねリンゴ農園。働きます?」
私林檎好きなんだよね。というかりんごなら果樹園では?
「⋯⋯⋯いや、遠慮しとく。というかもうええやろ」
地味にこの世界で珍しい林檎を齧る。うまい。ジューシーでフルーティーだ。
「おいお前、えっと確か悔菜やったか。僕の心臓食え」
「・ ・ ・ え?」
「聞いとらんかったか?僕の、心臓を、食え」
「いやいやいやいや!え?大丈夫ですか正気ですか病院予約しますか?」
「ナチュラルに煽ってくるな。別にええやろ。色も林檎と同じ赤やろ」
色はそうでも中身が違いすぎるんだよなあ。
「というか食べたら貴方死んじゃいますよね?」
「別にええやろ。300超えた爺の命なんてほっときゃ。ほれ」
ほれって何さほれって。
「僕の心臓を食えば、記憶も移る。この世界はそんなもんなんや。さらに心臓の持ち主のスキルも一部得ることができる。いい事づくしやろ。しかも、ここから出るために最も必要な要素は僕の記憶。どう頑張っても僕はここで死ぬ」
⋯⋯⋯⋯。
イティサが、何を言っているのかわからない。
わかるとするならば、今から私は彼を食らうということ。
「っ!?⋯⋯せや。⋯それで、ええ」
林檎を枝から引きちぎるように。
くるりと回し、血管をちぎる。ただ、それだけでいい。
「⋯⋯⋯⋯君は、誰やろなぁ」
心臓を齧る中、イティサに言われた言葉がやけに耳に残った。
彼女は私であり、彼も私である。
なぜ彼は知識をもつ?それは、彼が私だからに他ならない。
この世界を乱すのは、私なのだ。
ちなみに、悔菜さんが見ていないだけでスキルにはフレーバーテキストがあるよ。




