其方は望む
暗い、暗い。
とっても冷たくて寂しい真っ黒な空間。
そこで私は椅子に座っている。
前に四回、私はここに来たことがある。
ここは死の世界なんじゃないかな。ちょうど私が死んだはずと思った回数と一緒だからだけど、あながち間違っちゃいないと思う。
さっきはイティサとかいうシュウサくんを乗っ取ったやつに頭を潰されたところだから。
「うっ!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
ここだと、死んだときの痛みがリフレクションされるんだと思う。今回も、頭を潰された。その時と同じ痛みが来る。
頭がおかしくなる。
でも、おそらく生き返る。
私はなぜか死なない。
死ぬたびにここへ来て、また戻る。
だから⋯⋯―――
「あ゙ァッ!!」
早く戻らせて!お願いッ!
私の願いに呼応するように、痛みが消える。
生き返った。
急いで体制を整えないと!
頭を上げ、前を見れば。
「え?」
そこには私が座っていた。
鏡?
いや、私はもう椅子に座っていない。
汗をかいている私に反して、前の私は優雅に足を組んでまでいる。つまり、私じゃない。私の姿をしたなにか。
「誰?」
「誰とは何だ誰とは。久しぶりの再会だっていうのに一言目がそれとか⋯⋯⋯え?」
「?」
「え?」
「ええと貴方とは、初対面のはずですけど⋯⋯⋯」
その顔を、何と形容しよう。
表す言葉があるとするならば、絶望と、歓喜だろうか。
「ほんとに、覚えて、ない?」
私は、コクリと頷いた。
「あ〜そうだった。ちょっと待って。待ってね⋯⋯」
そう言って、なにかは天を仰ぐ。ただ、それだけじゃ抑えきれなかったのか、ボロボロと涙が頬を伝う。
「ちょっと!大丈夫?」
問いかけても頷くばかりで、なぜ泣いているのかはわからない。
ただ、私は寄り添ってあげなくちゃいけないと強く感じていた。
「落ち着いた?」
「⋯うん。まあ」
恥ずかしいとこを見られたのか、少女は泣き止んだあとも顔を赤くしていた。うん。少女だ。
私と同じ姿だろうと、年は私よりも下な気がする。
それに、なんだろう。離れたくない。
「く、苦しい」
「え?わわっ!?ごめん!」
気付かぬうちに意識を奪うところだった。危ない危ない。
「ごほん!それでは気を取り直して。ようこそ、薙峰 悔菜」
大きめの咳で雰囲気をなおした。
こう見ると私って可愛いかも。
「そこぉ!可愛いとか言うな!」
あう。怒られた。
ってあれ?声に出してたっけ?
「ここにはすべての壁がないの。心を読むことだってできるのさ!」
すごーい。
「ふふん。もっと褒めてもいいぞ!」
それって、私にもできるの?
「まあ恐らくは、ね。常人には厳しいがな!まあ、私は余裕だったけど。」
(ほんとは結構苦戦したとは言うまい)
あ、できた。
「なんだとー!?」
(なんだとー!?)
面白い。
「やめろ見るでない!禁止じゃ禁止!心読むの禁止じゃ!」
りょーかい。
というか口調変わってない?
「ん?本当か?⋯まあいい。なにか知りたいことでもあるか?一つだけ何でも答えてやろう」
なんでそんなに可愛いのぉ?
「ばっ!?なし!その質問なし!」
なんでもいいって言ったじゃん。
「ここでボケるとは思わなかったからしょうがないだろ」
ん〜じゃあ何を聞こうかな。
まあ、目下最大の疑問は。
「私って何?じゃな」
せいかーい。
「ふむ。それに応えたいところじゃが、時間のようだ。また次の機会に話そう」
なぬ?
そして、私はまた蘇った。
そう、悔菜さんは可愛いんです。幼い顔に似合わない赤い瞳はルビーの如く、長い茶色のポニーテールはさらっさら。ね?可愛いでしょ?




