ならざる者の慟哭
何か知らないものの頭を潰す。
ギイナが死んで開放された。強すぎる力は世界を崩す。僕は、僕らはその意見に賛同した。ギイナが死んだ後、世界が混沌に包まれるようなら、僕らで壊せ。
だが、僕はこのままでは死んでまう。
肉体がなければ消えてしまうからな。
どうにかせんといかん思っとったら、目の前におもろいのがおるから、僕をスキルとして彼に送ったんや。そうしたら案の定乗っ取れた。
良い買い物した思っとったら、ジロジロ見てくるやつがおったから叩き落としってやった。記憶によれば悔菜とかいう奴やった気がする。殺す気でやったのに、何故か生きとった。
それに、循環のことも知っとるようやったし、生かす理由もなかった。せやから殺した。
せやのに⋯⋯――!!
「ガッ!?」
なんで僕の首を締め上げとるんやコイツ!
潰した頭も生えてきとるし、なんなんやコイツ!ヒトじゃないんか!?
それに僕の鎧も生前よりも練度が増してる分重くなっとる。
こんな華奢な娘の腕一本で持ち上げられるもんやないぞ!
しかも何やその顔。目が黒い線で塗りつぶされとる。口は三日月のように吊り上がっとる。
はは、言葉通りに貼り付けられた笑顔や。ホンマにバケモンやないか。
腕が振られる。それだけで僕の体はアホみたいに飛んでいく。
その勢いで壁に叩きつけられ、痛みで悶絶する僕の体を鎧ごと貫手で穿つ。
おかしいやろ。僕の鎧は金剛石よりも尚硬いんやぞ。
なんで貫通できてんねん。
人が変わったじゃ表せんほどの変容っぷり。
こいつホンマにさっきのやつか!?
驚き、動揺の最中、女の顔はもとに戻る。
「あ、れ?っ!さっきの⋯うぇあ!?刺さってる!?どうして!?」
こいつッ!
「お前が、やったんやろがいッ!!」
細かく切り刻んで取り込んでやる!
鎧を変形させて刺さった腕を固定する。
「うわっ!?」
遅いわ!もう逃げられる段階ちゃうねん!
腕、足、胴、頭、合わせて百ほどの肉塊にして取り込む。
取り込んでしまえば、どんなに再生する化け物でも殺せる!
僕の勝ちや!
勝ちを確信した僕はある対策を怠った。
「グハッ!?」
吐血。目から出るのも涙の代わりに血液だけ。
体に力が入らん!これは⋯。
「毒、か」
自爆の手段として毒を使う奴もおる。
僕はあまり毒の耐性が高いわけやない。
やから常に解毒の魔法を自分にかけとる。
焦りすぎてそっちに気ぃ回しとらんかった!
まあ元やろうと常人の五倍はあるんやけどな!
それを、軽く貫通してきおった!
「オェッ!」
僕が毒の対処に回っとるうちに再生しおったか。
背中ぶち破って出てくるとは、僕やなかったら死んどるぞ。
せやけど、ここまで僕を追い詰めたんは悪手やったな。
「【我儘な世界】!」
僕のとっておきの切り札や。
この世界には古代魔法とよばれるものがある。
はるか昔に滅びた、古代の魔法。
現代で使えるのは、ギイナと僕⋯いや、ギイナは死んだんやから僕だけか。まあ要は、えらい昔のえらい魔法っちゅうことやな。
その分使う魔力も多く、一般人が使うと、一発で廃人になりかねん危険な魔法や。その分威力や効果もえげつない。
【我儘な世界】は自身を中心とした半径100mを範囲とし、その中でルールを決めることができ、それに伴ったペナルティがついてくる。
[ルールを設定してください]
「再生不可、それと毒物の反転や」
よし、この際ペナルティなんざどうでもええ。
あとは取り込んだり好きにしたらいい。
[⋯⋯⋯]
なんや?
やけに遅いような。
[ルールが却下されました]
⋯⋯は?なんや、それ。
なんやなんやなんやなんやなんや、なんなんやそれ!
却下?却下やと!?知らんぞそんなの!却下?却下ってなんや!今までそんなんなかったぞ!クッソ!取り敢えずルールを再設定せな!
「再生のふ――」
「ルール。切断系統の攻撃の威力増加。スキルによる攻撃の威力の増加、申告。」
[⋯⋯承諾]
[切断系統威力増加、スキル威力増加、ルールの付与が完了]
[提案者薙峰 悔菜に対するペナルティ、全防御力を0に変更]
[敵意のあるなにかに接触した場合、死亡となります]
おかしいやろ、なんでアイツが僕のスキルを使っとるんや。
そのルールも、ふざけとるやろ。そないなルールが付与されとったら。
「もう、勝てへんやん」
その通りに事は進んだ。僕は再生するたびに体を斬り刻まれる。
僕の使ったスキルや魔法は尽く意味を持たんかった。
なんにもできずに、手も足も出ない。そろそろ、僕の再生は止まる。何時間も斬り刻まれとったんや。【此岸花】⋯⋯⋯スキルで吸った命のストックも、もう無い。
走馬灯が駆け巡る。
この世界に生まれたとき、前の自分に会い、この世界の真実を教えてもらった。そこから努力をして、自分を磨き上げた。
せやけどギイナ、お前はドンドン先へ行って、僕を置いていき最終的に僕を殺した。そして僕や他の魔族を取り込み、次の僕たちと戦った。
そして、コイツラの代になって、お前は死の覚悟をした。
そして、気付いた。
何かが違う。
別の何かがいる。
途中まで気付かんかった。
やけど、会って確信した。
悔菜。
あのとき、教室どころか、学校にすらおらんかった。
いや、それすらもあやふやな存在。怪異みたいやな。
あの戦いを、僕は俯瞰しているような視点で見ていた。
ああ、そうやった。ギイナの死因である、あの刃物、こいつがつくったんやった。そして、ギイナはこいつの心臓を直してなんかいない。こいつは自分で直した。
僕は今、立つことすらできず、無様に地面に倒れ込んでいる。
こいつは途中から豹変することもなくなっていった。
おそらくあれは、死をトリガーにした強化。そうして、死にまくったこいつは死に慣れていった。そしてそれが体に馴染んでいったことで、おそらく死を克服した。
ちなみに死んだ理由は主に毒や。
こいつは業羅鎧を取り込もうとしたっちゅうか取り込んだ。
劇毒である僕の鎧を。
馬鹿やな。そのバカに負けた僕はもっとバカや。
まあ、それでこいつは常に僕を圧倒できるステータスになった。
ただ、体が言うことを聞かずに動き回ってコイツ自身も大概まいってる。体が勝手に動くんは考えもんやね。それでも、僕にはもう抗う力は残っとらん。さあて⋯⋯⋯―――
残った体力をフルに使い、何とか木に寄りかかる。
「お話の時間や」
そして、僕の意識は暗闇へと沈んでいった。
【業羅鎧】‹シュウサver›
勇を遂げるための覚悟はあるか
この鎧は夢を成すための魔王からの贈り物
【業羅鎧】‹本来ver›
それは罪が形を成したもの
善は時立ちて悪となり、覚悟は血肉の鎧となる
羅刹は業にて討たるるだろう




