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ただ咳をする  作者: haremame
廻編 第一章 星に願いを 月に幸せを
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ならざる者の慟哭

何か知らないものの頭を潰す。



ギイナが死んで開放された。強すぎる力は世界を崩す。僕は、僕らはその意見に賛同した。ギイナが死んだ後、世界が混沌に包まれるようなら、僕らで壊せ。



だが、僕はこのままでは死んでまう。

肉体がなければ消えてしまうからな。


どうにかせんといかん思っとったら、目の前におもろいのがおるから、僕をスキルとして彼に送ったんや。そうしたら案の定乗っ取れた。


良い買い物した思っとったら、ジロジロ見てくるやつがおったから叩き落としってやった。記憶によれば悔菜とかいう奴やった気がする。殺す気でやったのに、何故か生きとった。


それに、循環のことも知っとるようやったし、生かす理由もなかった。せやから殺した。


せやのに⋯⋯――!!



「ガッ!?」



なんで僕の首を締め上げとるんやコイツ!


潰した頭も生えてきとるし、なんなんやコイツ!ヒトじゃないんか!?


それに僕の鎧も生前よりも練度が増してる分重くなっとる。

こんな華奢な娘の腕一本で持ち上げられるもんやないぞ!


しかも何やその顔。目が黒い線で塗りつぶされとる。口は三日月のように吊り上がっとる。


はは、言葉通りに貼り付けられた笑顔や。ホンマにバケモンやないか。


腕が振られる。それだけで僕の体はアホみたいに飛んでいく。

その勢いで壁に叩きつけられ、痛みで悶絶する僕の体を鎧ごと貫手で穿つ。


おかしいやろ。僕の鎧は金剛石よりも尚硬いんやぞ。

なんで貫通できてんねん。


人が変わったじゃ表せんほどの変容っぷり。

こいつホンマにさっきのやつか!?


驚き、動揺の最中、女の顔はもとに戻る。



「あ、れ?っ!さっきの⋯うぇあ!?刺さってる!?どうして!?」



こいつッ!



「お前が、やったんやろがいッ!!」



細かく切り刻んで取り込んでやる!

鎧を変形させて刺さった腕を固定する。



「うわっ!?」



遅いわ!もう逃げられる段階ちゃうねん!

腕、足、胴、頭、合わせて百ほどの肉塊にして取り込む。

取り込んでしまえば、どんなに再生する化け物でも殺せる!


僕の勝ちや!


勝ちを確信した僕はある対策を怠った。



「グハッ!?」



吐血。目から出るのも涙の代わりに血液だけ。

体に力が入らん!これは⋯。



「毒、か」



自爆の手段として毒を使う奴もおる。

僕はあまり毒の耐性が高いわけやない。

やから常に解毒の魔法を自分にかけとる。


焦りすぎてそっちに気ぃ回しとらんかった!

まあ元やろうと常人の五倍はあるんやけどな!

それを、軽く貫通してきおった!



「オェッ!」



僕が毒の対処に回っとるうちに再生しおったか。

背中ぶち破って出てくるとは、僕やなかったら死んどるぞ。

せやけど、ここまで僕を追い詰めたんは悪手やったな。



「【我儘な世界】!」



僕のとっておきの切り札や。


この世界には古代魔法とよばれるものがある。

はるか昔に滅びた、古代の魔法。


現代で使えるのは、ギイナと僕⋯いや、ギイナは死んだんやから僕だけか。まあ要は、えらい昔のえらい魔法っちゅうことやな。


その分使う魔力も多く、一般人が使うと、一発で廃人になりかねん危険な魔法や。その分威力や効果もえげつない。


【我儘な世界】は自身を中心とした半径100mを範囲とし、その中でルールを決めることができ、それに伴ったペナルティがついてくる。



[ルールを設定してください]



「再生不可、それと毒物の反転や」



よし、この際ペナルティなんざどうでもええ。

あとは取り込んだり好きにしたらいい。



[⋯⋯⋯]



なんや?

やけに遅いような。





[ルールが却下されました]





⋯⋯は?なんや、それ。


なんやなんやなんやなんやなんや、なんなんやそれ!


却下?却下やと!?知らんぞそんなの!却下?却下ってなんや!今までそんなんなかったぞ!クッソ!取り敢えずルールを再設定せな!



「再生のふ――」



「ルール。切断系統の攻撃の威力増加。スキルによる攻撃の威力の増加、申告。」





[⋯⋯承諾]


[切断系統威力増加、スキル威力増加、ルールの付与が完了]


[提案者薙峰 悔菜に対するペナルティ、全防御力を0に変更]


[敵意のあるなにかに接触した場合、死亡となります]





おかしいやろ、なんでアイツが僕のスキルを使っとるんや。

そのルールも、ふざけとるやろ。そないなルールが付与されとったら。



「もう、勝てへんやん」







その通りに事は進んだ。僕は再生するたびに体を斬り刻まれる。

僕の使ったスキルや魔法は尽く意味を持たんかった。


なんにもできずに、手も足も出ない。そろそろ、僕の再生は止まる。何時間も斬り刻まれとったんや。【此岸花】⋯⋯⋯スキルで吸った命のストックも、もう無い。


走馬灯が駆け巡る。

この世界に生まれたとき、前の自分に会い、この世界の真実を教えてもらった。そこから努力をして、自分を磨き上げた。


せやけどギイナ、お前はドンドン先へ行って、僕を置いていき最終的に僕を殺した。そして僕や他の魔族を取り込み、次の僕たちと戦った。


そして、コイツラの代になって、お前は死の覚悟をした。

そして、気付いた。


何かが違う。


別の何かがいる。


途中まで気付かんかった。


やけど、会って確信した。


悔菜。


あのとき、教室どころか、学校にすらおらんかった。

いや、それすらもあやふやな存在。怪異みたいやな。


あの戦いを、僕は俯瞰しているような視点で見ていた。


ああ、そうやった。ギイナの死因である、あの刃物、こいつがつくったんやった。そして、ギイナはこいつの心臓を直してなんかいない。こいつは自分で直した。


僕は今、立つことすらできず、無様に地面に倒れ込んでいる。

こいつは途中から豹変することもなくなっていった。


おそらくあれは、死をトリガーにした強化。そうして、死にまくったこいつは死に慣れていった。そしてそれが体に馴染んでいったことで、おそらく死を克服した。


ちなみに死んだ理由は主に毒や。

こいつは業羅鎧を取り込もうとしたっちゅうか取り込んだ。

劇毒である僕の鎧を。


馬鹿やな。そのバカに負けた僕はもっとバカや。

まあ、それでこいつは常に僕を圧倒できるステータスになった。


ただ、体が言うことを聞かずに動き回ってコイツ自身も大概まいってる。体が勝手に動くんは考えもんやね。それでも、僕にはもう抗う力は残っとらん。さあて⋯⋯⋯―――


残った体力をフルに使い、何とか木に寄りかかる。



「お話の時間や」



そして、僕の意識は暗闇へと沈んでいった。




【業羅鎧】‹シュウサver›

勇を遂げるための覚悟はあるか

この鎧は夢を成すための魔王からの贈り物


【業羅鎧】‹本来ver›

それは罪が形を成したもの

善は時立ちて悪となり、覚悟は血肉の鎧となる

羅刹は業にて討たるるだろう


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