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ただ咳をする  作者: haremame
廻編 第一章 星に願いを 月に幸せを
13/18

Who are you

乱暴に体を動かされて、意識が強制的に叩き起こされる。


おかしい。


私、死んだよね?

頭を後ろからこう、潰されて終わったはずなのに。

なんで、起きたの?



「悔菜起きたか!取り敢えず逃げるぞ!走れるか!っていうか走れ!」



「な、何が起きてんの!?」



なんかパニック映画の冒頭みたいになってるんですけど!?



「わからないけど、突然暴れ出したの!」



「誰が!?」



「シュウサがだよ!」



シュウサ君が!?

なんで!?


ああもうわっかんない!

見たほうが早い!


バランと戦ってたときみたいな感じで地面をぉ、ドンッ!

そしたら瓦礫を駆け上がる!


上空から、ユーサ君達が逃げてきたであろうルートのはじめを探す。場所はすぐに分かった。


そこは、己がテリトリーを顕示するが如く目に見えて変化していた。



「なに⋯これ⋯⋯⋯?」



花が、咲いていた。


白無垢のように可憐なその姿は、生と死が両立しているという矛盾を体現している。大地から命を吸い取り、大量に咲いた白い野原でそれは笑っていた。赤黒く禍々しい鎧と黒の外套を身にまとったそれは、笑っていた。


それと目が合う。

頭の兜で見えないはずの目と、確実に目が合った。

そう気づいた瞬間に、私の体は地面に叩きつけられていた。

何が起きたのか反応どころか思考することすら許されずに。


痛い、肋が折れていそうだ。

背中を叩きつけられたから、うまく足に力が入らない。


いや待て。

なぜ私はいまので死んでいない?

普通なら即死のはずだ。

なぜ私は頭を潰されたのに生きてる?

カキアちゃんが治してくれた?

おそらく、いまのカキアちゃんでもそれは無理だ。

なら、なにが?



「さすがやなぁ悔菜は、いまので死んどらんのか」



肌が泡立ち、体の芯から凍ってしまうような気配を纏うそれは言った。それは、いつの間にか私の前に片膝を立てて座っていた。


気付けなかった。あの魔王よりは幾分か優しいだろうけど、これは⋯⋯⋯無理だな、勝てない。


分かってしまう。


私とこれの間にある差が大きすぎる。


いや、諦めるな。

というか、まずは立たなきゃ。

何をするにも寝転がっているわけにはいかない。


いまだ力が入り切らない体に鞭を打って立ち上がる。



「おお!流石やな!」



私が立ち上がったのがそんなに不思議なのか?

上機嫌になったのか、両手をパチパチと叩いている。



「あなたは、誰?」



今現在最大の疑問。

コイツは何だ?



「ん〜?知っとんの?⋯わからんけど、僕はこの体の持ち主と一緒やで」



そう言うと、鎧が変形していきその顔があらわになる。

それは肌の色が褐色だったり、白髪だったり野性的な顔つきではあったが間違いなく。



「シュウサ君?」



シュウサ・グレイス、その人だった。

さらにこの体の持ち主と一緒という発言。

こいつも転生者、しかも霧坂翔馬の転生体だ。

中身は同じ翔馬君なのにこんなにも纏う雰囲気が違うのか。



「この体、シュウサが使っていたスキルは元は僕のスキルや。歴代勇者が引き継いで形は変わっとるやろうけど、紛れもなく僕のもんや。使いすぎれば勿論僕との繋がりがより強固になる。それやのに僕個人のスキルも使ったらそら乗っ取れる」



「そんなこと、聞いたこともない。」



「そりゃそやろ。これができるんはギイナ亡き今僕だけやろうし。何ならギイナがおったら僕は彼にスキルを渡すこともできんかった。まあ、乗っ取れたんは君らの御蔭っちゅうわけやな」



ギイナ、魔王。その名が出てきた時点でこいつはもうほっとけない。恐らくというか確定でこいつは魔族の中でも最上位にいる。



「なぜギイナを知っている?」



聞かなくちゃいけない。ギイナとの関係を。



「なんでって言われても、ただギイナは”僕の”先代ってだけやしなぁ」



「先、代?」



じゃあ、ギイナの中身は。



「そう。今世の名はシュウサ・グレイス。僕と同じ霧坂翔馬の転生体や」



ギイナは戦闘中、無数の刃物を生み出し攻撃してきたという。

私も最近武器を十個ほど同時に飛ばすことができるようになっていた。


だからバランから世代の話を聞いたときには考えていた。

ギイナは、私と同じ薙峰 悔菜なんじゃないかって。

だけど違った。


じゃあ、私は。



「誰やろな〜?」



クスクスと、嗤うそいつは子供じみた悪意を抱えている。


抑えろ。

こいつの体はシュウサ君のものだ。

傷つけちゃいけない、戦ってはいけない。

頭は灼けるように熱いのに、体はひどく冷たい。

私のものじゃないみたいだ。


   

もう、どうだっていい(もう、どっちでもいい)



「おっと、逆鱗やったかな」



感情の昂りで、物事を考えられなくなってくる。

ただただわかるのは、ギイナの言葉が正しかったということだけ。



[個体名薙峰 悔菜の種族がヒトから虐殺者(スローター)へと進化しました]



私は、人間じゃなかった。



「お前の名前は、何だ」



「僕か?僕はイティサ。面倒になる前にやっといたほうが良さそうやから。ほな、さいなら」



反応できなかったわけじゃない。

前からやってくる拳は私の命を奪うものだ。

でも、もういいんだ。


イティサの拳が私の頭を破裂させる。

私は死んだ。

















































でモほら。私ハまだ生キテいる。






悲しきかな君はこの作品からは逃れられぬのだよ。

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