必然の邂逅
「魔族?」
魔王との戦いから1ヶ月。
この世界に転生してから21年が経とうとしていたころ、ユーサが持ってきた情報は驚きのものだった。100年以上前に滅んだと言われている魔族が、復活したというのだ。蘇ったのは数人らしいが、それでもこの世界の住人達には荷が重い。
それで俺達勇者パーティにお鉢が回ってきたというわけだ。
「ほんじゃ、早速行くか。ユーサ、場所は?」
「ここからずっと南に行ったところだ。そう遠くはない」
魔族というものがどのようなものかはわからない。
だけど、ゴルトが命を賭したこの平和を壊すやつは許せない。
「なん、だこれ⋯⋯」
「うっ⋯。おえっ!」
「カキア!」
目の前には、花が咲いていた。
純白のきれいな花が。
だけど、生えている場所が問題だ。
その花は⋯。
死体に咲いていた。
肉が千切れ、骨が剥き出し、所々に喰われたような跡があった。
そして一番重要なのが⋯。
「血が乾いていない」
つまり近くにいる。逃さないぞ、絶対に!
「10時方向に、1、4、8、15人いる」
「⋯?分かった。ユーサ、頼んだ」
「了解!」
悔菜の索敵範囲と正確さが大分上がっている。
一瞬びっくりしちゃった。
まあそんな考えは頭の隅に置いておいて⋯。
ユーサはその素早さと隠密さが武器だ。相手の位置を探ることができる。少し待てば⋯。
コンッと響く音が2回、そして3回響く。
なるほど。正面、走れ⋯ね。
「行くぞ」
スキル【業羅鎧】、発動。スキルを発動させると同時に、鎧が俺の体に装着される。赤黒い禍々しい鎧が、悪を滅ぼせと訴えかけてくる。
「最高速だ」
限界まで遠くを描写した俺の眼は、敵影を確認し、全力のスタートダッシュを決めた。
数秒もかからず魔族に肉薄した俺は、〘煌憧刃羅〙を振り抜く。
「ようこそ王国へ!パスポートかビザはお持ちですかぁ!」
たしかに15人いた魔族の先頭にいた筋骨隆々な人物に攻撃を仕掛ける。
「【セクション】」
あれ、おかしいな。俺の今の速度は凄まじいんだけどな?悔菜さん速くないですか?
「御生憎様、どっちも持ってねぇんだ」
悔菜が残りの魔族を全員始末したのを確認している時。残りの魔族が話しかけてきた。え、このネタ通じたの?
「⋯⋯。なるほど、勇者様御一行か」
「【アサシネイト】」
木の上に隠れていたユーサが攻撃を仕掛ける。
だが⋯。
「鈍い」
魔族に攻撃を弾かれ、見たことのあるカウンターを食らいそうになったところで。
「【業火】!」
直後、地面から這い出てきた地獄の業火が魔族を焼き尽くす。すごいな。カキアの魔法の火力が文字通り上がっている。これなら⋯。
「いい火力だ。けど、俺を仕留めるんにゃ……――」
真っ赤に燃え盛る炎の奔流からゆっくりと歩き出してくる魔族。
「ちと温いな」
生きてやがった⋯。
「次は?俺の番か?ふむ。お前ら、名前は?」
腰に佩いた剣に手を乗せながら答える。
「シュウサ・グレイス」
「ユーサ・ダルジェント」
「カキア・ブルーム」
「悔菜」
剣の切っ先を魔族に向けながら、今度はこちらが問う。
「お前の名はなんだ」
「俺か?俺は………バランだ。よろしくな」
その瞬間、凄まじい殺気がバランから放たれる。ギイナには劣るが、それでも凄まじい!
だけど、なんだ?
ギイナからは感じなかった、感情がある。
追憶、後悔⋯………………友情?
「【大地拍動】」
地が、震える。
震え、揺れ、軋む。
あたりの大地はひび割れている。
立っていることもままならない!
途端、揺れが止む。
体勢をすぐに立て直し、周囲を見回す。
何処だ、バランは、どこ⋯。
「流石だな」
恐らく、後ろにいるのだろう。
「ほら、褒美だ。存分に食らってくれ」
すぐに後ろを向き、俺の腹に打ち込まれようとしている拳を見た瞬間。考えることすらせず、反射的に言う。
「【業羅鎧】全開放!」
耐え難い激痛が。全身に走る。四肢がバラバラになったと勘違いするほど。木々をなぎ倒しながら、岩に体を打ちつけてようやく止まる。急げ、戻るんだ。
体は、動く。⋯まだ戦える、まだ!
「感謝するで」
誰が言ったかはわからない。
聞き覚えのないその声に、俺は疑問を口にする。
「誰――」
ブツンっと、途切れる意識の一瞬。
聞こえた言葉。
「君」




