表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

1 出会いと同化

「……ん? ここは……?」


気付けば俺は、何もない真っ暗な空間に居た。

何を言ってるんだと思うかもしれないが、俺にも分らん。


「スゥー、スゥー」

「……誰かいるのか?」


何もない空間に、誰かの寝息の様な音が聞こえる。

辺りを見回して見ると、少し離れたところに誰かが丸まっているのが見えた。


恐る恐る、その人に近づいていく。


「子供? どうしてこんな所に……」


やせ細り、骨の浮いた白い体。ボサボサで薄汚れたオレンジの髪。

見た感じでは、6,7歳くらいに見える子供が、そこに丸まっていた。


「お、おい君。こんな所で寝ていては風邪をひいてしまうぞ」


起こすために体を揺すろうとその子に手を伸ばす。

手が体に触れる直前、その子が飛び上がる様に起き上がり、俺から距離をとる。


「すみません! 直ぐに仕事に……あれ? ここは……?」


その子はキョロキョロと辺りを見回していたが、やがて俺に気付くと明らかに警戒した様な視線を向けてくる。


「や、やあ」

「誰、ですか?」


うーん、まさかここまで警戒されるとは……。ちょっとショックだなぁ。

とはいえ、努めて冷静に話をしようとする。子供の前で、大人が取り乱す訳にはいかないからね。


「俺の名前は、立浪和臣(たつなみ かずおみ)。しがない会社員だよ」

「タツナミカズオミ?」

「君は?」

「……オレに名前なんてな……有りません」


……名前が、無い? そんな事が有るのか?

訳が分からず、彼――オレと言ったから、おそらく男の子だろう――の顔を見つめる。

彼もまた、紅い瞳をこちらに固定したままだった。


このまま見つめ合っていても、何も変わらない。

ややあってそう判断した俺は、一先ず気になったことを訊くことにした。

呼び名は後で考えればいいだろう。


「オーケー、一先ずそこは置いておこう。それよりも、いくつか聞いていいかな」

「なん、……ですか?」


敬語を使うのに慣れてなさそうな彼に、思わず笑みが零れる。


「別に、無理して敬語を使わなくていいよ。話しやすい話し方で」

「…………分かった」

「うん。それじゃ、改めて……。此処が何処だか、分かる?」


彼はもう一度辺りを見回してから――。


「知らない。気付いたらここに居た」

「そっかー」


――簡潔に答えをくれた。

つまり、二人とも訳が分からない場所にいつの間にかいたって感じなのかな?


「因みに、もう一つだけ良い?」

「……何?」


此処については分からないけど、もう一つ気になる事を彼は言ったんだよね。


()()って、どういう事?」

「?」


彼は首を傾げる。

その反応に、あり得ないとは思いながらも、仮説を問いただす。


「もしかしてだけど、仕事、してるの?」


コクリ。

さも当然かの様に、首肯する彼。

まさかとは思ったけど、こんな小学生の頃から働かせているなんて……。


「君の、お父さんとお母さんは?」


気付けば、口から出ていた。

怒気を孕んだその声に、彼はビクリと体を震わせる。

俺はハッとして、彼から少し距離を取った。


「ご、ごめん。怒るつもりは無かったんだ……」


彼は何も答えない。

――怖がらせてしまったかな。

如何したもんかと頭を掻いていると、彼が徐に口を開く。


「かあさんも、とおさんも……。オレを、売ったんだ」

「――ッ」


予想だにしなかった答えに、思わず息を飲む。

――売った? 子供を?

再び沸き起こる、この子の親への怒り。

それと同時に、頭の冷静な部分が人身売買なんてあり得るのか? と疑問を持ち上げる。

しかし、そんな事などどうでもよくなってしまった。

続く彼の言葉によって――。


「売られて、やりたくも無い仕事をさせられて……。突然怒鳴られて、満足に飯も食えなくて……。もう、嫌だよ……。仕事なんて、やりたくないよ……」

「……」


彼は言葉を漏らしながら、しゃがみこんでいく。

膝を抱えた腕には、雫の様な物が乗っているのが分かる。


足が勝手に動いていた。

しゃがみこむ彼の元へ行き、膝をつく。


「もう、大丈夫」

「――ぇ?」


その細い体を、目一杯抱きしめてやる。


「おじ、さん……?」

「もう、大丈夫だよ。俺が何とかしてあげる」


――子供には、子供の仕事が有る。

目一杯食べて、遊んで、眠って。いろんなことを体験して、自分の好きを増やして。

そうして、自分のやりたいことを見つけていく。

それが子供の仕事だ。

やりたくない事を、やるべき仕事とするのは、大人になってからで十分だ。


「オレ……、働かなくて、良いの?」

「ああ」

「もう、やめても良いの?」

「ああ」

「でも……」

「仕事なら、俺が代わりにしてあげる。だから君は――」


突然、足元が明るくなる。

見ると、どうやら俺達を中心に円形に光っているらしい。

何やら、文字や文様が描かれているのが分かる。

しかし、それが何を表しているのかは分からない。


「何が――」

「――そっか」


彼が、安心したように呟く。


「もう、良いんだ――」


その言葉を最後に、視界が真っ白に染まっていった。

間もなく、主人公が転生しそうですね

このまま無事に行くんでしょうか


良ければ、評価&コメント&リアクション等、残して行ってくれると御の字です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ