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奇鬼眼  作者: 駿河留守
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ワタシは思う

 明日会おうと電話で言っていたが少女、山田だったが彼女はその後に送ってきたメールにしばらく準備のために会えないとメールが届いた。それから何も起きないまま1週間が過ぎた。テレビでは1週間たった老夫婦強盗殺人事件の犯人の手掛かりが一向に掴めないことに町の不安が高まっていると報道していた。警察は一度もワタシに絡むことなく1週間が経過した。少女、山田と会う必要がなくなり家を出る必要も無くなったワタシは引きこもりニートプー太郎生活に逆戻りした。いや、悪化した。あの取り立て屋に会いたくなくて殻の中にこもったままのワタシは身動きが出来ない。

 今のところは何も変化がなく安定しているがいつの安定が崩れてもおかしくないこの状況をワタシは安定とは呼ばない。少女、山田はいい方法があると言っていた。そのための準備とは何をしているのかワタシにはさっぱりだ。奇妙な鬼の眼を持っているだけであとは普通の中学生の女の子である彼女が一体何を考えているのか。

 電話の最後のほとんどがその鬼の眼をしてワタシに話していたことだけは分かる。

 何を怖がっている。ただ、少し不気味な目線をしてワタシを見るだけであってそれ以上に何もしてこないじゃないか。でも、それが怖いのだ。何をするのか分からないあの眼は恐怖の塊そのものだ。奇妙な鬼の眼。奇鬼眼(ききがん)とでも名付けようか。その眼をもつ少女、山田はワタシの知る世界に住んでいる住民ではない気がする。本当にまるで鬼のように容赦がなくなる。

 少女、山田が言うその取り立て屋から逃れるいい方法というのはまさか・・・・・。

 ピンポーンと甲高い音が家中に広がる。インターホンの音だ。おばさんはいつものように借金を返すために仕事をしに行って家にいない。つまり、この家にはワタシしかいない。ワタシはプー太郎であって引きこもりではない。人との関わることが苦手というわけじゃない。だから、このインターホンに別に出てもいいのだ。だが、それが取り立て屋だった場合はどう対処すればいいのか分からない。普段はおばさんのいる時間を狙ってやってくるのだが今日は妙だ。こんな昼間に徴収に来るのはおかしい。

 ベッドから抜け出して扉を開けるとそこにはこげ茶色のロングコートを着た中年の男と紺色のロングコートを着た若い男のふたりが玄関先に立っていた。

「相葉さんですか?」

「はい。そうですけど・・・・・」

 取り立て屋じゃない。じゃあ、誰なんだ?

 その疑問はすぐに吹き飛んだ。

「申し遅れました。我々はこういうものでして」

 中年の男と若い男が胸ポケットから取り出したのは革製の黒の手のひらサイズの手帳でその中には警察の勲章ともいえるマークと顔写真。そのマークには英語で堂々とpoliceと書かれていた。つまるところ、警察だ。刑事だ。

 ワタシは非常に焦った。心臓が爆発するかのように鼓動が早まり全身の血流が一気に早まり凍えるような寒さであるのにもかかわらず汗だくで頭皮がかゆくなる。手足が震えて言葉が出なかった。それを顔に表情として表に出さないようにこらえるのが必死だった。

 ついに警察がワタシのところまでたどり着いたのだ。殺人犯のところまで。

 どうする。逃げるか。どこにきっとこの団地周辺は包囲されている可能性が高い。平和なこの町を脅かす極悪の殺人犯を逃がさないためにも警察は全力でかかりにくる。いや、こんなこと前々から予想していたことだ。だから、落ち着け。平常心だ。

「な、何か用ですか?」

 冷静ことを進めろ。ワタシは何もやっていないを貫き通すんだ。そうすれば、警察だって。

「この人物を知っていますか?」

 若い刑事が胸ポケットから写真を取り出した。その写真には老夫婦が映っていて見覚えがないかとか聞かれるに違いない。他には何だ?この部屋に見覚えは?何が出てきてもワタシは知らないと貫く。

 そんなことを心の中で考えていた。しかし、若い刑事が見せてきた写真には写っていたのは驚きの人物だった。

「え?」

 写真には少女、山田が映っていた。

「彼女を知っていますか?」

 中年の刑事に聞かれてワタシは思わずうなずいてしまった。不意を突かれたからだ。

 何よりもなぜ彼女の写真を見せたのか理解できない。

「実は彼女の父親から子供と連絡が取れないと連絡がありまして調査しているのです」

 は?

「写真の彼女の方は生存が確認できましたが、残りの彼女の兄4人が未だに行方知れずなのです。妹さんに聞いてもここ数日会っていないということらしいのです」

「今から約1週間前に一斉に連絡が途絶えているんです。妹さんは何かを知っているはずなのですが、何も知らないの一点張りなんです」

「相葉さんは彼女とはどういう関係で?足取りを追っている時にあなたがふたりで某ショッピングセンターで買い物をしている姿が確認されているので何か事情を知っているのではないかと思いまして」

「そ、その事情ってなんですか?」

 ふたりの刑事は顔を合わせてどうするか目だけで数秒考えて中年の刑事が答える。

「我々は山田兄弟が何か事件に関わった可能性が高い。それに妹さんが関わっている可能性が高い。何日も姿を見ていないのに親に何も相談しないのはおかしい」

「相葉さん。あなたはその山田兄弟が消えた日付に山田妹さんに会っているんです。何かご存じないかと思い突然訪問させていただきました。本当にお騒がせしています」

 ふたりの刑事は頭を下げる。扉の陰に隠れていたワタシも気付けば外に出ていた。ワタシのことではなくて少女、山田について聞かれるなんて思ってもいなかったからだ。だが、ワタシは何も知らない。ワタシはただ少女、山田とデートをしただけだ。それ以上のことも以下のこともやっていない。

「すみませんがワタシは彼女と会ってまだ1週間たったばかりなんです。だから、その何も知らないんですよ。本当にすみません」

「・・・・・そうですか。なら、何か分かり次第ご連絡ください。連絡先はこちらです」

 そういうと中年の刑事は名刺を渡してきた。名前は毛利らしい。

「お騒がせしました」

 若い刑事が一言言って行ってしまった。

「一体、何をやったんだ。あいつは」

 冷静にことを振り返ってみれば家族に縛られていたあの子がどうしてあんな昼間に家事をしないでワタシといっしょにいたんだ。そして、次の日も遊ぼうとしていたんだ。家事をやらなければ兄たちに怒られる恐怖怯えていた彼女がのびのびと遊んでいたのはなぜか。

「まさか・・・・・」

 嫌なことを想像してしまった。

 ワタシは扉を閉めてすぐさま自室に戻りケータイで連絡する。もちろん相手は少女、山田だ。

 呼び出し音の後、すぐに少女、山田は電話に出る。

「もしもし、どうしたの~?」

 それは何も変わらない明るい彼女の声だった。でも、ワタシはまるで奇鬼眼(ききがん)で監視されているな感覚に襲われてその明るい彼女の声にすら恐怖した。

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