人を叩く;『借金』;見た目で人を量る畜生 その一
川辺の葦の茂みの中。
水草の茂みが揺れ、『ざあっ』と水しぶきの音がした。
秉核は川辺から這い出した。
空中からの偵察を避けて、数分間も水中に潜っていたのだ。
額の髪に絡んだ水草を払い、背中に掛けていた草鞋を履くと、再び川辺の釣り針爺さんの小屋へ向かって歩き出した。
現代の靴に比べれば、厚い草を編んだだけの代物で、上部には二本の草紐が付いているだけだった。数日履いた末に、秉核はほとんど履かなくなった。
そんなもので足の裏を擦られるより、泥の上を直接歩く方がましだったからだ。
田舎の地面はほとんどが柔らかい土なのだ。
(注)これは都市化が進みつつある時代の話で、土地は建築廃棄物に汚染されてはいない。
だが道路が国土の隅々まで伸びれば、コンクリートやガラス、陶器、赤レンガの破片が、田舎道の土のなかに散らばることになるだろう。
……
跳ねるように数百メートルを歩いた。
川辺の小さな小屋に到着する前に、
三百メートル離れた地点から、秉核は見てしまった。
きちんとした身なりの者たちが、川辺の自分の小屋に集まっている。
どう見ても、だらしない金持ちの下僕たちだ。
彼らは文句を言いながら、釣り針爺さんに早く出てこいと催促していた。
秉核は数十メートルほどゆっくり近づくと、音の魔法を使った。
次第に、この者たちが御園家の人間だと分かってきた。
魚を買いに来たのだ。
「魚は大きければ大きいほど、新鮮であればあるほどいい。釣り針爺さん、俺は先に現金を払ってるんだ。値引きは絶対に減らすなよ。さもなきゃ、その老いぼれ骨をバラバラにしてやるからな」
先頭の男が、ひどく凶暴な声で叫んだ。
「ご安心ください、旦那様、ご安心ください。この老いぼれでも、大きな魚は釣り上げられますよ」
釣り針爺さんは媚びるように言った。
釣り針爺さんは腰を曲げ、漁具を手に持って、何度もうなずき愛想笑いを浮かべながら、漁網を引きずって川辺へゆっくりと歩いていった。
彼らは強盗でも、何かを探りに来たのでもなく、ただ魚を買いに来たのだと分かった。
秉核はすぐさま跳ねるように走り出した。魚を捕るくらい、秉核にも手伝えると思ったのだ。
秉核は水中で音波を感知できる。
イルカのように大きな魚の居場所を掴み、数十メートル範囲の水中の暗流さえ感じ取れた。
しかもこの二ヶ月は毎日泳いでいたおかげで、水中で一度に五分は息を止めていられ、水流に乗って二百~三百メートルも漂える。
毎晩の水泳で難なく魚を一匹捕ってくるのは、実力ゆえだ。(だが秉核は御園家の鹿肉が好物なのだ。)
……
秉核が急いで駆け寄り、手を貸そうとした、その時。
しかし五十メートルほど離れたところで、釣り針爺さんは秉核に気づくと、すぐに頭を下げ、何度か咳をして秉核に手を振った。この仕草は秉核にあっちへ行けと告げていた。
秉核は心のなかで首をかしげた。だが数秒後、秉核はひどく驚きながら、その理由を知った。
「魚を買いに来たのではないのか?なぜだ?」
……
さっきまで釣り針爺さんに魚を獲れと急かしていた貴族の下僕が、急に軽薄な口調になった。
「おいおい、釣り針爺さん。外で作った息子のための童養媳でも拾ってきたのか?なかなか色っぽいじゃないか」
その言葉を聞いて、秉核は二ヶ月も切っていない髪をぐいと引っ張った。
川から這い上がったばかりで、髪はまだ乾いておらず、しなやかに耳にかかっていた。
釣り針爺さんはへつらうように笑った。そう言いながら、秉核に目配せをしていた。
「知りませんよ、あの子はどこの子です?私は知りません」
使用人の顔に残忍な笑みが浮かんだ。
彼は突然、老いた釣り人を掴みあげ、凄んだ。
「知らないだと?お前はあいつにどんな目つきをしていた?俺が盲人だとでも思ったのか?この老いぼれ、死にたいのか?」
その瞬間、傍らにいた二人の仲間が散開して取り囲み、下卑た笑みを浮かべた。
一方、秉核はただ呆然とそれを見つめ、心のなかで言葉を失っていた。
「さっきまで金を払って魚を買おうとしていたのに、俺が来た途端、どうしてこんな厚かましい顔になるんだ?」
秉核は突然、頭がショートした。
そして自分自身に毒づく。
「災いの元か?」
だがすぐに、自分を罵った。
「ちぇっ。ちぇっ、ちぇっ」
秉核は周りに群がる者たちへ視線をやり、独り言のようにつぶやいた。
「俺は厄介者だ。犬も食わぬ厄介者だ」
……
二分後。乱闘、いや、一方的な殴打が終わった。
秉核の目の前で、御苑家の下僕たちは全員地面に倒れていた。親分格の男は片手を軍用ダガーで地面に縫い止められ、哀れな悲鳴を上げている。ほかの者たちは腹を押さえながら、大きな石の上で拳銃を弄る秉核を怯えた目で見つめていた。
ほかの者に比べて、なぜあの親分だけが特に酷い目に遭わされたのか?
その親分だけが酷い目に遭ったのは、秉核との乱闘の最中に拳銃を抜こうとしたからだ。
ほかの者たちは皆、折り畳み式の軍用ダガーしか持っていなかった。
だから秉核は脅威度に応じて手加減した。ほかの者たちは腹を強く殴られて戦闘力を奪われ、軍用ナイフを没収されただけだった。だが銃を抜いたこの男は、秉核に指を四本へし折られ、両手と太ももまで軍用ナイフで刺された。
……
中位の戦闘職業者は桁違いに強く、騎士がなぜこの時代に師団級将校になれるのか、秉核にもようやく理解できた。
五メートル圏内での蓄力術の爆発的な速さは、ワニが獲物に襲いかかる最後の突進にも匹敵する。
同時に、神経活性術の加護がもたらす動きの速さと正確さにより、騎士はこれを発動すれば、軽く手を上げて、空を飛び回る蝿を指で三匹確実に仕留められる。
騎士の反応は、一般人とはまるで猫が蛇をもてあそぶほどの差がある。
中位の職業者が銃を手にすれば、五十メートル圏内のいかなる異変も制圧できる。
……
―――――




