城を出て、みじめな世界 その一
帝国の機械区画では巨大な歯車が回転し、機械塔の先端は雲に触れていた。
一条一条の電流が、塔の先端へ吸い込まれていた。
その機械塔の十六階の廊下で、二人が歩きながら会話を交わしていた。
「逃げた?」
スコットが尋ねた。
輕鈞エロート(秉核の次兄)は、この機械制御者が三度目の質問をするのを眺めていた。
エロートは確信に満ちた口調で言った。
「はい、彼は逃げました。四人に怪我を負わせ、医療区の城門の警備を突破して逃亡しました。今や帝都中が彼を探しています」
スコットが言った。
「あれほど厳重に監視されていたのに、どうやって逃げたんだ?」
エロートは言った。「三十メートルの高さのビルから直接飛び降り、そのまま病院のガウン姿で正面玄関を強行突破しました。そうそう、波輪家の人間を名乗っていました。後で波輪家に謝罪に行かなければなりません」
スコットが言った。
「医療区の医者は、手術を受けなければ彼が死ぬと伝えなかったのか?」
エロットは言った。
「伝えましたが、明らかに彼は信じていませんでした。病床から飛び起きたとき、一時的に郡主殿下を人質に取りました。もちろん、郡主を傷つけるようなことはしていません。これは、当時の彼の頭がまだしっかりしていた証拠です」
このとき、帝都の上流階級では『強力な幻覚薬が秉核の神経を錯乱させた』という説が流れていた。
スコットは言った。
「待ってくれ、確かか?彼は当時、薬物でコントロールされていなかったのか?」
エロットは言った。
「皇室も『誰かが彼に不適切な薬物を投与した』と疑っていて、憲兵隊が病室のすべての薬瓶を調べました。とにかく、この件はあまりにも異常です。逃亡時の彼は、機械技師らしくなかった」
スコットが問い返した。
「どういう意味だ?」
エロットは言った。
「私が得た情報によると、弟は壁を乗り越えるとき、非常に敏捷で、むしろ戦闘職者のようだった」
スコットは言った。
「ありえない。彼の法脈は週に二度チェックしている。標準的な機械師の法脈だ。事故がなければ、三年以内に機械制御者の状態を完成させるはずだ」
エロットは言った。
「だとすれば、魔核がすでに彼の法脈に干渉している可能性しかない」
スコットは先を急ぐように言った。
「急いで彼を見つけなければならない。でなければ、むやみに推測しても意味がない」
エロットは突然立ち止まった。
「どうやら君は彼の居場所を知らないようだ」
スコットが言った。
「君は私を探しに行こうと誘っているんじゃないのか」
エロットは首を振った。「いや、ただ『君が彼の消息を知っているか』を確認していただけだ。どうやら君は知らないらしい」そう言うと、エロットは立ち去ろうとした。
「輕鈞の御子息、帝国はこの件をどう見ているんだ?」
スコットは振り返って言った。
エロットは足を止めた。
低い声だった。
「誰が知っているだろうか」
秉核の過激な行動は、スコットとエロットに皇室の目的を疑わせた。
たとえば今回の不可解な襲撃は、まだ真相が明らかになっていない。そして秉核の奇妙な反応は、まるで帝国の何かを暴露したかのようだった。
人はつい陰謀論に走りがちで、帝国の階級制度はもともといくつもの黒幕を生みやすい。
ある者が黒幕への恐怖から推測し、恐慌反応を示すと、他の関係者も疑い始めてしまう。
二十一世紀の噂と同じように、真実はときに単純なものだ。
だが情報が少しずつ欠落していくうちに、人々は次々と推測を重ねる。
やがて、伝聞による噂のバージョンが生まれる。
……
四時間後
帝都の川下流五十キロのところで、小船に横たわった秉核は、力なく船縁に手をかけていた。船は秉核が岸辺で拾ったものだ。
おそらく捨てられたものだろう。
一晩の奔走で秉核の精力は尽き果て、注射された薬も効き始めていた。秉核はうつらうつらと、まどろみの中に落ちていった。
しかし秉核が再び目を覚ましたとき、自分は藁の寝床に横たわっていた。
家の中には、塩魚の生臭い匂いが漂っている。
秉核はこの家を見回した。木で組み立てられた掘っ立て小屋だ。秉核は魔法を発動させ、自分が川からそう遠くない場所にいることを確認する。
ここはおそらく、帝国内のありふれた貧しい家だろう。
ドアが押し開けられ、入口の強い光の中から一人の男が入ってきた。扉が再び閉まったとき、秉核はようやくその男の姿をはっきりと見ることができた。髭を伸ばしっぱなしにした老人だった。老人は秉核が起き上がるのを見ると、口を歪めて褐色に半分ほど腐った歯を見せながら言った。
「坊や、目が覚めたのか?」
秉核は立ち上がり、貴族としての礼儀で習慣的に感謝を述べた。
「おじさん、お助けいただき感謝します」
老漁師は驚いたように秉核を見て言った。
「坊や、体の調子はどうだ?まず魚の粥を少し飲むといい」
……
一分後、秉核は皿の中の闇料理を見て、複雑な表情を浮かべた。魚のスープはひどく生臭く、焦げた黒いものが浮いている。小麦粉の焦げた塊のようだった。前世のオタクの経験からすると、これは鍋をまったく洗っていないときに起こる現象である。秉核は薄暗い部屋を見回し、ため息をついた。勇気を出して、皿の中身を口に運ぶ。しかし胃に入った途端、かえって空腹に火がついた。それでも秉核は、もっと食べたい衝動をぐっと抑えた。
……
会話を通じて、秉核は老漁師の名が「釣り針」であること、そしてここが帝国の白琳沼沢近くの川であることを知った。
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