↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰向  作者: 凛光穂
第三巻 緊迫の逃亡?刺激的な逃避行!いたずらな旅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/200

慌てふためく過激さ その二

 ビルの入口には複数の兵士が警備しているが、窓の外なら話は簡単だった。


  ……


 視点は、ビルの外へ移る。


 金色の骸骨ビルの眼窩にあたるガラス窓が粉々に砕けた。秉核(ヘイカク)は骸骨の眼窩に沿って転がり落ちる。秉核(ヘイカク)は骸骨の頭部を利用し、眼窩の下の斜面で衝撃を大きく緩和した。


 突然、前方へ飛び跳ねる。ビルの下の大木の枝を掴んだが、ガシャッという音とともに枝が折れ、秉核(ヘイカク)は幹に沿って地面へ落ちた。


 まるでスタントマンのような一連の動きだった。


 数メートル離れたビルの入口の警備員たちは、この光景を目撃して呆然とした。

 このとき、警備員たちはまだ状況を把握しておらず、近寄ろうとしなかった。


 医師会館の警護を担う者たちの本来の職務は、会館を守ることにある。

 会館から人が落下するのを見たとき、まず取るべき反応は、館内の医療担当者に救護の職務を果たさせるよう通知することだ。

 直接介入することではない。


  ……


 そしてこのタイムラグの間に、秉核(ヘイカク)は体についたガラス破片を振り払い、裸足のまま速やかに扉へ向かって走り出した。

 会館の窓からは、「逃げるな、止めろ」という叫び声が聞こえた。


 そのときになってようやく、会館内の戦闘職の者たちが反応し、すぐに飛び出してきた。拳銃を構えた者が一発撃つ。激しい銃声のあと、秉核(ヘイカク)はよろめき、ふくらはぎに傷口が現れた。


 しかしすぐに、ふくらはぎの出血は減り始めた。消しゴム能力が途切れた繊維をつなぎ直し、秉核(ヘイカク)は狂ったように走り続けた。


 銃声が響いたあと、再び叫び声が聞こえた。

「停火せよ、停火せよ」

 この突然の命令に、下にいた警備員は一瞬呆然とし、思わず窓を見上げた。

 ひどく困惑していた。


 そしてちょうどそのとき、秉核(ヘイカク)は敏捷な子猫のように素早く壁を乗り越え、医療院をあとにした。今の秉核(ヘイカク)の頭にある言葉は、ただ一つだけだった。

「逃げる、まずは逃げる」


  ……


 医療牧区の街路で、白い病衣を着た少年が走り回り、周囲の人々の視線を集めた。何人かが止めようとしたが、それはただの同情から手を貸したいというだけのことだった。しかし秉核(ヘイカク)はすべてを避け、彼らを驚かせて振り返らせたものの、大半の者は追いかけてこなかった。

 所詮、自分には関係のないことだったからだ。


 秉核(ヘイカク)は速やかに上城区と下城区の間の関所の入口へやって来た。秉核(ヘイカク)は関所の入口の兵士たちを見て、一瞬立ち止まる。そしてほんの一瞬ためらっただけで、まっすぐ城門へ歩き出した。医療牧区の城門の兵士たちも、明らかに秉核(ヘイカク)に気づいていた。(この時点で引き返して逃げれば、逆に捕まることになる)


 秉核(ヘイカク)が近づくと、城門の小隊長がすぐにやって来た。


 守備区域の兵士に向かって、秉核(ヘイカク)は言った。

「私は波輪(ポーレン)・カイス、機械院の学生だ。これから下町で用事を済ませ、機械区に戻る」


 門番の士官は一瞬戸惑い、それから丁寧に頭を下げた。

「波輪(ポーレン)の坊ちゃん、身分を証明する書類はお持ちでしょうか」


 秉核(ヘイカク)は何も入っていない病衣の裾を撫でてみた。手首には皇帝陛下から賜った腕輪があるだけで、身分証明書など何もない。(試練終了後、皇帝陛下が秉核(ヘイカク)に与えたものだ。)

 だが、その腕輪を見て兵士の目が輝いた。

 これは帝国天体塔の通行証だったのだ。


 秉核(ヘイカク)は、これが城門の兵士に通じるかどうか確信が持てなかった。だが兵士の表情を見て、秉核(ヘイカク)は効き目があると悟り、安堵の息をついた。

 実際、この城門の衛兵はそれを知っていた。

 意味は分からなくとも、医療区に入る多くの大物の手首に、同じ意匠の腕輪が光るのを何度も見ていたのだ。


 秉核(ヘイカク)は言った。

「まだ取り出していません。私は急用があるんです、とても緊急の用事が。そうでなければ、こんなに焦ったりはしません」


 この衛兵は一瞬呆然として言った。

「坊ちゃん、どうか落ち着いてください。どんなに緊急のことでも、私たちはあなたの身元を確認しなければなりません」


 秉核(ヘイカク)は怒りを装って言った。

「確認はあなたたちの仕事だ、ゆっくり確認すればいい。今すぐ信用できないなら、一組の者を私の護衛につけてくれ。そしてあなたたちはここでゆっくり確認すればいい。私の用事を遅らせたら、その責任はあなたたちには負えないぞ」


 このとき、秉核(ヘイカク)の頭の中ではEQが異常な速さで回転していた。

 向かい合う相手の心理を、全力で読み取ろうとしていた。


 そのため秉核(ヘイカク)は、できる限り横柄な道楽者のふりをして、目の前の守備兵に圧力をかけようとした。

 自分には不審な点が多すぎ、疑われる要素が多すぎたからだ。

 一歩も引かぬ姿勢で、この小人物たちの思考を疑いのほうへ向けなければ、関所を抜け出す機会などまったくない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。