慌てふためく過激さ その二
ビルの入口には複数の兵士が警備しているが、窓の外なら話は簡単だった。
……
視点は、ビルの外へ移る。
金色の骸骨ビルの眼窩にあたるガラス窓が粉々に砕けた。秉核は骸骨の眼窩に沿って転がり落ちる。秉核は骸骨の頭部を利用し、眼窩の下の斜面で衝撃を大きく緩和した。
突然、前方へ飛び跳ねる。ビルの下の大木の枝を掴んだが、ガシャッという音とともに枝が折れ、秉核は幹に沿って地面へ落ちた。
まるでスタントマンのような一連の動きだった。
数メートル離れたビルの入口の警備員たちは、この光景を目撃して呆然とした。
このとき、警備員たちはまだ状況を把握しておらず、近寄ろうとしなかった。
医師会館の警護を担う者たちの本来の職務は、会館を守ることにある。
会館から人が落下するのを見たとき、まず取るべき反応は、館内の医療担当者に救護の職務を果たさせるよう通知することだ。
直接介入することではない。
……
そしてこのタイムラグの間に、秉核は体についたガラス破片を振り払い、裸足のまま速やかに扉へ向かって走り出した。
会館の窓からは、「逃げるな、止めろ」という叫び声が聞こえた。
そのときになってようやく、会館内の戦闘職の者たちが反応し、すぐに飛び出してきた。拳銃を構えた者が一発撃つ。激しい銃声のあと、秉核はよろめき、ふくらはぎに傷口が現れた。
しかしすぐに、ふくらはぎの出血は減り始めた。消しゴム能力が途切れた繊維をつなぎ直し、秉核は狂ったように走り続けた。
銃声が響いたあと、再び叫び声が聞こえた。
「停火せよ、停火せよ」
この突然の命令に、下にいた警備員は一瞬呆然とし、思わず窓を見上げた。
ひどく困惑していた。
そしてちょうどそのとき、秉核は敏捷な子猫のように素早く壁を乗り越え、医療院をあとにした。今の秉核の頭にある言葉は、ただ一つだけだった。
「逃げる、まずは逃げる」
……
医療牧区の街路で、白い病衣を着た少年が走り回り、周囲の人々の視線を集めた。何人かが止めようとしたが、それはただの同情から手を貸したいというだけのことだった。しかし秉核はすべてを避け、彼らを驚かせて振り返らせたものの、大半の者は追いかけてこなかった。
所詮、自分には関係のないことだったからだ。
秉核は速やかに上城区と下城区の間の関所の入口へやって来た。秉核は関所の入口の兵士たちを見て、一瞬立ち止まる。そしてほんの一瞬ためらっただけで、まっすぐ城門へ歩き出した。医療牧区の城門の兵士たちも、明らかに秉核に気づいていた。(この時点で引き返して逃げれば、逆に捕まることになる)
秉核が近づくと、城門の小隊長がすぐにやって来た。
守備区域の兵士に向かって、秉核は言った。
「私は波輪・カイス、機械院の学生だ。これから下町で用事を済ませ、機械区に戻る」
門番の士官は一瞬戸惑い、それから丁寧に頭を下げた。
「波輪の坊ちゃん、身分を証明する書類はお持ちでしょうか」
秉核は何も入っていない病衣の裾を撫でてみた。手首には皇帝陛下から賜った腕輪があるだけで、身分証明書など何もない。(試練終了後、皇帝陛下が秉核に与えたものだ。)
だが、その腕輪を見て兵士の目が輝いた。
これは帝国天体塔の通行証だったのだ。
秉核は、これが城門の兵士に通じるかどうか確信が持てなかった。だが兵士の表情を見て、秉核は効き目があると悟り、安堵の息をついた。
実際、この城門の衛兵はそれを知っていた。
意味は分からなくとも、医療区に入る多くの大物の手首に、同じ意匠の腕輪が光るのを何度も見ていたのだ。
秉核は言った。
「まだ取り出していません。私は急用があるんです、とても緊急の用事が。そうでなければ、こんなに焦ったりはしません」
この衛兵は一瞬呆然として言った。
「坊ちゃん、どうか落ち着いてください。どんなに緊急のことでも、私たちはあなたの身元を確認しなければなりません」
秉核は怒りを装って言った。
「確認はあなたたちの仕事だ、ゆっくり確認すればいい。今すぐ信用できないなら、一組の者を私の護衛につけてくれ。そしてあなたたちはここでゆっくり確認すればいい。私の用事を遅らせたら、その責任はあなたたちには負えないぞ」
このとき、秉核の頭の中ではEQが異常な速さで回転していた。
向かい合う相手の心理を、全力で読み取ろうとしていた。
そのため秉核は、できる限り横柄な道楽者のふりをして、目の前の守備兵に圧力をかけようとした。
自分には不審な点が多すぎ、疑われる要素が多すぎたからだ。
一歩も引かぬ姿勢で、この小人物たちの思考を疑いのほうへ向けなければ、関所を抜け出す機会などまったくない。




