慌てふためく過激さ その一
冷たい液体が針から血管に入り、急速に広がっていく。
薬液が体内に入り込む感覚が、はっきりと感じ取れた。
秉核は、自分の体の鋭敏さが前例のない域に達していることに驚いた。だがすぐに、薬液の拡散とともに痺れるような感覚が広がり始める。神経の感知を大きく遮断するこの麻酔感が、銃焰秉核の焦燥を、ガソリンの上に燃え上がる炎のようにかき立てた。
相手が自分に何をしようとしているのか、分からない。主導権が他人の手に渡ったとき、秉核は、慌てふためいた推測が冷静な分析をすべて吹き飛ばしてしまうことを恐れた。
……
秉核は冷静に分析した――帝国上層部とて、自分には何もできないはずだ。
しかし、父も兄も、この世界で信頼できる人々もいない状況では、秉核は勝手な推測を抑えられなかった。
スターリンでさえ、かつてはドイツが二正面作戦を敢えてするはずはないと自信満々に判断していた。
ソ連への全面攻撃など、ありえないと考えていた。
ある禿げ頭は日本の国力不足を分析し、満洲を併合すれば満足して消化するだろうと考えた。
だから、事後の冷静な分析はできても、事前にどれだけ証拠を積み上げて未来を予測しても、すべてを信じてはいけない。
帝都の皇帝や将軍、大貴族の子弟の前で弱気を見せ、妥協したからといって、秉核が本当に彼らを信じたわけではない。今、この手術台の上で、秉核は何も信じていない。
……
もともと魔力浸食区域を抑えていた消しゴム能力が、このとき素早く発動した。まるで時が逆戻りするかのように、細胞内に拡散していた麻薬の進行が抑えられていく。そして秉核の体内の法脈システムは大きく変わり、機械師から兵士職の法脈へと急速に転換していった。
蓄力術、骨格強化術、皮膚感音術……兵士職の法脈システムが、一つひとつ骨格や筋肉、皮膚の中で密かに起動していった。秉核は呼吸を緩め、周囲の人間の警戒心を解いていった。
……
病室では何人もの医療師が忙しく動き回っていた。
部屋中に消毒液の匂いが充満していた。
ベッドサイドで、聞き覚えのある声が響いた。秉核は思わずまぶたを動かし、外を覗こうとした。
「主治医療師はあと六分で到着します。今は薬針で彼の体脈を固定しておいてください」
だが、わずかにまぶたが動いただけで、部屋の中の人々に気づかれてしまった。
もちろん、部屋にいた医師の一人は、麻酔が効いていないことに気づいていた。
そう言うと、誰かの手が伸びてきた。明らかに秉核のツボを押さえ、魔力で強制的に気絶させようというのだ。
「どうなってるんだ、なぜ麻酔が成功しなかった?」
そして秉核は、その部屋で聞き覚えのある声の主をはっきりと見た。部屋の者は全員マスクを着けていたが、その一対の目を見ただけで、秉核には誰なのかが瞬時に分かった。
帝国図書館で会ったあの少女だ。
名前は知らないが、その身分ははっきりと分かっていた。
だから秉核には知り合いに会った安堵など微塵もなく、むしろ身の毛もよだつ思いがした。脳裏で一つの声が炸裂する。「皇室が私を解剖しようとしている」今や、どんな些細な手がかりも、秉核に無数の可能性を妄想させた。
すでに弓の音に怯える鳥も同然だった。
「何?自分の法脈が回復できると皆に言うのか?それは解剖台に上がる理由を一つ増やすだけだ」
……
医師の指先が自分の皮膚に触れた。神経の感知を乱す魔法を解き放とうとした、その瞬間。
秉核は死んだふりをしていた手を上げ、逆にその指を掴んだ。
術者がまだ驚きの色を見せる間もなく、彼は飛び起きた。
兵士職階の力を発揮し、五十キロの金属製ベッドを十センチもずらした。
金属と床が激しく擦れる音が、医療ホール全体に響き渡った。
秉核はメスを掴むと同時に少女を捕らえた。
悪役さながら、刃を少女の首に当てる。
「近づくな!」
大声で叫んだ。
「銃焰さん、何をしているんですか?」
人質に取られた少女は一瞬慌てたが、すぐに冷静さを取り戻し、そう叱責した。
秉核は狂ったように叫んだ。
「ごめんなさい、私はあなたの練習台にはなりたくない。私を行かせて」
少女は呆然とつぶやいた。説明する間もなく、彼女は秉核に押しのけられた。
「練習台?帝国は……」
そばにいた医師は、倒れてきた帝国の王女を支えるのに忙しかった。
反動を利用して、秉核の体は窓際まで後退し、ガラス窓を割って外へ飛び出した。秉核は入口から逃げるつもりはなかった。
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