恐怖のもとで その二
皇帝は手を振り、情報屋たちに立ち去るよう合図した。人が半分以上いなくなった。
皇帝は傍らにいる白い服の医牧師に尋ねた。
「あの子はどうなった?」
「銃焰家の若き機械師、体内の魔石はすでに取り出しました」
医牧師が答える。
皇帝は机を叩いた。
「私は彼の体のことを聞いている。魔石のことではない」
医牧師が言う。「陛下、魔鉱獣の魔石は浸染性が極めて強く、強い単体還元効果があります。銃焰秉核は本来、その場で死ぬはずでした。しかし今は死んでいません」暗に示しているのは、秉核が命を取り留めただけでも幸運であり、それ以上を望むべきではない、ということだった。
皇帝が問いただす。
「彼は今、一体どういう状態なんだ?」
医牧師が告げる。
「陛下、現在侵食している部分は、組織の大規模な壊死を引き起こす可能性があります」
「お前の提案は?」
「直ちに大規模な切開手術を行い、主要な法脈を大量に切除すべきです」
「最終的にどうなる?」
「一命を取り留めるのが最良の結果です」
「銃焰の思芬に伝令を送れ。彼に決断させよ」
室内は静まり返り、皇帝の指が木製の肘掛けを軽く叩く音だけが響いた。
数秒後、皇帝はひどく残念そうに顔を上げて言った。
……
魔核の説は上古に由来する。
それは、天然の魔法種族が体内に持つ法能の中核である。
人類の炭素を基盤とした身体は、そもそも魔法を放つのに適していない。
この種の魔法を放つ結晶核は、人類には適合しない。
太古の魔法種は、ある意味ですでに炭素系生命の範疇を超えている。
例として竜を見れば、現存する化石によると、竜の骨格には大量の金属が含まれている。人類の骨格はカルシウム質だ。
竜のミイラからはジルコニウムやトリウムが驚くほど検出されており、これらの元素が竜の体内に魔法の導管を築いている。
竜の体重は十トンを超え、成長には千年、寿命は万年に達する。
竜の骨で作られた武器は、当時の人類の製鉄技術による武器の材質よりも優れていた。
エルフ(主に考古学上の墓から発見される)の骨格には、水晶構造のネットワークが満ちている。
ドラゴンの体ほど魔法元素に耐える力は強くないが、人間よりはるかに強い。
エルフが成人するには、百年を要する。
上古の古き魔道士の時代には、魔法核が道具としてよく使われていた。
古き魔道士たちの法脈は太く、魔法核の影響は小さかった。
だから魔法核に触れても、クルミのように扱うことができた。
しかし現代の職業者は、素肌で魔法核に触れることを禁じられている。
触れる場合でもごく短時間にとどめ、手袋を着け、触れたあとは速やかに鉛入りの箱に密封しなければならない。
職業者が魔法核に長時間触れていると、体内の精密な法脈が乱れるからだ。
【北方の銃焰領地。思芬伯爵は腰掛けに厳然と座り、呆然とした目をしている。帝都からの知らせを聞いたのは明らかだ。】
思芬は北方の古い知り合いに連絡を取った。
だが数分後、水晶にようやくスコットの顔が浮かび上がった。
スコットの姿を見ると、思芬は平静を装って問いかけた。
「いったいどうしたというのか?」
スコットが言った。
「知るものか? 陰謀だ。帝国を狙った陰謀だ」
思芬は問い詰めた。「誰の陰謀かなどどうでもいい。私は、なぜ彼(秉核)だけがこんな状況に陥ったのかを知りたいのだ。駅構内の生徒たちは全員避難したのではないか」思芬はもはや感情を抑えきれず、言葉に焦りが滲んでいた。
スコットは平静を保ち、なだめるように説明した。
「はい、確かに撤収すべきでした。しかし現場にいた者には現場の判断があったのです。ましてや、戦闘の終盤にこんな不測の事態が起こるとは誰にも予想できませんでした」
思芬が問う。
「手術後の法脈への影響は?」
スコットが答えた。
「高エネルギーの魔核が体内に侵食すると、主脈に甚大な損傷を与える。外科手術が必要だ」
思芬は一瞬呆然としたが、突然、ふふっ、ふふっと不気味に笑い出した。
「つまりわが家は機械制御者を一人失うというわけね?」
スコットはため息をついた。
「手術するかどうかは君が決めることだ。彼が生きるか死ぬか。それは君の選択次第だ」
足かけ二分の後、思芬は極めて重い筆を取上げ、通信文に同意の署名をした。(通信書のなかで、スコット側のリモートペンが思芬の筆跡と同期し、手術同意書に同意を記入した。)
【翌日の夜明け】
眠たげな目をこすりながら、秉核は白い医師服の一団が自分の部屋に入ってくるのを見上げた。
白いゴムチューブが金属のスタンドに掛けられ、数人がためらうことなく自分を押さえつけた。
針、注射器、さまざまな医用ラベルの薬瓶。
自分にメスを入れようとする医師たちを前に、秉核の心には巨大な恐怖が湧き上がった。
秉核は叫んだ。
「何をするつもりだ? 何をする気だ? 私は貴族だ。お前たちの解剖実験の対象ではない!」




