恐怖のもとで その一
夜の闇のなかで、爆発の光と音はひときわ目立った。
耳をつんざくようだった。
良心砲の大型爆弾が列車を粉々に吹き飛ばした。
数両の車両がガラクタのように崩れ落ちた。
この時代はまさに、爆薬が王様であることを証明した。
列車は爆風で線路の上に横倒しになった。
魔鉱獣は自重を支えきれず、地面へ散乱して大きな水たまりのようになる。
砂を運ぶトラックが横転したときのような光景だった。
大量の粒子システムが貨物倉から散らばり、黒い砂浜のようになった。
粒子の群れのなかには、機械構造や、白い蒸気を噴き出すボイラーが見えた。銃身もあった。
さらに三十ミリ口径の野戦砲まで数門あった。
とりわけその二門の野戦砲は、駅の人々を震撼させた。
地面に散らばった魔鉱獣が集結を求めた。大量の砂粒が蠢き始め、機械を再び包み込もうとする。
ほんの数秒のうちに、粒子の群れは巨竜の姿を形作った。
大口からは、弾丸ほどの粒子を含んだ灼熱の蒸気が噴き出す。
近づこうとする者たちを次々と傷つけていった。弾丸の運動エネルギーは、強力なスリングショットに匹敵する。
両翼を持つ巨竜は咆哮しながら蒸気を吐き出した。現場の全員がこれは偽物で粒子でできていると知っていながらも、その凶暴な外見は実に生き写しで、誰も近寄れなかった。
しかし数分後、分厚い装甲をまとった警備隊が燃焼車を押して到着した。
小型車両が慣性のままにこの大型魔鉱獣へ突っ込み、大量の燃え盛る木炭を粒子の塊に浴びせかける。
燃え上がる炎の熱のなかで、巨竜は崩れ落ちた。
大量の黒い粒子がもがきながら形を取り戻そうとした。
高熱の干渉によって磁力を失い、最終的に粒子のまま崩れ去った。
こうして帝国駅の警備隊の奮戦により、帝国陸軍が到着する前に、この大きな魔鉱獣は始末された。
……
そこで終わるはずだった。
だが駅の警備隊は、危険を恐れぬ精神を示そうとした(上級者が到着したあとの見せ場のために)。
戦闘が終わるとすぐに転倒した列車を点検し、手がかりを探し始めた。
一方、秉核は探索兵の後ろについていた。
好奇心に駆られて、あちこちを見回したり、ものを拾い集めたりしていた。
秉核は小石の山のような魔鉱獣の残骸の上に乗った。童心を忘れない秉核は、小石の上を歩くのが面白く、この大きな石の山を踏みしめるたびにパリパリと鳴るのがとても新鮮だった。秉核は数歩走って残骸の高いところに登り、跳ねてみた。細かな粒子が足元で柔らかく滑り、カサカサと音を立てる。その音は秉核に前世の「鳴沙山」(西北甘粛省敦煌地区の景勝地)を思い出させ、つい何度も(悪戯っぽく)踏みしめてしまった。
数回踏むと、すぐに残骸が反応した。次の瞬間、残骸から粒状構造の鋭い触角が飛び出し、秉核の腹部を貫いた。
その鋭い触角の先端には魔晶核が付いていた。
腹部の激痛と大量出血のパニックのなかで、秉核の心に浮かんだ言葉はただ一つだった。
「なんで俺はこんな余計な真似をしたんだ」
秉核は砂の上に倒れた。現場の混乱のなか、秉核は救急車で運ばれていく。数分後、軍医が詳しい検査を行い、当然のように秉核の腹部に激しい魔力の源を発見した。
【帝国医療牧区、その中央にある金色の骸骨を象った標識の建物】
その年、秉核がこの建物を初めて見たとき、ここが帝国の医療師を養成する場所だとはとても思えなかった。
むしろ現代風の邪教の建物のように見えた。
その後、次第に帝国の医療師の文化を受け入れるようになった。
医療とは死神との取引であり、二十一世紀の地球の医療や解剖に似ている。
人体組織を薄く切って調べるのは、神賜時代から伝わる医療の研究法だった。
骸骨の建物の意味は、メスで死神から命を取り戻すことにある。
秉核はこの骸骨の建物の意味を理解した。それでも帝国医療師の本拠地を、ひどく忌み嫌っていた。(秉核は言う。「この地区は魔王の城のように建てられている」)
秉核は帝都で過ごした一年の間、一度も医牧区に足を踏み入れたことがなかった。
病気になっても、どうにかやり過ごそうと考えていた。
もちろん、今は——
白い病衣を着た秉核は、ベッドの上で嘆息した。
「恐れれば恐れるほど、それが現実になる」
病室は全体が白かった。白いタイルが敷き詰められ、その隙間は白い陶器の釉薬で埋められている。
白すぎて不気味だった。
扉は機械式のシャッターで、その造りは二十一世紀の高度な隔離室と同じだった。
秉核はこの部屋で「自分は病気ではない」と叫びたい衝動に駆られた。だが実際には許されない。そう叫べば、外にいる医牧師たちが記録用紙に「銃焰秉核の脳に異常の疑い」などと書き込むのは明らかだった。
緊張の三十分が過ぎ、ガチャンという音とともに取り出された赤い魔核が金属のトレイに落ち、医師に持ち去られていった。今、秉核は包帯を巻かれた腹部の傷を見つめながら、不安げに病室で横たわっていた。
……
駅の事件から四時間後。
夜中の二時を過ぎたころだった。
天体塔の最上階には、明るい灯りがともっていた。
パジャマ姿の皇帝陛下は、紙の報告書を乱暴に置き、感情を交えずに言った。
「つまり、正体不明の集団が列車を制圧し、魔鉱獣を積み込み、誰にも気づかれずに帝国の二十を超える関所を通過した、ということか?」
広い部屋では、三つの情報部門・十六の情報組の上層部員たちが、そろって頭を下げて静かに立っていた。
部屋の空気は、数ヶ月前の最も冷たい風よりも、さらに凍りつくように冷え込んでいった。
皇帝の一見穏やかな言葉には、いくつもの疑問が隠されていた。
そしてそのどれもが、答えにくいものばかりだった。
帝国最高憲兵総署署長が口を開く。
「陛下、関係者の調査によりますと、誘導術の痕跡が発見されました」
(誘導術とは中位クラス以上の魔法で、戦時に必要に応じて使われ、神経の一部を麻痺させるもの。
上古魔法である狂化術や魅惑術を改変したもので、具体的には、短期間だけ他者の言葉に対する論理的な判断力を低下させ、術者の言葉の論理に従って思考させる効果がある)
皇帝が言う。
「誘導術の効果はせいぜい一、二分程度の精神干渉だ。沿線には千人もの人間がいた。その全員の頭が駄目になったというのか?」
署長が答える。
「彼らの血液を採取したところ、誘導術を受けただけでなく、薬物の影響も受けている可能性がわかりました」
皇帝は、目の前の黒い制服の憲兵隊長を見つめながら言った。
「いったいどんな薬だ」
このスパイ組織の長、許寧が言った。
「幻覚成分が含まれています。具体的な成分は、実物がないため不明です。しかし、こちらが見つけました」
許寧は懐から箱を取り出した。
箱のなかには蜂ほどの大きさの昆虫がいて、その体には制御系の器官が備わっていた。
――馴霊師(中位職業)は、一部の生物を操ることができる。
大陸には、大型動物に幻覚を引き起こす能力を持つ昆虫もいる。
皇帝はそれを見て長いこと黙り込み、手を振って言った。
「引き続き調査せよ。魔鉱獣がどうやって車両に乗り込んだのかも調べよ。はっきりするまでは報告するな」
……
―――――




