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帰向  作者: 凛光穂
第二巻 機械師の心

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爆発、爆発、爆発 その二

 秉核(ヘイカク)はアンクラの表情を見て、半年前にスコットの部屋で顕魔石の像を受け取ったときの光景を、すぐに思い出した。

 あのとき顕魔石には、スコットが法脈を現した際に体に生じた、多くの曖昧な領域が映し出されていた。


 このとき、秉核(ヘイカク)は、この引率教官がなぜ自分にそんな言葉をかけたのかを、すぐに理解した。


 スコットの法脈の誤表示は、彼が若いころ冒険派であったこと、そして結局は失敗したことを示していた。アンクラもまたその時代の人間で、秉核(ヘイカク)がスコットの若い思想に染まることを心配していた。

 悲劇が繰り返されるのを懸念して、それとなく示したのだ。

 もちろんそれは単なる示唆にすぎない。人間関係の都合もあって、アンクラはスコットの名を直接口にしなかった。


 ここまで推測した秉核(ヘイカク)は、アンクラを見ながら心の中でつぶやいた。「アンクラ先生は、なかなかいい人だ」それから秉核(ヘイカク)は遠くの魔鉱獣を指差し、いくつかの提案をした。


 秉核(ヘイカク)の提案を聞いたアンクラは、うなずいた。秉核(ヘイカク)に準備するよう合図した。


 倉庫に入ると、秉核(ヘイカク)は警備員たちに声をかけた。

「君たち、八人を選んで、倉庫の金属ドラム缶を運び出してくれ」


  ……


 二十分後、無軌道の蒸気自動車が牙を剥いた。

 車体から幾本もの銃身が現れた。

 密集した弾丸が、線路脇の兵士たちめがけて撃ち出される。

 兵士たちは列車の上の魔鉱獣を妨害するため、全力を尽くしていた。


 しかしそのとき、列車の後方では急造の自爆用小型車両が接近しつつあった。


 しかし、この小型車は魔鉱獣に十五メートルも近づけなかった。

 粒子でできた無数の触手が、その行く手を遮った。


 自爆小型車は触手に捕らえられ、あっけなく粉砕された。

 機械式雷管は液体酸素と金属を爆発させたが、爆発は起きなかった。

 花火のような明るい火花が噴き出した。

 それは夜の線路脇に積まれた雑物に引火し、大規模な野火となった。

 漆黒の夜を明るく照らし、あたりの空気を灼熱に変えた。


 線路の両側に這うように待機する警備員たちは、汗まみれだった。

 熱さと焦りに苛まれていた。


  ……


 正体不明の機械を満載した魔鉱獣列車が、駅に進入しようとしている。

 それを見て、駅の警備員たちは焦りと不安を募らせていった。


 この鋼鉄の怪物がひとたび駅に入り、建物の群れへ入り込む。

 その陰に潜んで立てこもれば、事態は厄介だ。

 明らかに複雑な行動目的を持つ魔鉱獣が、武器を携えて建物の掩蔽壕に籠もるのだから。


 帝国陸軍は大量の重火器を投入して強襲しなければならなくなる。

 そうなれば帝国の鉄道拠点は数日間機能を止め、交通が遮断される。

 そのなかで、さらに何か悪いことが起きるかもしれない。

 帝国が責任を追及すれば、鉄道警備隊が責任を負わされることになるだろう。


  ……


 魔鉱獣が改造した金属製の車両は、依然として駅への接近を続けていた。


 倉庫のなかの兵士たちと機械技師たち(秉核(ヘイカク)もその一人だった)は、金属製の樽と、急ごしらえで改造した弾薬を携えて倉庫から出てきた。


 倉庫を離れると、秉核(ヘイカク)と兵士たちは魔鉱獣列車の側面から後方へ素早く回り込んだ。


 積み上げた丸太やゴミの山を掩体に利用し、位置を見定めて穴を掘った。

 太い金属の樽を、ひとつずつ立てていく。

 樽の帯金はひどく粗雑で、明らかに間に合わせの溶接だった。

 しかし、樽の中身は乏しくなかった。

 石炭粉と液体酸素を混ぜた爆薬。そして肥料を急造した発射薬が詰められていた。


  ……


 最先端のものでも、いいタイミングで現場に到着しなければただの飾りだ(たとえば大和戦艦)。

 いつも現場で役に立つものこそが吉祥の印なのである(たとえば、沈没する仲間をいつも救助する雪風号のように)。


 今、帝国の先進的な武器である野戦砲や二足歩行機甲が間に合わない。秉核(ヘイカク)の提案とアンクラ教官の黙認により、良心のない砲のようなものが急造されて代用された。


 魔鉱獣が駅から六十七メートルまで近づいた。

 簡易砲兵陣地が発砲した。


 鋼鉄の樽から炎が噴き出した。純酸素の金属缶が、次々と宙へ放り投げられる。

 缶は弧を描いて蒸気列車の近くへ落ちた。

 あるものは線路脇の路盤に、あるものは二十メートル先の土塁に直接ぶつかった。


 しかし密集していたおかげで、少なくとも一発は客車に命中した。


 鋼製のシリンダーが車両に突き刺さった。

 直後、凄まじい衝撃とともに、蒸気機関車全体が噴水のように大量の粒子を噴き出した。

 同時に、蒸気機関の部品や銃身が吹き飛ばされた。

 さらには錆びた青銅の前装砲(少なくとも六百年前の骨董品だ)まで。


  ……


 五キロメートル離れた丘の上で、二人の人影が前方の爆発の閃光を見つめていた。

 女性の声が疑問を投げかけた。

「あれは何? 射程のごく短い重砲?」


 男性が言った。

「おそらく機械工が急造した爆薬投射装置だろう。任務は失敗だ。急いで撤退しよう」

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