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帰向  作者: 凛光穂
第二巻 機械師の心

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82/201

爆発、爆発、爆発 その一

 遠方の列車が再び汽笛を鳴らした。

 学校の教官と警備担当の将軍は、すばやく対策を協議する。


 対策はこうだ。

 線路を爆破して列車の足を止め、帝国正規軍が到着して処理するのを待つ。


 大佐の命令で、駅の軍事部隊が動き出した。


 アンクラもまた、爆薬の調合を始めた。指導教官の後ろについて行った秉核(ヘイカク)は、当初、不思議でならなかった。

 ろくな化学設備もない状況で、アンクラはどうやって爆薬を調合しているのか。


 だが数分後、倉庫の中で秉核(ヘイカク)は自分の額を軽く叩いた。

 機械制御者という中位職業者の手段を、本当に甘く見ていたのだ。


  ……


 アンクラ教官はその場で材料を調達した。倉庫から線路用の台車を見つけ出す。


 線路の上を高速移動できる台車(人力で揺らして線路を巡回する車両)に、伝動装置が取り付けられ、ベルトで機械軸とつながっていた。

 その機械軸の先には、やかんほどの大きさの蒸気機関が据えられていた。


 アンクラは物質分離術を展開した。

 魔法で築いた光の薄膜の中で、蒸気機関の動力によって空気中の酸素を圧縮する。さらに熱伝導の助けを借りて冷やし、液体酸素を作り出して鋼瓶に注いだ。

 鋼瓶の中には、細かく粉砕した石炭粉、木屑、金属粉末が詰められていた。

 ――液体酸素爆薬である。


 蒸気時代の初期、機械制御者は軍が指定した戦争職業だった。

 蒸気工兵車が一両、前線に着けば、そこから爆撃が始まる。

 石炭の粉や木屑はどこにでもあり、酸素など大気の主要成分にすぎなかった。


 この爆薬の威力は二十一世紀の軍用高性能爆薬に劣らず、鉱山の爆破によく用いられた。

(ただし液体酸素は保存が難しく、地球では軍用には向かなかった。)


  ……


 わずか五分で、線路上の自爆トラックが完成した。


 波輪家(ポーレン)のカイスは、兵士たちにトラックを運び戻させた。航從(コウジュウ)は雷管を手に、慎重に後を追う。


 二人が任務に出ている間、倉庫ではアンクラ教官が爆薬の調製を続けていた。秉核(ヘイカク)は手早く教官の作業を手伝い、アセチレン炎で鋼瓶の隙間を溶接する。


 数十秒後、倉庫の外で二度の激しい爆発音が響いた。線路が爆破されたのは明らかだった。


 次は爆薬ロボットの完成を待ち、それを這わせて行かせ、麻痺した機関車を完全に爆破させる予定だった。

 だが、計画は変化に追いつかなかった。

 爆破から数分後、作業は突然中断された。

 軍人が慌ただしくアンクラを連れ出し、爆破後の新たな状況を確認させた。


  ……


 1.5キロメートル先で、地面が閃光とともに爆ぜた。線路と路盤を固定する大型の部品が、火薬で吹き飛ばされる。

 重さ1~2キロはある金属ボルトの固定具が、爆発の衝撃波で線路から十メートル離れた草むらまで飛び散った。

 固定を失った線路は、柔らかな麺のように路盤の上でくねり始めた。これでは列車の重量にとても耐えられない。

 当初の計画では、線路を爆破すれば列車は止まるはずだった。


 しかし、魔鉱獣を満載した列車が、この爆破された区間に差し掛かった。


 列車の車体から粒子の流れが溢れ出し、規格の揃った金属塊がひとつずつ粒子に運ばれて鋼製の車輪へと集まっていった。

 塊はたちまち車輪の上で組み上がる。車輪が回るにつれて、ひとつ、ふたつ、みっつ……と履帯が形作られていった。


 列車は速度を落としながらも前進を続け、そのうえ偽装を捨てた。

 前方のボイラーは何層もの装甲に覆われていた。一枚板の装甲ではないが、その厚さは驚くべきものだった。


 阻止任務についた兵士が銃を構え、機関車めがけて発砲した。弾が当たって、眩い火花が散る。

 表面の鱗のような装甲が水流のように動き、傷ついた鱗は素早く入れ替わった。戦車は傷ひとつ負わない。

 自己修復する機械の怪物のようだった。


  ……


 秉核(ヘイカク)も倉庫の外へ出て観測台に立った。親指を立て、まずはカーソル術で遠方の座標を測る。


 そして秉核(ヘイカク)は、両の瞳の周りの法脈を起動させた。


 赤い六角形の光片が目の前で開く。秉核(ヘイカク)は赤外線視覚を起動し、前方の怪物を観察した。


 赤外線の視界では、列車は光り輝く巨大な龍のように、轟音を立てて前進していた。各車両の赤外線放射は非常に強い。一部の車両は、機関車のボイラーよりも強い放射を示していた。秉核(ヘイカク)は思わず驚愕した。


 秉核(ヘイカク)は観察しながら、ノートにその列車の疑わしいエネルギー中枢を記録していった。


 アンクラの声が、秉核(ヘイカク)の傍らで響いた。

「ここまで進歩するとは思わなかった」


 この指導者は、秉核(ヘイカク)がかなり手慣れた様子でスペクトル世界を操っているのを見て驚いた。その驚きには、称賛の念が込められていた。


  ……


 機械職業者にとって、スペクトル視覚、温度制御、物質分離の三つを同時に習得し、そのうち二つを同時に使える。

 あるいは三つの新魔法の一つを使いながら、他の二つから三つを組み合わせて使えるなら、中位職業者の域に踏み込める。


 そして秉核(ヘイカク)は、すでにスペクトル視覚と物質分離薄膜の二つを同時に運用していた。――導温術はまだ構築中だった。


  ……


 秉核(ヘイカク)は言った。

「スペクトル術をようやく習得したばかりです」


 アンクラは秉核(ヘイカク)の答えを聞くと、うなずいて言った。

「君の年齢でここまでできるのは珍しい。帝国史上最年少の機械制御者は十四歳で昇格した。もちろん、それは四百年前の話だが」


 秉核(ヘイカク)は何も言わなかった。

 自分の状況は、自分が一番よく分かっている。

 他人の法脈構築なら間違いを心配するだろうが、自分の法脈構築で間違いを心配する必要などない。間違えても、すぐに直せるのだ。


 アンクラは、秉核(ヘイカク)が驕り高ぶる様子を一切見せないのを目にした。


 彼は少し称賛の色を浮かべ、それから厳しく諭した。

「良い。君の進度は速い。だが、何かの記録を破りたいがために、法脈構築の速さで一時の意地を張るようなことは決してするな」


 その口調は厳しく、少し怒っているようにさえ聞こえた。


 しかし秉核(ヘイカク)は、アンクラが善意で言っているのだと理解していた。アンクラは、若者(秉核(ヘイカク))が名声のために挑発に乗り、過剰な称賛に負け、功を焦ることを恐れていたのだ。だが、教えを受けたと頷いた瞬間、秉核(ヘイカク)はアンクラの言葉に、まだ言い残したことがあるように感じた。


 ―――――

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